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ココハドコ?
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やあみんな! 元気かい?
僕はとても元気だ!
その証拠に目の前が真っ暗で、おそらく何者かによって麻袋的なやつに入れられてどこかに運ばれてるけど、笑顔さ! もちろん目隠しと猿ぐつわ(通称ギャグボール)もされてるよ。
やっぱり元気は一番だよね! うんうん。元気なお返事どうもありがとう。
しかし、どこに連れ行かれるんだろう? 着いた先で拷問でもされなきゃいいけど。
ん? なんか止まったっぽい。
ゆっくりと降下する感覚の後に体の背面に感じる地面と思しき硬い感触。
ひとまず僕の郵送は終了したらしいな。
とりあえずお天道様が拝めることを願う。まあ地下で永遠の労働でも言い渡されたら、おそらく地上に出るための鉄骨があるはずだから渡り切ってまた地上に戻ろう。おお、背中がざわざわ・・・・・・っしてきた。
そう決意したら、閉じられていた袋の結びがほどかれて袋から出されました。脱皮した蛹ですか私は。どうせなるなら蛾よりもちょうちょがいいです。
少しの間とはいえ、暗いところから急に明るいところに出たもんだから目が慣れるのに少しかかる。
目が慣れてくると目の前にはコンクリートの壁と蛍光灯が一本。端から端まで目を巡らせると、思いのほかこの部屋が大きくないことが分かった。
天井がコンクリートってことは、他の壁とか床も同じだよね。
こんな造り、最近見たのだと学校のボイラー室かな。装飾よりも強度と密閉性と室温・湿度が常に一定なことが重要って事務員のおっちゃんが言ってたな。あと防音性。
まあ要は、こういうところはしっかりしてて、温度変化がほとんどなくて、音と空気を他んとこに漏らさない造りになってるってことだね。いやはや、考えられてますねえ。
ってことはやっぱ、ここって地下?
うわーマジかー。僕地下室に絶賛拉致監禁されてんのか。
地下帝国で永遠の労働かー。飲みもんとか娯楽はあるかなー? キンッキンに冷えてるコーラ飲めるんならちょっとは頑張ろうかな。
なんて馬鹿なこと考えてたら、横から視界に突然人の顔が入ってきてびっくり。
口元はバンダナかなんかで隠してあって、目にはゴーグル装備。頭には迷彩柄のヘルメットが乗って、極めつけはその両手に抱えてる銃。
名前はよくわかんないけど、実銃じゃないことを祈るばっかりだね。
というか、地下労働どころか、拷問もされかねない状況だねこりゃ。
「ふぁふぉふぉふぃふぁふぁんふぇふふぁ?」
ギャグボールの隙間から辛うじて漏れた声で、兵隊さん?は反応してくれた。
「おお、ごめんごめん。今とる」
てっきり、その手の銃でも突き付けられんのかと思ったけど、すんなりギャグボールを外してくれた。
はあ、やっと新鮮な空気が吸える。まあここ地下だけど。
「いきなりで悪かった。でもこうすんのがうちの恒例だからさ」
グリップ力の高そうな黒い皮手袋で包まれた右手を立てて、賞金をもらう相撲取りみたいな感じの兵隊さんは、さほど悪びれる様子もない。
よく見れば、服装も緑の迷彩で上からごつごつしたジャケットを着ている。靴もあの兵隊さんがよく履いてる靴、半長靴だっけ? を履いております。
何? 俺、自衛隊に拉致されたの? 自衛隊は人の命、しかも自国民の命に対しては絶対的な安全を保障してくれる組織じゃないの? 僕は今、日本の闇を見てるの? しかも恒例って、常習化してんのこれって? こりゃ亡命も考えなきゃなー? 生き延びれたらだけど。
「あの、自衛隊の方?が俺に何の御用ですか? 国家転覆を計画した覚えは一切ないんですけど」
決死の覚悟で聞いてみた。
そしたら、自分の服装を確認してもう一回俺のほうに向き直って
「あははははははっ!」
笑い出した。何この人怖い。
自衛隊?の人はひとしきり笑い終わると(と言っても3分は笑いつ続けてた)、笑い過ぎで涙が出たのかそれを拭おうとゴーグルを外し始めた。
何がそんなに面白いのかと不思議な顔しつつ自衛隊?の人の目元を見ると、若い、というか一つか二つしか変わらないように感じた。
