7 / 66
傷物姫 後宮降臨 本編
俺は確かにモテるが、花嫁はあんたがいい
しおりを挟む
「待ってくださいましっ!あなた様ほど見目麗しいお方にはもっと他にも良いご縁談がわんさかあるでしょう!なぜ、私のような傷物を……」
私は呆然としつつも反論した。
「姫は傷物じゃないだろ……俺は確かにモテるが、花嫁はあんたがいい。姫に俺の花嫁になって欲しい」
えっ。
色々混ざっていて、あったかい気持ちになるような、焦るような。
ちょ……ちょっと待って!
まず、傷物じゃないと言われて不覚にもグッと来た。
泣きそう……。
『俺は確かにモテる』
そりゃそうでしょうね。
『あんたがいい』
この最後のあんたがいいが何度も何度も弧を描くように私の耳の奥で聞こえてしまった。残響だ。
その瞬間、私の心臓はズキュンと音が鳴ったように跳ね上がった。
「激奈龍にも美しい姫はたくさんいらっしゃると思いますが、なぜ私を?鷹宮様への嫌がらせでしょうか?それならば、私など傷物と呼ばれて選ばれっこないと陰口を叩かれているのです。嫌がらせの目的を達しません。考え直された方が良いかと」
私は丁寧に食い下がった。
だが、ぽんぽんと若君は私の頭を優しく撫でて、口角を上げると優しい笑みを浮かべて私を見つめた。
そして、踵を返すとそのまま走り去って行った。
若君は忙しいのですね。
でも人の話を聞いてくださいよ。
私は強制連行されるように、すかさず吉乃に腕をつかまれた。
「今度逃げたら、責任とって私死にます」
吉乃が顔面に顔を近づけてきたかと思ったら、ぼそっとど迫力で言われた。
私はゴクっと唾を飲み込んで頷いた。
「逃げません!ごめんなさい。謝ります!」
私は先程髪の毛を乾かしていた部屋に押し戻され、髪をときほぐされ、化粧を施されて、世にも美しい衣装を着せられた。金の刺繍が煌びやかに施された赤い絹の衣だ。
まるで結婚式みたいだ。
普段は薄化粧もほぼしていないようなので、化粧をした自分の顔にびっくりして鏡を見つめていると、廊下の方でパタパタと音がして小袖が姿を現した。
「小袖!」
「花蓮様っ!」
よく無事だった、小袖。
私は小袖の後ろをのぞいた。
「昌俊は?」
「済々家の皆様をお呼びに行かれました」
小袖は小さな声で答えた。
へ?
敵国から御咲の済々に行ったの?
あー、私が若君と結婚するからか?
父上はがっくり来ただろうなぁ。
母上は心労で倒れないだろうか。
私は唇を噛み締めた。
「ひっ!姫様、そんなに唇を噛み締めたから血が出ておりますっ!」
「何をされていますかっ!死ぬおつもりですかっ!」
小袖が悲鳴を上げると、吉乃がすっ飛んで来て私は一喝された。
私は吉乃の剣幕にオロオロして、ごめんと謝った。
「姫は薬を盛られたんですよね?山でたぬきのように寝ていらしたと噂になっています。昨晩奇跡的に無事だったことに感謝して、変な気は起こさないでくださいましっ!」
吉乃は私を叱った。
そうだった。
私たちは誰かに謀られて、薬を入れられたお酒を猪や熊の出没する山で飲み明かした。一歩間違えば死んでいたに違いない。
しかし、妙な話なのだ。
元々傷物と噂されていた私だ。他家の姫君たちは私を馬鹿にはしていても、相手にもしていなかったはずだ。
うーん。
宮廷って怖い。
おかげであんなイケメンの嫁に選ばれてしまった。
さっきの口付け……だよね?
