されど御曹司は愛を誓う

雪華

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~ 第二章 賽は投げられた ~

強引な招待状⑧

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「あー、ちょっと待って。投票方法についてクリアデイのホームページにも説明が載ってるんだけどさ、変更不可と得点システムについては、ものすごーく小さな文字でしか書かれてないの」

 パソコンのモニターを見つめながら、氷雨が考え込むように顎に手を添える。

「何かイヤな感じがするのよねぇ。これ、会議室みたいな閉じられた空間で交渉しない方が良いよ。僕がネット上で快晴に直談判してみる。オープンな場所で、みんなに議論を見てもらいましょ。じゃないと、『フローズンレインが難癖をつけてくる』くらいのこと、向こうは平気で言いふらすかもしれないから」

 玲旺は立ち上がり、氷雨の肩越しにモニターに映し出されたクリアデイの説明文を見た。
 一応注釈があるのだが、本文の文字に比べ格段に小さく、一番下の誰も読まなそうな場所にひっそりと書かれている。言われて初めて気づくようなものだった。

「本当に……姑息と言うか、何というか」

 呆れたように玲旺が言い放つ。油断も隙もあったものではない。

「快晴との交渉は氷雨に任せるとして、投票システム自体に細工が無いとも言い切れないな。なにしろクリアデイの大元は、今までこちらの足を散々引っ張ってきたジョリーだ。システムが公平かどうか、チェックできる体制を取っておきたい」

 さすがにそこまでは、などと全く擁護する気にもなれず、むしろやりかねないなと玲旺は顔を歪めた。

「その辺は俺が手配しよう。クリアデイとの交渉が決裂する可能性もあるが、今のうちから準備だけはしておいて損はないはずだ」

 頼もしく答える藤井に心強さを感じながら、玲旺は氷雨に視線を移す。

「とにかく、モデルが揃わないことには始まらないよね。引き受けてくれそうな人、氷雨さんは心当たりある?」
「そうねぇ。どうしても声をかけたいなって人は二人いる。あとは悩みどころね。きっと、目ぼしいモデルは既にクリアデイからオファーが行ってるだろうし……。こうなったら、片っ端からモデル事務所を当たってみるか。ウチのイメージに合う人が残ってくれてると良いんだけど」

 こめかみの辺りを押さえながら、氷雨が悩ましそうに唸る。その様子を見た玲旺は、「じゃぁさ」と楽し気に提案した。

「俺、ちょっと思いついたんだけど、いっそのこと桜華大付属高校の芸能科にオファーしてみない? モデルコースもあるし、生徒は全員ウォーキングの授業を受けているはずだよ。経験値はプロのモデルに劣るだろうけど、その分、何色にも染まっていない新鮮さがあると思うんだ。なにより、フローズンレインのメインターゲットの年代だから、観客の共感も得やすいんじゃないかな」
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