Toy Soldier

教祖

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第一章

パーティー

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 「それでは、新たな同志との契りを交わそう! せーのっ」
 「「かんぱーい!」」
 「乾杯っす」
 「はぁ、乾杯です」
 「さあ、みんな一年生と一回はグラスをあわせるんだよー!」
 「「イエス、マム!」」
 部長さんの一声で、総勢8人の部員のひとたちとの乾杯連打が始まりました。
 ここは晩餐会ですか? ドレスコードが迷彩服とはなかなかトリッキーですね。
 会場は先ほどの一悶着があった場所から徒歩50秒。
 話を聞く限り部室のようだ。
 部屋の中央に長机が2台縦に置かれ、その周りを壁沿いに設置されたロッカーが囲っている状態。
 部屋に10人がいても窮屈さを感じないところ、なかなかの広さだと思う。
 そう、10人だ。
 部員さんたちのお話を右から左へ聞き流しながら、俺は同じ洗礼を受ける人物を知っていた。
 「さあさあ、グイッといきなグイッと!」
 「ちょっ、早くないですか!? まだ半分しか飲んでないのに」
 「全部飲めば一緒一緒! さあさあジャンジャンバリバリいこう」
 そう言うと間髪入れず、ようやく半分まで減らしたコーラが本来の水位へと戻っていく。
 さながら魔法のグラスといったところ。メガネの魔法使いもびっくりだね。
 元どおりになった、グラスを不満げに持ち上げた彼女に、部長さんの目が光る。
 「どーして持ってんの」パンパン(手拍子)
 「なーんで持ってんの」パンパン
 「「飲みたいかーらー持ってんのっ! はいっ、のーんでのーんでのーんで飲んで」」
 「えっ、えっ、ああー!」
 部長さんの掛け声から始まった、ホスト顔負けのコール。
 飲まなきゃいけない感、を全力で出してくるスタイル。
 彼女は、コールにしびれを切らしたのか、グラスを空にする。
 しかし、そこに再び暗黒の陰りが差し、グラスの中の平穏は脅かされることとなった。
 あの人水商売強そーだなー。
 そんな感想を抱きつつ、苦悶の表情で黒づくめのグラスを見つめる彼女を観察する。
 暗めの茶髪でショートカット。
 ウェーブのかかってない、クールでドライな印象を受ける髪型。
 少し吊り目がちで、薄めのナチュラルメイク。
 月に一度は玉砕覚悟の特攻野郎の告白を、バッサリ切り捨てしばらく再起不能にしそうな感じ、とでも言おうか。
 まぁ実際そうなのだが。
 彼女、#屋久式 美結_やくしき みゆ__#の告白を受けたところを偶然にも僕は目撃していた。
 お陰でSAN値がエライことになったよ。
 まあ、それはさておき。
 おそらく、彼女は俺と同じく袋に詰められて、ここに放り込まれた部長さん側の捕虜だったんだろう。
 袋詰めは部長さんがやったんだろうが、出るところに出れば裁判沙汰だろうに。
 彼女、意外と流されやすいタイプなのかな。
 「ほら、ボーとしてないで、お前も早くグラス開けろ」
 知らぬ間に俺の列は、俺のグラスを求めるお兄さんで溢れていた。
 目の前のゴツいお兄さんも、ペットボトルをくいっと勧めてくる。
 これは、シンプルに筋肉好きな感じの人だな。見せ筋ってやつ。
 やれやれ、俺もエンドレスリピートが始まるのか。
 仕方なく覚悟を決めて、コーラを飲み下す。
 「よし、いい飲みっぷりだ」
 「あざっす」
 爽やか笑顔でコーラを注がれて悪い気はしないけど、胃の中のコーラのさえずりは、どうも穏やかじゃないらしいね。
 「俺は、副部長の浅岡。今3年生で部内だとアニキって呼ばれてるから、そう呼んでくれても構わないぞ」
 「じゃあ、そうさせてもらいますね。アニキ」
 「おう、よろしくな」
 「はい、お願いします」
 爽やか笑顔を見送りながら、公園のベンチを思い浮かべた俺を咎められるものなどいないだろう。
 しかし、副部長か。
 ザバイバルゲーム部で女子が部長とは色々と謎がある部活だな。
 その後、男女5人とグラスを交わすと
 「よう、さっきはすまんな」
 「ども」
 俺の護衛に回ってくれた人がやってきた。
 中肉中背、隠されていた素顔は少しヤンチャな印象だが、声のトーンや仕草から親しみやすさを感じる。
 「俺は2年の横田。俺も一年の頃に拉致られたから、気持ちはよく分かる」
 「お気遣い、感謝です」
 同じ境遇の人がいるとはなんとも心強い。
 「けどな、ここは意外とおもしれぇぞ。サバゲはもちろん、人が良い。ほら」
 横田先輩が促すように、会場を見渡す。
 つられて見てみれば、なるほどみんな楽しそうだ。何より男女の壁を一切感じないのがすごい。
 「良いですね、高校生でこんな」
 
 「な、部長のあの見てくれで合法なんだぜ? サイコーだろ?」
 
 そんな言葉で僕の感動を遮った犯罪者、じゃなかった横田先輩は、放送コードに触れる顔をしていた。
 やはり、ここはろくなところじゃない。 
 わずかに揺らいだ心を元の場所に戻し、重厚な扉を閉め、隙間をしっかりと溶接した僕であった。
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