なんだかすごかった。
身体中が一気に熱くなって、とろけるかと思った。
私は途端に思い出して真っ赤になった。
息も荒くなる。
口付け……恥ずかしい。
「あれ、花蓮様はお熱があるのではないでしょうか?」
「大丈夫ですっ!」
私は小袖の心配そうな様子に、大きく頷いて大丈夫だと宣言した。
衣を宮廷用にビシッと着替えた吉乃に先導されて、私は長い廊下を煌びやかな衣に身を包んで歩いた。
見たこともない廊下だし、見たこともない部屋の作りだが、なんとなく御咲の宮殿に似ていると思った。そこにホッとした。
隣の国だし、そんなに違わない違わない。
すぐ山を越えたら御咲だしって、あんな高い塀を超えるんだけどね。
大丈夫、私、なんとかなるから!
私は悲壮な覚悟を決めて、吉乃に導かれて大きな部屋に入って行った。そこには御咲の皇帝がいらっしゃった。
え?
なんで皇帝陛下が?
その隣にさっきの若君がいる。
私は何事かと思って部屋の中を見渡そうとした。
あ!父上、母上!
泣いている……。
あれ?
なんで鷹宮の妃候補全員が、美しい衣装を着て揃っているのだろう?
私は吉乃に導かれて若君の隣に立った。
どういうこと?
「ここに鷹宮の花嫁を宣言する」
陛下が口を開いた。一瞬、場がどよめいた。
は?
今なんと!?
「済々家一の姫、花蓮を鷹宮の妃とすることに決まった」
きゃーっ!
なぜっ?
一体なぜっ!?
頭が真っ白になった私は、隣の若君の顔を凝視した。
この人だれっ!?
敵の若君だよね?
ふっと笑った若君は、私の耳元に口を近づけてきて小さく囁いた。
「俺が鷹宮。俺に全てを捧げる覚悟で入内したって?」
えーっ!?
御咲の鷹宮様?
この口の悪い若君が?
「お前の身を守るには、俺の花嫁を早く決めてしまった方がいいんだ。今日から花蓮が俺の花嫁だ」
美しい顔でキスの口の形をした。
妖艶なんですがっ!?
うわっ!!
今までを振り返ると、穴に入りたい。
私ったら、鷹宮様になんて無礼なことをしたの。
斬られても仕方がなかった私。
無礼千万の振る舞いに気が遠くなった。
私は、どうやら32人の妃候補の姫君たちの中から唯一の花嫁に選ばれてしまったようだ。
鷹宮との初夜もあるし、他の妃候補たちの嫌がらせもある……。
これでおさまるはずがなさそう。
私の花嫁生活は波乱を極めそう……。
私の入内は、予期せぬ展開になった。
私は呆然としつつも反論した。
「姫は傷物じゃないだろ……俺は確かにモテるが、花嫁はあんたがいい。姫に俺の花嫁になって欲しい」
えっ。
色々混ざっていて、あったかい気持ちになるような、焦るような。
ちょ……ちょっと待って!
まず、傷物じゃないと言われて不覚にもグッと来た。
泣きそう……。
『俺は確かにモテる』
そりゃそうでしょうね。
『あんたがいい』
この最後のあんたがいいが何度も何度も弧を描くように私の耳の奥で聞こえてしまった。残響だ。
その瞬間、私の心臓はズキュンと音が鳴ったように跳ね上がった。
「激奈龍にも美しい姫はたくさんいらっしゃると思いますが、なぜ私を?鷹宮様への嫌がらせでしょうか?それならば、私など傷物と呼ばれて選ばれっこないと陰口を叩かれているのです。嫌がらせの目的を達しません。考え直された方が良いかと」
私は丁寧に食い下がった。
だが、ぽんぽんと若君は私の頭を優しく撫でて、口角を上げると優しい笑みを浮かべて私を見つめた。
そして、踵を返すとそのまま走り去って行った。
若君は忙しいのですね。
でも人の話を聞いてくださいよ。
私は強制連行されるように、すかさず吉乃に腕をつかまれた。
「今度逃げたら、責任とって私死にます」
吉乃が顔面に顔を近づけてきたかと思ったら、ぼそっとど迫力で言われた。
私はゴクっと唾を飲み込んで頷いた。
「逃げません!ごめんなさい。謝ります!」
私は先程髪の毛を乾かしていた部屋に押し戻され、髪をときほぐされ、化粧を施されて、世にも美しい衣装を着せられた。金の刺繍が煌びやかに施された赤い絹の衣だ。
まるで結婚式みたいだ。
普段は薄化粧もほぼしていないようなので、化粧をした自分の顔にびっくりして鏡を見つめていると、廊下の方でパタパタと音がして小袖が姿を現した。
「小袖!」
「花蓮様っ!」
よく無事だった、小袖。
私は小袖の後ろをのぞいた。
「昌俊は?」
「済々家の皆様をお呼びに行かれました」
小袖は小さな声で答えた。
へ?