「いや、ごめんごめん。あまりにマジ顔で言ってくるから、可笑しくて」
そう言うと、また思い出したかのように引きつった笑いを再開させた。
頑張ってこらえようとしてるんだろうけど、堪えきれてないから過呼吸みたいになってるし。
でも、この感じだと拷問と地下労働の線はなさそうかな。安心安心。
一時は本当にビルとビルの間の鉄骨でも渡らなきゃいけないかと思ったよ。
まだ自衛隊?の人が笑ってるけど、周りの様子を観察してみよう。
予想した通り全面むき出しコンクリート。一つ違ったところは俺から見て右側の壁にロッカーがあることぐらいか。
ここはおそらく更衣室だろう。
俺の正面には出入り口になるドアがあって、俺とドアの間に自衛隊?の人がいる状態。どうも逃げるのは無理らしい。
危なくはないにしろ、いきなり拉致するような人のところに居たくない。
そう思って体を動かそうとすると、体勢を崩して呆気なく転がってしまう。そうだ、僕縛られてたんだ。
まさか、特殊なプレイ以外でこんなことを自覚する日が来ようとは。
なんとも複雑な気持ちになりながら、自衛隊?の人に交渉を持ちかけてみる。
「あのー、ここから出していただくことは可能ですか?」
「あー、ごめん。このタイセンが終わるまでは無理だ。だからその縛りも解いてやれない。でも、うっ血したりしないようにしたから痛くないだろ?」
そう言いながら、自衛隊?の人は俺を起こすと、左の壁まで運んで寄りかからせてくれた。
おお、流石自衛隊。すげえ腕力。
「確かに、抜け出せないだけで痛くない・・・・・・って大戦!?」
思いがけない単語が飛び出してきたので、聞き返してしまった。
大戦って、あの第1次とか2次とかのやつ? じゃあ僕このまま捕虜として交渉に使われるか、使えなければサヨナラされるってこと!? 拉致なんかとは比べ物にならないくらいデカい話だったのかこれは。え、僕終わったじゃん。
「そ、タイセン。もうしばらくの辛抱だ。そろそろあっちの看守を突破して捕虜を保護してる頃だろうから、そしたらすぐにでも開放してやれる」
あれ、意外と可能性ある? っていうか
「あっちにも捕虜が?」
「ああ、それぞれ捕虜がいて先に相手の捕虜を保護した方が勝ちなんだ」
何ともゲーム性に富んだ戦争だな。いや、待てよ。
そんな大戦の雌雄を決する材料に選ばれるってことは、俺なんかすげーんじゃね?
実は軍人としてエリートの血筋とか、世界でも数人しかいない貴重な被検体とか。
まあ、もし後者なら行きつくところは全身解剖エンドだろうけど。
「だから今回はさっさと決着が・・・・・・つくと思ったんだがどうやら甘かったらしい。聞きたくない足音が聞こえる。そうだ、あぶねえからこれつけてくれ」
そう言って、自衛隊?の人が手づからかけてくれたのは科学実験とかで使われる透明なゴーグル。
そうだねー。目は大事だねー。でもねー、僕丸腰なんだよねー。
こんなことしてくれるんなら、四方が鉄の壁で囲まれた核シェルターにでもぶち込んでくれよ。その方がよっぽど安全だ。
まあ、そんなことはおくびにも出さないが。
「きたきた。静かに頼む」
人差し指を立てて俺に注意を促すと、自衛隊?の人は入り口に体を向ける。
指示に従って耳を済ませると、遠くで聞こえる何かがバチバチと弾けるような音をBGMにして着実にこちらに向かって近づいてくる足音を聞きつけた。
それにしても足音の堂々とした様たるや。
隠れながら近づいてきてるならもっと不規則な音だろうけど、これじゃまるで王の行進だ。
しかもあれだけ別の音が遠い中で今も聞こえてる足音は、どの音よりも大きくて近い。
おまけに聞こえてくる足音は一人分。ほかに取り巻きもいない中で、一人堂々と戦場を悠然と進み出てくる敵兵。ただものじゃなさそうだ。
足音はドアの前でぱったりと止んだ。
「誘っているのか、タイミングをうかがっているのか」
気づかないうちに銃を構えた自衛隊?の人の口から微かなつぶやきが漏れる。
照明に反射して表情はわからないけど、焦っているのが分かる。そりゃ、戦場をゆっくり歩いてくる敵なんて怖くてしょうがないだろう。
いったいどんなやつなんだろうか?
