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第二章 二度目の人生 リベンジスタート
新たな王位継承者 ハリー執事Side
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私はバリドン公爵家に仕える執事のハリーだ。
モートン伯爵領の広大な森でヒュー王子が落馬したと連絡が来て、聖女であるヴァイオレットお嬢様が駆けつけて数時間経つ。ジョセフがついて行った。
我が国ボアルネハルト王家が神経を尖らせているのは、ラントナス家の王位継承者になる可能性があるレキュール辺境伯だ。彼は母方の血統により、ラントナス朝の最後の王位継承者になってしまう。つまり、レキュール辺境伯は、隣国のとてつもない大国ハープスブートの王になり得る存在となる。この噂が出回った時は大騒ぎになった。
お嬢様がレキュール辺境伯領で一晩行方が分からなくなったことがあったが、その件で王家はかなりピリピリしていた。だが、お嬢様は知らないことだ。なぜ、レキュール辺境伯領の再開発計画にこれほど皆が神経を尖らせるのか、理解していないようだ。
私からこのことを申し上げるべきか迷う。ブロンドの髪の毛を無造作にくしゃくしゃにして、お嬢様と話しているレキュール辺境伯を見た侍女のアデルはすっかりのぼせ上がっていた。
レキュール辺境伯エリオットは、ヒュー王子とは真逆の魅力がある若い独身男性ということで、王家の者は神経を尖らせていた。特に隣国のカール大帝に世継ぎが生まれない今、もしカール大帝の弟君が没すれば、ラントナス家の王位継承者になるという噂がまことしやかに流れている。カール大帝の弟君は評判がかなりよろしくないからだ。隣国の民としても、レキュール辺境伯の若々しく爽やかな魅力に皆が期待しているということだ。
レキュール辺境伯領については、聖女のお嬢様がとてつもない資源が眠っていると示したことで、ますます注目が集まっている。
ジョセフがお嬢様のお供をするのは、一年前のルネ伯爵家やボルディ商社に出向いて以来だ。ジョセフは私のお気に入りなのに、ジョセフがお嬢様にくっついて行きたがり、お嬢様もそれを望まれたのでどうにもこうにもならない。今日の仕事のことを思って、私はため息をついた。
それにしても、今日のジョセフはいつにも増してはりきっていた。ヒュー王子とお嬢様の婚約は公然の秘密とも言える状況だった。知る人ぞ知るという状況から、最近は多くの人にヴァイオレットお嬢様の王家への輿入れがささやかれていた。
しかしだ。ここにきてレキュール辺境伯が新たな次の王朝を開く可能性がささやかれていて、王家はピリピリしている。ヴァイオレットお嬢様がレキュールの地に足繁く通われていることも、エリオット伯爵がやたらと魅力的で爽やかな若い独身貴族であることも一因だろう。
お嬢様自らが婚姻を先延ばしにして、婚約を秘密にしてほしいとお願いした話も公然の秘密となっている。
あれもこれも秘密にしてくれというお嬢様の要望を国王陛下が受けてくださって実現したことだが、そろそろ限界だろう。挙式の1年前ともなると王家もバリドン公爵家も挙式の準備でおおわらわだからだ。
ただ、ご本人たちはまだお互いに夢中といった気配は無い。各地を確認する前に聖女であるお嬢様がある程度領地改革の指針を出したおかげもあり、ヒュー王子と聖女が各地を視察する機会はほぼ無い。つまり、お二人が近づく機会が無く、ブロンドで輝かしい瞳でお嬢様を見つめるレキュール辺境伯との時間が多くなるばかりだ。
お嬢様は王立修道院に通い詰めて、スキルの鍛錬に明け暮れていらっしゃる。その合間は計画に沿って発展計画を進めることに心を打ち砕かれていた。
16歳で聖女に選ばれた時にお嬢様は計画を立てており、それを日記に記したそうだ。それを元に計画を進めていると我々は聞いている。お嬢様以外にも聖女に選ばれた方はいるが、お嬢様は極めてスキルの訓練に熱心だった。
パンティエーヴルさんとアデラがお嬢様のドレスの仮縫いに付き合っているが、一行にドレスが縫い上がる様子はなかった。一体お嬢様は本気で輿入れする気があるのか、非常に悩ましい限りだ。
先日、ゼルニエ公爵夫人にそっとお嬢様が相談しているのを聞いてしまった。
「シャーロットおばさま。もう少し独身でいたい思いがあるのですが」
「もっとヒュー王子と一緒に過ごす時間を作るべきですわ。あなたはまだ若いです。あれほど魅力的な方もなかなかいませんから、もう少し辛抱なさい。いずれ、あなたもヒュー王子の魅力に気づきます」
モートン伯爵令嬢のキャサリン、アリス姉妹はヒュー王子に夢中だと言う。そのほか、ヒュー王子に夢中の令嬢は多いのに、我がバリドン公爵家のお嬢様はスキルの向上と、隣国ハープスブートに新たな王朝を開く可能性を示唆されるラントナス家の王位継承者の領地開発に夢中になっている。