敵国から御咲の済々に行ったの?
あー、私が若君と結婚するからか?
父上はがっくり来ただろうなぁ。
母上は心労で倒れないだろうか。
私は唇を噛み締めた。
「ひっ!姫様、そんなに唇を噛み締めたから血が出ておりますっ!」
「何をされていますかっ!死ぬおつもりですかっ!」
小袖が悲鳴を上げると、吉乃がすっ飛んで来て私は一喝された。
私は吉乃の剣幕にオロオロして、ごめんと謝った。
「姫は薬を盛られたんですよね?山でたぬきのように寝ていらしたと噂になっています。昨晩奇跡的に無事だったことに感謝して、変な気は起こさないでくださいましっ!」
吉乃は私を叱った。
そうだった。
私たちは誰かに謀られて、薬を入れられたお酒を猪や熊の出没する山で飲み明かした。一歩間違えば死んでいたに違いない。
しかし、妙な話なのだ。
元々傷物と噂されていた私だ。他家の姫君たちは私を馬鹿にはしていても、相手にもしていなかったはずだ。
うーん。
宮廷って怖い。
おかげであんなイケメンの嫁に選ばれてしまった。
さっきの口付け……だよね?
なんだかすごかった。
身体中が一気に熱くなって、とろけるかと思った。
私は途端に思い出して真っ赤になった。
息も荒くなる。
口付け……恥ずかしい。
「あれ、花蓮様はお熱があるのではないでしょうか?」
「大丈夫ですっ!」
私は小袖の心配そうな様子に、大きく頷いて大丈夫だと宣言した。
衣を宮廷用にビシッと着替えた吉乃に先導されて、私は長い廊下を煌びやかな衣に身を包んで歩いた。
見たこともない廊下だし、見たこともない部屋の作りだが、なんとなく御咲の宮殿に似ていると思った。そこにホッとした。
隣の国だし、そんなに違わない違わない。
すぐ山を越えたら御咲だしって、あんな高い塀を超えるんだけどね。
大丈夫、私、なんとかなるから!
私は悲壮な覚悟を決めて、吉乃に導かれて大きな部屋に入って行った。そこには御咲の皇帝がいらっしゃった。
え?
なんで皇帝陛下が?
その隣にさっきの若君がいる。
私は何事かと思って部屋の中を見渡そうとした。
あ!父上、母上!
泣いている……。
あれ?
なんで鷹宮の妃候補全員が、美しい衣装を着て揃っているのだろう?
私は吉乃に導かれて若君の隣に立った。
どういうこと?
「ここに鷹宮の花嫁を宣言する」
陛下が口を開いた。一瞬、場がどよめいた。
は?
今なんと!?
「済々家一の姫、花蓮を鷹宮の妃とすることに決まった」
きゃーっ!
なぜっ?
一体なぜっ!?
頭が真っ白になった私は、隣の若君の顔を凝視した。
この人だれっ!?
敵の若君だよね?
ふっと笑った若君は、私の耳元に口を近づけてきて小さく囁いた。
「俺が鷹宮。俺に全てを捧げる覚悟で入内したって?」
えーっ!?
