1 / 9
第1話 社長と秘書の甘い関係
しおりを挟む
今、株式会社・浦島機器製造の社長室で、社長の浦島慶次が机の上でノート・パソコンの画面を見つめていた。
数年前から秘書の青木ひろみからその見方を教わったのである。
その画面には株価のチャート図が示されており、ローソク足チャートは一日のなかの始値、終値、高値、安値を示していた。
こうして数字でなくチャートという形でビジュアル化することで、今までの株価の動きをわかりやすく見ることができて、なかなか都合が良い。
この株価は常に変動しているので、瞬時にその正確な判断は難しいが、馴れてくると前後の株価の動きでおおよその目安は付く。かといって、慶次は株で儲けようと思っているわけではない。
彼は最近になって憶えたその株価を見ることで、業績の判断材料にしていた。それは自社と関連会社の株価を知ることで、ある程度の判断が出来るからだ。経営者としては、やはり自分の会社の評判が気になるようである。
昔はこんなことなど考えられなかったのだが、IT関連の会社を傘下にしたことで、そういう知識が入ってくるのだ。今までは順調だったのだが、ここのところ彼の会社の業績があまり良くない。
それを見て慶次は溜め息を付き、ノート・パソコンの画面をにらんでいた。
(ふーむ。最近はあまり思わしくないな。我が社の業績は……)
その時、ノックをして社長室に隣接した秘書室から、秘書の青木ひろみが盆に載せた慶次特製の褐色で甘めのコーヒーを持ってきた。
「失礼します、社長。いつものコーヒーをお持ちしました」
「おお、そうか、有り難う。そこに置いてくれたまえ」
「はい。でもあまり甘すぎるのもお体にはよくありませんよ」
「いいんだよ。この歳になって、好きなものを我慢してでも長生きをしたいとは思わんよ。ひろみ」
「だめですよ。そんなことをおっしゃっては、いけません!」
ひろみは笑いながら、わざと頬を膨らませ睨むような顔をした。
「おや、お前でもわしのことを心配してくれるんだね」
「あたりまえです! もう、そんなことを言って私を悲しませないで下さい」
そう言いながら、わざとひろみは手の甲を丸め、それを目の下にして大袈裟に泣くそぶりをみせた。
「おやおや、いつもの『泣きのひろみ』でわしをたぶらかせようとしているなぁ」
「いやん。ばれちゃいました?」
二人の会話を聞いていると、とても社長とその秘書の会話とも思えない。それほどにこの二人は親密な関係なのだろうか。
社長の慶次は髪の毛には白い物が混じってはいるが、まだ高齢者の域には達してはいない。年齢の割には若く見られ、体力は若さでみなぎっていた。その顔は若いころは相当なハンサムだったろうと思わせるが、今はロマンスグレーとして渋さを漂わせている。
仕事はさることながら、若いころからそのバイタリティーでそうとう女性との関係では浮き名を流したようである。
そして社内一の美人と言われるひろみは、豊かなバストの上にピッチリとした上着を着て、よく似合うミニスカートを身につけていた。 そのすらっとした細い足で社内では珍しく高めのハイヒールを穿いている。
彼女のように派手な服と、高めのヒールを穿いている女性社員は社内には彼女しかいない。それを意識してか、彼女は秘書室と関係している課以外にはあまり部屋から出ることはない。
食事も広い食堂があるのにそこへは行かず、持参の弁当を黙々として食べている。
それは人には言えない好奇の目で見られることに、彼女自身に耐えがたい羞恥の気持ちがあるからである。
現に男子社員からは色目で見られ、女子社員達からは『いけ好かない女』と見られていることもひろみは知っていた。
ゆえに秘書室だけが青木ひろみの城であり、生き甲斐の部屋でもあるのだ。
そうさせた原因は彼女自身ではなく、社長である慶次にあった。後で分かることだが、これらは派手好みの慶次の強いリクエストでもある。そのリクエストをひろみには拒否することが出来ない訳がある。
数年前から秘書の青木ひろみからその見方を教わったのである。
