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~ 第二章 賽は投げられた ~
prefect⑥
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「先月号のジェネスの撮影で、スタイリストと揉めてしまいました。元々彼女は仕事に対してあまり誠実ではなかったのですが、『どうせ廃刊になるんだから』と更に好き勝手するようになって。彼女の横暴さが許せなくて、私はとうとう口答えをしてしまったんです。廃刊が決まっていようと最後まで全力で取り組みたかったのですが、彼女にはその考えを笑い飛ばされました」
塩野崎のことだなとピンと来た玲旺は、不愉快過ぎてズキズキ痛むこめかみを押さえる。「どうせ廃刊」など、いかにも彼女が言いそうな台詞だ。
「私の代わりはいくらでもいると罵られ、その日は撮影に参加させて貰えず帰されました。でもそれだけでは気が済まず、彼女は私の所属事務所に『出番を増やせと我儘を言い、それが通らないと物を投げて暴れた』と、抗議してきたんです。全く身に覚えのないことでしたが、すっかり問題児として伝えられてしまいました」
塩野崎の言動があまりにも幼稚で馬鹿げていて、呆れた玲旺はポカンとしてしまった。緑川も信じられないと言うように、口元に手を当てて深影に問いかける。
「マネージャーは一緒じゃなかったの? それに、スタジオには他にもスタッフがいたでしょう。その人たちの証言は? まさかスタイリスト一人だけの虚言を事務所は信じたって言うの」
深影の肩が震えていた。その時の場面を鮮明に思い出してしまったのかもしれない。涙を堪えながら、掠れた声を出す。
「マネージャーは同行していましたが、私以外にも十人以上タレントを抱えているのでメールや電話で忙しく、現場を見ていませんでした。それに、事務所は他のスタッフへの確認などしていません。私の言い分も聞いてはくれませんでした」
深影は自嘲気味に薄く笑う。肩から滑り落ちる黒髪が、なんだか余計に彼女を寂しそうに見せた。
「……私を解雇する、良い口実が出来たと思ったのではないでしょうか。アイドル路線で売り出そうとしたのに、私があんまりパッとしないから、体よく切られたみたいです。アイドルよりモデルの仕事がしたいと、いつも主張していたのもいけなかったのかもしれません。大所帯の事務所ですから、それこそ私の代わりはいくらでもいるんでしょうね」
なんて理不尽なんだと眩暈がした。この業界では珍しくもなんともない、日常茶飯事の出来事なのかもしれない。でもだからと言って、それがまかり通って何の罪もない少女を傷つけていい理由にはならない。
「新しい事務所を早く見つけなければと思いましたが、またこんな目に合うかもしれないと思うと怖くて動き出せませんでした。……先生、私は退学になりますか?」
塩野崎のことだなとピンと来た玲旺は、不愉快過ぎてズキズキ痛むこめかみを押さえる。「どうせ廃刊」など、いかにも彼女が言いそうな台詞だ。
「私の代わりはいくらでもいると罵られ、その日は撮影に参加させて貰えず帰されました。でもそれだけでは気が済まず、彼女は私の所属事務所に『出番を増やせと我儘を言い、それが通らないと物を投げて暴れた』と、抗議してきたんです。全く身に覚えのないことでしたが、すっかり問題児として伝えられてしまいました」
塩野崎の言動があまりにも幼稚で馬鹿げていて、呆れた玲旺はポカンとしてしまった。緑川も信じられないと言うように、口元に手を当てて深影に問いかける。
「マネージャーは一緒じゃなかったの? それに、スタジオには他にもスタッフがいたでしょう。その人たちの証言は? まさかスタイリスト一人だけの虚言を事務所は信じたって言うの」
深影の肩が震えていた。その時の場面を鮮明に思い出してしまったのかもしれない。涙を堪えながら、掠れた声を出す。
「マネージャーは同行していましたが、私以外にも十人以上タレントを抱えているのでメールや電話で忙しく、現場を見ていませんでした。それに、事務所は他のスタッフへの確認などしていません。私の言い分も聞いてはくれませんでした」
深影は自嘲気味に薄く笑う。肩から滑り落ちる黒髪が、なんだか余計に彼女を寂しそうに見せた。
「……私を解雇する、良い口実が出来たと思ったのではないでしょうか。アイドル路線で売り出そうとしたのに、私があんまりパッとしないから、体よく切られたみたいです。アイドルよりモデルの仕事がしたいと、いつも主張していたのもいけなかったのかもしれません。大所帯の事務所ですから、それこそ私の代わりはいくらでもいるんでしょうね」
なんて理不尽なんだと眩暈がした。この業界では珍しくもなんともない、日常茶飯事の出来事なのかもしれない。でもだからと言って、それがまかり通って何の罪もない少女を傷つけていい理由にはならない。
「新しい事務所を早く見つけなければと思いましたが、またこんな目に合うかもしれないと思うと怖くて動き出せませんでした。……先生、私は退学になりますか?」
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