御咲の鷹宮様?
この口の悪い若君が?
「お前の身を守るには、俺の花嫁を早く決めてしまった方がいいんだ。今日から花蓮が俺の花嫁だ」
美しい顔でキスの口の形をした。
妖艶なんですがっ!?
うわっ!!
今までを振り返ると、穴に入りたい。
私ったら、鷹宮様になんて無礼なことをしたの。
斬られても仕方がなかった私。
無礼千万の振る舞いに気が遠くなった。
私は、どうやら32人の妃候補の姫君たちの中から唯一の花嫁に選ばれてしまったようだ。
鷹宮との初夜もあるし、他の妃候補たちの嫌がらせもある……。
これでおさまるはずがなさそう。
私の花嫁生活は波乱を極めそう……。
私の入内は、予期せぬ展開になった。
23
あなたにおすすめの小説
贖罪の花嫁はいつわりの婚姻に溺れる
マチバリ
恋愛
貴族令嬢エステルは姉の婚約者を誘惑したという冤罪で修道院に行くことになっていたが、突然ある男の花嫁になり子供を産めと命令されてしまう。夫となる男は稀有な魔力と尊い血統を持ちながらも辺境の屋敷で孤独に暮らす魔法使いアンデリック。
数奇な運命で結婚する事になった二人が呪いをとくように幸せになる物語。
書籍化作業にあたり本編を非公開にしました。
あなたは私を愛さない、でも愛されたら溺愛されました。
桔梗
恋愛
結婚式当日に逃げた妹の代わりに
花嫁になった姉
新郎は冷たい男だったが
姉は心ひかれてしまった。
まわりに翻弄されながらも
幸せを掴む
ジレジレ恋物語
女騎士と鴉の秘密
はるみさ
恋愛
騎士団副団長を務める美貌の女騎士・シルヴィ。部下のマリエルを王都に連れ帰ってきたのは魔女の息子・エアロだった。惹かれ合う二人だが、シルヴィが城へ行くと、エアロの母である魔女には目も合わせて貰えず…。
※拙作『団長と秘密のレッスン』に出て来るシルヴィとエアロの話です。前作を読んでいないと、内容が分からないと思います。
※ムーンライトノベル様にも掲載しています。
可愛げのない令嬢は甘やかされ翻弄される
よしゆき
恋愛
両親に可愛がられず、甘え方を知らず、愛嬌のない令嬢に育ったアルマ。彼女には可愛らしく愛嬌のある自分とは正反対の腹違いの妹がいた。
父に決められた婚約者と出会い、彼に惹かれていくものの、可愛げのない自分は彼に相応しくないとアルマは思う。婚約者も、アルマよりも妹のリーゼロッテと結婚したいと望むのではないかと考え、身を引こうとするけれど、そうはならなかった話。
毎週金曜日、午後9時にホテルで
狭山雪菜
恋愛
柳瀬史恵は、輸入雑貨の通販会社の経理事務をしている28歳の女だ。
同期入社の内藤秋人は営業部のエースで、よく経費について喧嘩をしていた。そんな二人は犬猿の仲として社内でも有名だったけど、毎週金曜日になると二人の間には…?
不定期更新です。
こちらの作品は「小説家になろう」にも掲載しております。
泡風呂を楽しんでいただけなのに、空中から落ちてきた異世界騎士が「離れられないし目も瞑りたくない」とガン見してきた時の私の対応。
待鳥園子
恋愛
半年に一度仕事を頑張ったご褒美に一人で高級ラグジョアリーホテルの泡風呂を楽しんでたら、いきなり異世界騎士が落ちてきてあれこれ言い訳しつつ泡に隠れた体をジロジロ見てくる話。
旦那様が素敵すぎて困ります
秋風からこ
恋愛
私には重大な秘密があります。実は…大学一のイケメンが旦那様なのです!
ドジで間抜けな奥様×クールでイケメン、だけどヤキモチ妬きな旦那様のいちゃラブストーリー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる