教祖

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プロローグ その3

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 部長の強調したセリフは、僕の人生のバイブルともいえるライトノベル『こんにちわ青春の闇』の主人公、ひいらぎ |《はやと》隼人のものだ。決して有名ではなく、ちゃんと好きなヤツには拾えるネタ、といった程度のもの。この人もこん闇の愛読者とは。だが、同志とは言えど迂闊に踏み込むのは愚行。アニメ2期を待つ傍らでカップリング論争、ヒロインの経験履歴論争、その他考察組が様々な論争を広げる魔境なのだ。ここはライトな会話から部長の立ち位置を明らかに――――したいところだが、年上の女性相手に会話で火傷するのは何よりも避けたい。
 「まあ、そうっすね」
 僕は会話には乗らず逃げることを選んだ。
 「ありゃ、外したか。スマホのトプ画が《《サブ》ヒロインだったからだいぶ古参かと」
 「サブではなく本命なんで」
 あまりの発言にノータイムで返してしまった。
 でも許して欲しい。この界隈において主要キャラをサブと位置づけるのはあまりにも愚行。しかもそのグッズを持っている人間の目の前でそのような物言いをすることは宣戦布告に他ならない。売られた喧嘩は基本受け流すが、こればかりは買わざるを得ない。
 「おっと失礼した。てっきり話に乗ってこなかったからそこまでの熱量とは思わなかった。しかし、それならそうと言ってくれないと。――――こうやって焚きつけなくて済んだのに」
 「なっ!?」
 誘われただと!? この人できる…。
 「いい反応するなあ。これはいいおもちゃ入荷したかな」
 「本人に直接言う人いるんすね」
 「誰も小鳥遊のことなんて言ってないのに。あれ、自覚ある感じ?」
 「それ以上言うなら帰りますよ僕」
 「ごめんごめん。もう止めるから」
 そう言いつつも部長はクツクツと込み上げる笑いを必死に抑えながらモップを押し続けた。僕も仕方なくそれに倣った。
 本当なら帰っても文句は言われない、というか言われる筋合いもない。ただ不思議とイジられたことに対して嫌悪感が無かった。こんな感覚は初めてだった。なんというか悪意が無い。こいつを貶めようというものではなく、あくまでもコミュニケーションツールの一つとして、その場を楽しむための掛け合いの一つとしてイジるという方法をとったように感じた。だから表面上は不機嫌にしつつも僕は内心楽しかった。もう少し会話をしてみようと思ったのだ。別にお姉さんにイジられたのが初めてで嬉しかったとかではない。本当に。…本当に。
 
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