僕の予想は、いい具合に髭を蓄えて、目には大きめの傷がバッサリついてて、もう片方は眼帯で、頭にはバンダナ巻いてて・・・・・・あ、これスネークだ。
カチッと何かスイッチでも押すような音がドアの前から聞こえると、ついにドアが開いた。8センチくらい。
自衛隊?の人も銃を握る力を強くしたけど、とても人が入れる開き具合じゃないから動揺している。
そして、人の代わりにこの部屋にログインしてきたのは俗にいう手榴弾。
カランコロンと安っぽいおもちゃみたいな音を立てて、俺たち2人の前で止まった。目と目が合う~。目なんかないけど。
そんな某夢の国のマスコットみたいな登場されても、殺す気満々でしょ君。
「ちょっ!? まじか!」
とっさの判断で、自衛隊?の人はなんと僕を庇うように盾になってくれた。
おお・・・・・・。すげぇな自衛隊。
いくら民間人とはいえ、自分を盾にして護ってくれるとは。世界が賞賛するのも頷ける。
だがな、元はと言えばあんたがこの場所に連れてきたんだから当然ともいえなくもないんだぞ。そこんとこ忘れんなよ。
まあ、もし生きてたら見舞いに行ってやるし、死んでも骨は拾ってやるよ。
・・・・・・てか、こんだけいろんな妄想してる時間あんのにまだ爆発しないの? いや待ってるわけじゃないけどさ。
自衛隊?の人の隙間から手榴弾を見てみるけど、爆発する様子は皆無。
すると今度は手榴弾の主であろう兵隊さんが入ってきた。
見れば、目の前で盾になっている人と同じ服じゃありませんか。
ん? どゆこと?
タイセンーーーー
対戦か!!!
通りでゲームっぽいと思ったら。
自衛隊の演習の一環の対戦形式って訳か!
なるほど、じゃあこっちの人も自衛隊らしい。
ただ、ぱっと見の印象はすごい小柄。下手したら160ないくらい。
髪も、ヘルメットとかゴーグルの隙間からはみ出してて男にしては長い。髪質もどこなく柔らかそう。
そんな一見して戦場に似つかわしくないちっさいの人は、自分の部屋に入るようなラフさで部屋に入って来ると、腰元にある拳銃入れから小さめの拳銃を取り出すと、自衛隊?の人に突きつけて
「今年も私の勝ち!」
そう言ってヘルメットやその他顔を隠すものを全部取っ払って素顔を晒して、俺はようやく思い出した。
「やあ、新入生くん。私の名前は江藤祐美。サバイバルゲーム部部長です」
ニヤリと何処か不敵な笑みを浮かべるこの人の顔を。
僕はとても元気だ!
その証拠に目の前が真っ暗で、おそらく何者かによって麻袋的なやつに入れられてどこかに運ばれてるけど、笑顔さ! もちろん目隠しと猿ぐつわ(通称ギャグボール)もされてるよ。
やっぱり元気は一番だよね! うんうん。元気なお返事どうもありがとう。
しかし、どこに連れ行かれるんだろう? 着いた先で拷問でもされなきゃいいけど。
ん? なんか止まったっぽい。
ゆっくりと降下する感覚の後に体の背面に感じる地面と思しき硬い感触。
ひとまず僕の郵送は終了したらしいな。
とりあえずお天道様が拝めることを願う。まあ地下で永遠の労働でも言い渡されたら、おそらく地上に出るための鉄骨があるはずだから渡り切ってまた地上に戻ろう。おお、背中がざわざわ・・・・・・っしてきた。
そう決意したら、閉じられていた袋の結びがほどかれて袋から出されました。脱皮した蛹ですか私は。どうせなるなら蛾よりもちょうちょがいいです。
少しの間とはいえ、暗いところから急に明るいところに出たもんだから目が慣れるのに少しかかる。
目が慣れてくると目の前にはコンクリートの壁と蛍光灯が一本。端から端まで目を巡らせると、思いのほかこの部屋が大きくないことが分かった。
天井がコンクリートってことは、他の壁とか床も同じだよね。
こんな造り、最近見たのだと学校のボイラー室かな。装飾よりも強度と密閉性と室温・湿度が常に一定なことが重要って事務員のおっちゃんが言ってたな。あと防音性。
まあ要は、こういうところはしっかりしてて、温度変化がほとんどなくて、音と空気を他んとこに漏らさない造りになってるってことだね。いやはや、考えられてますねえ。
ってことはやっぱ、ここって地下?
うわーマジかー。僕地下室に絶賛拉致監禁されてんのか。
地下帝国で永遠の労働かー。飲みもんとか娯楽はあるかなー? キンッキンに冷えてるコーラ飲めるんならちょっとは頑張ろうかな。
なんて馬鹿なこと考えてたら、横から視界に突然人の顔が入ってきてびっくり。
口元はバンダナかなんかで隠してあって、目にはゴーグル装備。頭には迷彩柄のヘルメットが乗って、極めつけはその両手に抱えてる銃。
名前はよくわかんないけど、実銃じゃないことを祈るばっかりだね。
というか、地下労働どころか、拷問もされかねない状況だねこりゃ。
「ふぁふぉふぉふぃふぁふぁんふぇふふぁ?」
ギャグボールの隙間から辛うじて漏れた声で、兵隊さん?は反応してくれた。
「おお、ごめんごめん。今とる」
てっきり、その手の銃でも突き付けられんのかと思ったけど、すんなりギャグボールを外してくれた。
はあ、やっと新鮮な空気が吸える。まあここ地下だけど。
「いきなりで悪かった。でもこうすんのがうちの恒例だからさ」
グリップ力の高そうな黒い皮手袋で包まれた右手を立てて、賞金をもらう相撲取りみたいな感じの兵隊さんは、さほど悪びれる様子もない。
よく見れば、服装も緑の迷彩で上からごつごつしたジャケットを着ている。靴もあの兵隊さんがよく履いてる靴、半長靴だっけ? を履いております。
何? 俺、自衛隊に拉致されたの? 自衛隊は人の命、しかも自国民の命に対しては絶対的な安全を保障してくれる組織じゃないの? 僕は今、日本の闇を見てるの? しかも恒例って、常習化してんのこれって? こりゃ亡命も考えなきゃなー? 生き延びれたらだけど。
「あの、自衛隊の方?が俺に何の御用ですか? 国家転覆を計画した覚えは一切ないんですけど」
決死の覚悟で聞いてみた。
そしたら、自分の服装を確認してもう一回俺のほうに向き直って
「あははははははっ!」
笑い出した。何この人怖い。
自衛隊?の人はひとしきり笑い終わると(と言っても3分は笑いつ続けてた)、笑い過ぎで涙が出たのかそれを拭おうとゴーグルを外し始めた。
何がそんなに面白いのかと不思議な顔しつつ自衛隊?の人の目元を見ると、若い、というか一つか二つしか変わらないように感じた。
「いや、ごめんごめん。あまりにマジ顔で言ってくるから、可笑しくて」
そう言うと、また思い出したかのように引きつった笑いを再開させた。
頑張ってこらえようとしてるんだろうけど、堪えきれてないから過呼吸みたいになってるし。
でも、この感じだと拷問と地下労働の線はなさそうかな。安心安心。
一時は本当にビルとビルの間の鉄骨でも渡らなきゃいけないかと思ったよ。
まだ自衛隊?の人が笑ってるけど、周りの様子を観察してみよう。
予想した通り全面むき出しコンクリート。一つ違ったところは俺から見て右側の壁にロッカーがあることぐらいか。
ここはおそらく更衣室だろう。
俺の正面には出入り口になるドアがあって、俺とドアの間に自衛隊?の人がいる状態。どうも逃げるのは無理らしい。
危なくはないにしろ、いきなり拉致するような人のところに居たくない。
そう思って体を動かそうとすると、体勢を崩して呆気なく転がってしまう。そうだ、僕縛られてたんだ。
まさか、特殊なプレイ以外でこんなことを自覚する日が来ようとは。
なんとも複雑な気持ちになりながら、自衛隊?の人に交渉を持ちかけてみる。
「あのー、ここから出していただくことは可能ですか?」
「あー、ごめん。このタイセンが終わるまでは無理だ。だからその縛りも解いてやれない。でも、うっ血したりしないようにしたから痛くないだろ?」
そう言いながら、自衛隊?の人は俺を起こすと、左の壁まで運んで寄りかからせてくれた。
おお、流石自衛隊。すげえ腕力。
「確かに、抜け出せないだけで痛くない・・・・・・って大戦!?」
思いがけない単語が飛び出してきたので、聞き返してしまった。
大戦って、あの第1次とか2次とかのやつ? じゃあ僕このまま捕虜として交渉に使われるか、使えなければサヨナラされるってこと!? 拉致なんかとは比べ物にならないくらいデカい話だったのかこれは。え、僕終わったじゃん。
「そ、タイセン。もうしばらくの辛抱だ。そろそろあっちの看守を突破して捕虜を保護してる頃だろうから、そしたらすぐにでも開放してやれる」
あれ、意外と可能性ある? っていうか
「あっちにも捕虜が?」
「ああ、それぞれ捕虜がいて先に相手の捕虜を保護した方が勝ちなんだ」
何ともゲーム性に富んだ戦争だな。いや、待てよ。
そんな大戦の雌雄を決する材料に選ばれるってことは、俺なんかすげーんじゃね?
