教祖

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お題目 その4

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 まさか授業で使うよりも先に立ち入ることになるとは思わなかった。
 長方形のテーブルが六台。天板の左右に切れ目があるのはコンロと流しが隠されているからだろう。教室であれば教卓がある位置には一際横に長いキッチンテーブル。黒板ではなくホワイトボードなのが実に家庭科室然としている。
 「芋ロックはオレと一緒に食い物の用意。他はイスと食器周りの準備頼む」
 そう言って家庭科室の右前方にある扉を開けて奥の部屋に入っていった。あれは準備室か。
 部長の指示に各々動き始めた。僕も先輩たちに倣って部屋の両サイドに重ねられた丸椅子を四脚まとめて持ち上げた。それにしても、これだけアクの強そうな面子なのに素直に従っているのはなにかあるのではと思ってしまう。特にアイアンネイル先輩と虚ろ目の先輩は人の指示なんか絶対聞かなそうな風貌なのに、なんなら率先して動いていた。ただ、椅子の脚にアイアンネイルが当たってカチャカチャして、虚ろ目で僕のことをずっと見つめてるのが少し気になるだけ。視線外さずに動きだけ機敏なのマジで怖え。
 
 男子で椅子、女性陣が食器類を出し終えると部長と芋ロック先輩が大量のビニール袋を提げて戻ってきた。見たらわかる、食いきれないやつやん。部長はためらいなく内一つの袋の中身をテーブルにぶちまけた。スナック、煎餅、チョコetc…。横には各種ジュースが並べられ、心の中の小学生が歓喜する絵面が完成した。先輩たちは手慣れた手つきで大皿にビュッフェスタイルに盛り付け、豪華な菓子盆が複製された。飲み物も一瞬で手元に。
 「さて諸君、前年度は最高の時間を過ごしたな。今年度は最高を越えた最高を求めて邁進しよう――――乾杯!」
 「「「乾杯」」」
 「っす…」
 先輩たちに遅れてグラスを掲げると五月雨のようにグラスが合わせられた。先輩たちが全員グラスに口を付けた後、やっと僕もコーラにありつけた。炭酸が乾いた喉を焼く。怒涛の時間で感覚がなかったが身体が水分を欲していたことに気づいた。
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