されど御曹司は愛を誓う

雪華

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~ 第一章 売られた喧嘩 ~

雨と晴れ③

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 わざわざフローズンレイン旗艦店の目と鼻の先に出店し、メインターゲットも同じ十代から二十代前半に絞ってきたクリアデイが、こちらを意識しているのは明らかだった。

「うちも対抗して、何か大きなイベントやろうよ。思い切ったセールとか」

 ただ手をこまねいている訳にはいかない。玲旺は久我と氷雨に訴えかけたが、二人は同時に首を横に振った。

「今、急ごしらえのイベントをするのは得策じゃないと思うなぁ。世間にフローズンレインが慌ててるみたいな印象与えちゃうよ。あと、僕は安易なセールには反対。これはクリアデイ関係なくね」

 氷雨に真っ直ぐ目を見て言い切られ、玲旺はグッと言葉に詰まる。それでも何とか反論を試みた。

「じゃあさ、五万円以上買ったら氷雨さんと握手出来るとか……」
「あははは。そんな薄っぺらいこと、僕は絶対やらないよ。キミはフローズンレインの価値を下げたいの?」

 玲旺の提案を一蹴した氷雨の目が笑っていない。玲旺は首をすくめ、「だって」と口ごもる。久我が慰めるように玲旺の肩に手を置いた。

「やり返したいっていう桐ケ谷の気持ちも解るよ。でも、今はフローズンレインがこの一年で積み上げて来たものを信じよう。もちろん、対抗策はキッチリ練るけどな。反撃のタイミングは今じゃない」

 久我に諭され、玲旺は大人しく頷いた。それを見て、氷雨がニイッと口角を上げる。

「ホント、桐ケ谷クンは素直な良い子に成長したねぇ。ま、そう言うことだから、今は高みの見物といきましょ。クリアデイのお手並み拝見ね」

 余裕ありげにソファの背もたれに体を預けた氷雨だが、視線は窓の外に向けられていた。内心穏やかではないのだろう。
 それでも久我と氷雨は冷静な判断を下し、脳内で次の手を考えている。

 玲旺は憧れと嫉妬の混じった複雑な気持ちを抱きながら、小さくため息を吐いた。
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