実は軍人としてエリートの血筋とか、世界でも数人しかいない貴重な被検体とか。
まあ、もし後者なら行きつくところは全身解剖エンドだろうけど。
「だから今回はさっさと決着が・・・・・・つくと思ったんだがどうやら甘かったらしい。聞きたくない足音が聞こえる。そうだ、あぶねえからこれつけてくれ」
そう言って、自衛隊?の人が手づからかけてくれたのは科学実験とかで使われる透明なゴーグル。
そうだねー。目は大事だねー。でもねー、僕丸腰なんだよねー。
こんなことしてくれるんなら、四方が鉄の壁で囲まれた核シェルターにでもぶち込んでくれよ。その方がよっぽど安全だ。
まあ、そんなことはおくびにも出さないが。
「きたきた。静かに頼む」
人差し指を立てて俺に注意を促すと、自衛隊?の人は入り口に体を向ける。
指示に従って耳を済ませると、遠くで聞こえる何かがバチバチと弾けるような音をBGMにして着実にこちらに向かって近づいてくる足音を聞きつけた。
それにしても足音の堂々とした様たるや。
隠れながら近づいてきてるならもっと不規則な音だろうけど、これじゃまるで王の行進だ。
しかもあれだけ別の音が遠い中で今も聞こえてる足音は、どの音よりも大きくて近い。
おまけに聞こえてくる足音は一人分。ほかに取り巻きもいない中で、一人堂々と戦場を悠然と進み出てくる敵兵。ただものじゃなさそうだ。
足音はドアの前でぱったりと止んだ。
「誘っているのか、タイミングをうかがっているのか」
気づかないうちに銃を構えた自衛隊?の人の口から微かなつぶやきが漏れる。
照明に反射して表情はわからないけど、焦っているのが分かる。そりゃ、戦場をゆっくり歩いてくる敵なんて怖くてしょうがないだろう。
いったいどんなやつなんだろうか?
僕の予想は、いい具合に髭を蓄えて、目には大きめの傷がバッサリついてて、もう片方は眼帯で、頭にはバンダナ巻いてて・・・・・・あ、これスネークだ。
カチッと何かスイッチでも押すような音がドアの前から聞こえると、ついにドアが開いた。8センチくらい。
自衛隊?の人も銃を握る力を強くしたけど、とても人が入れる開き具合じゃないから動揺している。
そして、人の代わりにこの部屋にログインしてきたのは俗にいう手榴弾。
カランコロンと安っぽいおもちゃみたいな音を立てて、俺たち2人の前で止まった。目と目が合う~。目なんかないけど。
そんな某夢の国のマスコットみたいな登場されても、殺す気満々でしょ君。
「ちょっ!? まじか!」
とっさの判断で、自衛隊?の人はなんと僕を庇うように盾になってくれた。
おお・・・・・・。すげぇな自衛隊。
いくら民間人とはいえ、自分を盾にして護ってくれるとは。世界が賞賛するのも頷ける。
だがな、元はと言えばあんたがこの場所に連れてきたんだから当然ともいえなくもないんだぞ。そこんとこ忘れんなよ。
まあ、もし生きてたら見舞いに行ってやるし、死んでも骨は拾ってやるよ。
・・・・・・てか、こんだけいろんな妄想してる時間あんのにまだ爆発しないの? いや待ってるわけじゃないけどさ。
自衛隊?の人の隙間から手榴弾を見てみるけど、爆発する様子は皆無。
すると今度は手榴弾の主であろう兵隊さんが入ってきた。
見れば、目の前で盾になっている人と同じ服じゃありませんか。
ん? どゆこと?
タイセンーーーー
対戦か!!!
通りでゲームっぽいと思ったら。
自衛隊の演習の一環の対戦形式って訳か!
なるほど、じゃあこっちの人も自衛隊らしい。
ただ、ぱっと見の印象はすごい小柄。下手したら160ないくらい。
髪も、ヘルメットとかゴーグルの隙間からはみ出してて男にしては長い。髪質もどこなく柔らかそう。
そんな一見して戦場に似つかわしくないちっさいの人は、自分の部屋に入るようなラフさで部屋に入って来ると、腰元にある拳銃入れから小さめの拳銃を取り出すと、自衛隊?の人に突きつけて
「今年も私の勝ち!」
そう言ってヘルメットやその他顔を隠すものを全部取っ払って素顔を晒して、俺はようやく思い出した。
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