【完結】世界転生バイトですが、裏切られて捨てられた公爵令嬢の聖女と私を煽てるあなたは恋愛詐欺師ですか？知りませんが、幸せな花嫁になるので！

第三章 囚われの身から幸せへ

剣と盾の召喚 ヴァイオレットSide

　頭の中で声がする。

『Lvl9826の剣と盾のアイテムを召喚しますか？』
「召喚します！」

『聖フランセーズの防御の盾』と『聖ヴィクトワールの剣』がスパッと私の手に出現した。

　まずは、このシャーリーンの手下が仕込んだ私の力をゼルニエ侯爵夫人が奪える反転魔法を壊さなければならない。

　思えば、力が尽きた瞬間が今までにも何度もあった。まずは最初の人生でレキュール辺境伯爵領地で迷子になったとき。次は、最初の人生で処刑された時。私の心の問題もあるかもしれない。なぜなら、２回目の人生でレキュール辺境伯が刺されて絶命した時は、私は苦労して力を取り戻して彼を蘇生させた。だが、その後に落馬しようとしたヒュー王子を救えなかったのだ。その時は食べ物も関係していた。

　誰に何をされようとも、私は私を守り、たとえ動揺したとしても己の力を冷静に発揮できるようにならなければならない。

　それは確かに私の課題だ。

　しかしだ。

　他人が研鑽した力を勝手に奪って使うなど、言語道断だ。

　自分が王座につくためにだ。彼女は私の母まで殺した。


『聖フランセーズの防御の盾』を私は構えた。『聖ヴィクトワールの剣』を大きく振りかざした。

　紫色の気体が私の構える盾と剣から出て、ゼルニエ侯爵夫人は悲鳴を上げた。

『Lvl8万3871の破壊魔法を使いますか？』
「使います！」

　突風が起こり、自分の力が私に跳ね返ってくる。私は聖フランセーズの防御の盾をしっかりと構えて、自分に魔力が跳ね返るのを防いだ。

　えいっ！

　私は躍り上がって、上から聖ヴィクトワールの剣をゼルニエ侯爵夫人を囲むどす黒い緑色の気体に切り込んだ。私の出す紫色の煌めきはどす黒い緑色の期待を霧のように蹴散らした。盾で自分の身を守り、私はもう一度剣を渾身の力で一振りした。

　ゼルニエ夫人はバタっと倒れた。

『仕込まれたスキル盗み術は解消しました』

　私は静かな声が頭の中で告げるのを聞いた。

　涙が込み上げる。

　なぜ、母が死なねばならなかったのか。肩が震えてきたが、私はグッと堪えた。戦いはまだ終わっていない。

　私を妻に欲しがって愚かな行いを繰り返す隣国の大帝とその弟を皆と一緒に倒さなければならないから。

　私は涙を拭いて顔をあげた。

　カトリーヌとマルグリッドを一緒に隣国ハープスブートのカール大帝の宮殿に連れて行こう。

　私は聖女カトリーヌがいてくれて、本当に良かったと心の底から思った。

「ヴァイオレット、行ける？」

　聖女カトリーヌが褐色の輝くような笑顔で、部屋に戻ってきた。私はうなずいてマルグリッドの姿を元の姿に戻した。両手を後ろに縄で縛った状態にした。

　マルグリッドはゼルニエ侯爵夫人が気を失って倒れている姿を見て、残念そうな表情をしていたが、自分の体が元に戻ったことには飛び上がって喜んだ。

　ゼルニエ侯爵夫人はゼルニエ侯爵の元に戻した。力が使えずにしばらくは眠り続けるはずだ。

『Lvl918の禁固の術を使いますか？』
「使います」

　私はシャーロットおばさまを自宅であるゼルニエ侯爵邸から出れないようにした。侯爵邸は広い。退屈はしないだろう。私の母を殺したぐらいだからこのぐらいで良いとは思えないが、今は先に片付けることがある。

「行くわ」
　
　私は聖女カトリーヌに微笑み、一気に隣国ハープスブートのカール大帝の宮殿に移動した。