Oh My Holy XXX 

教祖

文字の大きさ
1 / 1

清く正しい乙女の素顔 その1

しおりを挟む
 この教会には今日も誰一人として敬虔な子羊が訪れることはなかった。
 しかしそれも至極当然のことのように思う。
 まず外観が問題だ。廃れたと言えば聞こえがいいが、その様は最早荒廃と言って差し支えない。無法地帯だ。
 通りに面するガラスは残っている方が珍しいと言えるほど、割られ、風化し室内外問わず破片が散らばっている。かつては清廉潔白な純白を讃えていたであろう外壁は見るかげもなく、罅が前面に駆け巡り、冒涜的に背徳的な教会を彩っている。かつて中庭のステンドグラスに燦然と御身をさらしていた主も聖母も床の塵となって久しい。
 そんな無為な時間と不信仰が作り出したあばら家に人影が一つ。
 顔以外全身が黒布で覆われ、闇に飲まれかけている亡者と見紛うその姿は、場所が荒廃していながらも教会という体を保っていなければ修道女シスターと認識することは不可能であろう。首から下げられたロザリオの十字架は錆が全体を覆い、地の色を想像することすら難い。
 色白の肌に碧眼、ベールの隙間から覗く銀髪、大きな瞳に小さな顔と小柄な体躯。胡乱な表情でさえなければ美少女と呼ばれても大多数が首を縦に振る容姿だ。
 窓枠に切り取られた斜め掛けの紅蓮の夕暮れを背負い、シスターは足高のグラスに注がれた琥珀色の液体を一息に流し込む。葡萄酒主の血は彼女の口には合わなかった。
 投げ捨てるようにテーブルに放れば、合成樹脂製の大量生産品のグラスは数回跳ねたのちに足を中心に半円を描いて静止した。
 乾いた軽薄な音が広いだけの礼拝堂に響き、飲んだくれシスターの酒宴の終わりを告げた。
 それに家鳴りが応答する。オリーブ材の扉に小石でもあたったのか、そのひどく控えめで陳腐な音に思わずシスターはケラケラと笑う。
 背もたれに上体を投げ出し、大口を開けて笑う様は聖なる修道女ホーリーシスターではなく、くそあまホーリーシットであった。
 その音はシスターがひとしきり笑い終えた後も続いていた。バラードの三連符のように規則的に、間をおいて断続的に。
 気だるげに立ち上がると、タクティカル仕様のレッグホルスターからトカレフを引き抜く。千鳥足で音の発生源へ歩み寄る。不思議なことにシスターの足音は聞こえなかった。
 扉の前に立ちおもむろにドアノブに手を掛ける。そして6度目のノックが始まったとき開錠と同時に全身を使って勢いよく扉を開け放つ。
 ノックするような距離に立つ相手に全力で扉を押し開けば――――
 「がぁっ!?」
 腕ごと扉に押しのけられ額と鼻頭をしたたかに打てば、悶絶しながら顔を覆ってうずくまる来訪者の出来上がり。しかも美少女シスターからトカレフを向けられるおまけつき。
 「子羊はもう寝てるはずだから、アンタは狼かな。最近の赤ずきんは副業で猟師もやってるってご存じ?」
 ハッピーではない、確実な殺意をもって引き金に指が掛けられた。
しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

セクスカリバーをヌキました!

ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。 国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。 ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……

服を脱いで妹に食べられにいく兄

スローン
恋愛
貞操観念ってのが逆転してる世界らしいです。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

処理中です...