幸せのおはなし

高みき

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 知ってるよ。ずっと前から。
 だってずっと見てたんだもん。
 胸の奥がきゅっと締め付けられる。
 運命の二文字を、恨むのは無駄だってわかっていても。

 何もかもがスローモーションで見える。
 幸せそうなサクラ。手を振って彼の元へ走っていく。
 その横から。
「危ない!」
彼の叫び声もゆっくりと聞こえる。
 え?という表情のサクラ。足を止めた彼女に迫り来る乗用車。真っ青な顔の運転手。軋むブレーキの音。でもきっと間に合わない。
 全てがぞっとするほどゆっくりと見える。
 ダメだ、このままじゃサクラが……

とっさに駆け出していた。
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