その画面には株価のチャート図が示されており、ローソク足チャートは一日のなかの始値、終値、高値、安値を示していた。
こうして数字でなくチャートという形でビジュアル化することで、今までの株価の動きをわかりやすく見ることができて、なかなか都合が良い。
この株価は常に変動しているので、瞬時にその正確な判断は難しいが、馴れてくると前後の株価の動きでおおよその目安は付く。かといって、慶次は株で儲けようと思っているわけではない。
彼は最近になって憶えたその株価を見ることで、業績の判断材料にしていた。それは自社と関連会社の株価を知ることで、ある程度の判断が出来るからだ。経営者としては、やはり自分の会社の評判が気になるようである。
昔はこんなことなど考えられなかったのだが、IT関連の会社を傘下にしたことで、そういう知識が入ってくるのだ。今までは順調だったのだが、ここのところ彼の会社の業績があまり良くない。
それを見て慶次は溜め息を付き、ノート・パソコンの画面をにらんでいた。
(ふーむ。最近はあまり思わしくないな。我が社の業績は……)
その時、ノックをして社長室に隣接した秘書室から、秘書の青木ひろみが盆に載せた慶次特製の褐色で甘めのコーヒーを持ってきた。
「失礼します、社長。いつものコーヒーをお持ちしました」
「おお、そうか、有り難う。そこに置いてくれたまえ」
「はい。でもあまり甘すぎるのもお体にはよくありませんよ」
「いいんだよ。この歳になって、好きなものを我慢してでも長生きをしたいとは思わんよ。ひろみ」
「だめですよ。そんなことをおっしゃっては、いけません!」
ひろみは笑いながら、わざと頬を膨らませ睨むような顔をした。
「おや、お前でもわしのことを心配してくれるんだね」
「あたりまえです! もう、そんなことを言って私を悲しませないで下さい」
そう言いながら、わざとひろみは手の甲を丸め、それを目の下にして大袈裟に泣くそぶりをみせた。
「おやおや、いつもの『泣きのひろみ』でわしをたぶらかせようとしているなぁ」
「いやん。ばれちゃいました?」
二人の会話を聞いていると、とても社長とその秘書の会話とも思えない。それほどにこの二人は親密な関係なのだろうか。
社長の慶次は髪の毛には白い物が混じってはいるが、まだ高齢者の域には達してはいない。年齢の割には若く見られ、体力は若さでみなぎっていた。その顔は若いころは相当なハンサムだったろうと思わせるが、今はロマンスグレーとして渋さを漂わせている。
仕事はさることながら、若いころからそのバイタリティーでそうとう女性との関係では浮き名を流したようである。
そして社内一の美人と言われるひろみは、豊かなバストの上にピッチリとした上着を着て、よく似合うミニスカートを身につけていた。 そのすらっとした細い足で社内では珍しく高めのハイヒールを穿いている。
彼女のように派手な服と、高めのヒールを穿いている女性社員は社内には彼女しかいない。それを意識してか、彼女は秘書室と関係している課以外にはあまり部屋から出ることはない。
食事も広い食堂があるのにそこへは行かず、持参の弁当を黙々として食べている。
それは人には言えない好奇の目で見られることに、彼女自身に耐えがたい羞恥の気持ちがあるからである。
現に男子社員からは色目で見られ、女子社員達からは『いけ好かない女』と見られていることもひろみは知っていた。
ゆえに秘書室だけが青木ひろみの城であり、生き甲斐の部屋でもあるのだ。
そうさせた原因は彼女自身ではなく、社長である慶次にあった。後で分かることだが、これらは派手好みの慶次の強いリクエストでもある。そのリクエストをひろみには拒否することが出来ない訳がある。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
旧校舎の地下室
守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる