教祖

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プロローグ その4

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 その後も部長主導で会話が展開された。基本部長の質問に僕が答える形で進み、会話の切れ目には部長自身の話が始まり無言の時間は無いに等しかった。改めて思ったがこの部長、本当に話が上手い。なんというか不快感が無い。終始快適な温度感で会話が進むのだ。会話内容はこの高校を選んだ理由やら、休みの日の過ごし方やら、果ては今までの彼女の話やら。…安心しろ、おれはいない歴=年齢だ。唯一納得がいかなかったこととすれば――――
 「小鳥遊は彼女いるんか?」
 「今まで彼女なんかできるどころか、そんな可能性感じる要素すらなかったですよ」
 「あー、うん。なんかごめんな。さすがにこの質問はミスったわ。謹んでお詫び申し上げます」
 「この会話こそボケてくださいよ! お詫びされたら悲しいのは僕なんですよ」
 「いや、小鳥遊ならいるかなって思ってさ」
 「えっ…」
 「あー、うん。今の反応でなんか色々分かった気がする(笑)」
 「これは僕もう帰っていいやつですよね!!!」
 と散々煽られたことだ。さすがにこのままではいられないと部長にも同じ質問をしようとしたが、それを察知したのか全員に清掃終了の号令を出してうやむやにされてしまった。解せぬ。

 「みんなご苦労。例年通りこのまま家庭科室で決起会を行う」
 部長の宣誓に各々反応を返す。無論、僕はなんのこっちゃなので( ゚д゚)←こんな顔である。
 「小鳥遊もできれば来てくれ。というか来い! 菓子もジュースもあるぞ」
 全員の視線が僕に向く。顔色も様々で微笑みからぎこちない表情まで多岐にわたる。ちなみに部室でぼーっとホワイトボードを眺めていた男の先輩は、なぜか鋭い眼光を向けてきていて非常に怖い。僕なんかしました? 
 とはいえ――――
 「…まあ、ここまで来たら行きますど」
 流石にこの状況で帰るとも言いずらい。一口ジュース貰ってしれっと帰ろう。
 「うし、家庭科室へ移動!」
 部長を先頭に合計8名の大所帯は家庭科室へと向かった。
 その道中、糸目で太めな親近感を感じる先輩が話しかけてきた。
 「小鳥遊くん、時間とか大丈夫? 家ですることとかなかった? ごめんね、うちの部長あんな感じだから」
 「いえ、大丈夫です。ご心配いただいてありがとうございます」
 「こっちこそ、付き合ってくれてありがとうね。ああ、オレは細川ほそかわ だい。太いけど細川だから、覚えやすいっしょ」
 「んふふ。よろしくお願いします。細川先輩」
 「おお、久しぶりに名前呼ばれた気がするから新鮮だわ」
 「久しぶり? いつもはなんて呼ばれてるんですか」
 「ああ、それが――――」
 
 「なんだもう仲良くなったのか! それとも小鳥遊いじめてんのか、”芋ロック”」
 
 細川先輩が口を開こうとした時、突然部長がカットインしてきた。――――芋ロックってまさか細川先輩のことか? 確かお酒の芋焼酎に氷を入れて飲むやり方をそう呼んでいた気がする。親父がたまに飲んでいた。‥‥もしかして細川先輩ってこの風貌でなかなか不良なのか?
 「いじめてんのはそっちだろう。勝手に小鳥遊君連れまわして。決起会までだからな!」
 「わかってるって。まあ、小鳥遊本人が希望するなら延長戦もあるかな」
 「ねーよ」
 困惑する僕をよそに二人は遠慮なく、強めの語気で言葉を投げ交わしている。でもそれがじゃれ合いであることは誰の目にも明らかだった。終始二人とも笑顔。声のトーンも僕と話している時より二つは上がっている。なんだろう、そこはかとないラブコメの臭いが…。
 「ごめんね小鳥遊君。あの馬鹿には釘刺しとくから」
 「そんな、確かに急でしたけど今のところ楽しいので全然無理してないです。それよりも芋ロックって?」
 「一応部内でのオレのあだ名なんだよね。悲しいことに」
 「いや、なんというかロックな響きでいいと思います」
 苦し紛れにも程がある返しだった。
 「気を遣わせて本当にごめんね。この名前が付けられた経緯は後で説明するよ」
 「わかりました」
 部長が扉を道場破りかのように勢いよく開け放ち、僕たちは家庭科室に流れ込んだ。
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