私はジョセフがいないために一人でこなさなければならない書類仕事にため息をついていた。あの若い魅力溢れる辺境伯に近づき過ぎるのは危険を伴うとお嬢様に申し上げるべきか、バリドン公爵に申し上げるべきか。それは執事としての領分を超えた進言ではないか、本当に悩ましい。
モートン伯爵領の広大な森でヒュー王子が落馬したと連絡が来て、聖女であるヴァイオレットお嬢様が駆けつけて数時間経つ。ジョセフがついて行った。
我が国ボアルネハルト王家が神経を尖らせているのは、ラントナス家の王位継承者になる可能性があるレキュール辺境伯だ。彼は母方の血統により、ラントナス朝の最後の王位継承者になってしまう。つまり、レキュール辺境伯は、隣国のとてつもない大国ハープスブートの王になり得る存在となる。この噂が出回った時は大騒ぎになった。
お嬢様がレキュール辺境伯領で一晩行方が分からなくなったことがあったが、その件で王家はかなりピリピリしていた。だが、お嬢様は知らないことだ。なぜ、レキュール辺境伯領の再開発計画にこれほど皆が神経を尖らせるのか、理解していないようだ。
私からこのことを申し上げるべきか迷う。ブロンドの髪の毛を無造作にくしゃくしゃにして、お嬢様と話しているレキュール辺境伯を見た侍女のアデルはすっかりのぼせ上がっていた。
レキュール辺境伯エリオットは、ヒュー王子とは真逆の魅力がある若い独身男性ということで、王家の者は神経を尖らせていた。特に隣国のカール大帝に世継ぎが生まれない今、もしカール大帝の弟君が没すれば、ラントナス家の王位継承者になるという噂がまことしやかに流れている。カール大帝の弟君は評判がかなりよろしくないからだ。隣国の民としても、レキュール辺境伯の若々しく爽やかな魅力に皆が期待しているということだ。
レキュール辺境伯領については、聖女のお嬢様がとてつもない資源が眠っていると示したことで、ますます注目が集まっている。
ジョセフがお嬢様のお供をするのは、一年前のルネ伯爵家やボルディ商社に出向いて以来だ。ジョセフは私のお気に入りなのに、ジョセフがお嬢様にくっついて行きたがり、お嬢様もそれを望まれたのでどうにもこうにもならない。今日の仕事のことを思って、私はため息をついた。
それにしても、今日のジョセフはいつにも増してはりきっていた。ヒュー王子とお嬢様の婚約は公然の秘密とも言える状況だった。知る人ぞ知るという状況から、最近は多くの人にヴァイオレットお嬢様の王家への輿入れがささやかれていた。
しかしだ。ここにきてレキュール辺境伯が新たな次の王朝を開く可能性がささやかれていて、王家はピリピリしている。ヴァイオレットお嬢様がレキュールの地に足繁く通われていることも、エリオット伯爵がやたらと魅力的で爽やかな若い独身貴族であることも一因だろう。
お嬢様自らが婚姻を先延ばしにして、婚約を秘密にしてほしいとお願いした話も公然の秘密となっている。
あれもこれも秘密にしてくれというお嬢様の要望を国王陛下が受けてくださって実現したことだが、そろそろ限界だろう。挙式の1年前ともなると王家もバリドン公爵家も挙式の準備でおおわらわだからだ。
ただ、ご本人たちはまだお互いに夢中といった気配は無い。各地を確認する前に聖女であるお嬢様がある程度領地改革の指針を出したおかげもあり、ヒュー王子と聖女が各地を視察する機会はほぼ無い。つまり、お二人が近づく機会が無く、ブロンドで輝かしい瞳でお嬢様を見つめるレキュール辺境伯との時間が多くなるばかりだ。
お嬢様は王立修道院に通い詰めて、スキルの鍛錬に明け暮れていらっしゃる。その合間は計画に沿って発展計画を進めることに心を打ち砕かれていた。
16歳で聖女に選ばれた時にお嬢様は計画を立てており、それを日記に記したそうだ。それを元に計画を進めていると我々は聞いている。お嬢様以外にも聖女に選ばれた方はいるが、お嬢様は極めてスキルの訓練に熱心だった。
パンティエーヴルさんとアデラがお嬢様のドレスの仮縫いに付き合っているが、一行にドレスが縫い上がる様子はなかった。一体お嬢様は本気で輿入れする気があるのか、非常に悩ましい限りだ。
先日、ゼルニエ公爵夫人にそっとお嬢様が相談しているのを聞いてしまった。
「シャーロットおばさま。もう少し独身でいたい思いがあるのですが」
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私はジョセフがいないために一人でこなさなければならない書類仕事にため息をついていた。あの若い魅力溢れる辺境伯に近づき過ぎるのは危険を伴うとお嬢様に申し上げるべきか、バリドン公爵に申し上げるべきか。それは執事としての領分を超えた進言ではないか、本当に悩ましい。
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