「俺にしがみつくのはやめろ」と言われて恋が覚めたので、しがみつかずにリリースします。相容れないとほざくあなたは、今、私に捨てられましたわ

西野歌夏

文字の大きさ
13 / 51
1 あなた裏切ったわね

これは、デートですか(2)

しおりを挟む
サロンの個室は贅沢な内装だった。ふかふかのソファに2人で座り込み、私たちは真剣な話を始めた。胸の高鳴りを誤魔化すために、私は持ってきた鞄から紙とペンを取り出して、可能性をメモし始めた。

手が震えていたが、もう平気だ。

「まず、『魔力』の遮断について……」

事件の原因の可能性について、私たちは議論し始めた。クリスとソフィアをとっちめるために、父である伯爵を学院に連れて行く計画を忘れてはならない。だが、621人が亡くなる列車事故を防ぐために、私たちは頭を寄せ合うようにして、まずやるべき事を話し合った。

私たちのデートみたいな逢瀬は、真剣勝負の話し合いだった。彼は包み隠せず私に話した。

「『魔力配達人』の監督庁は、王立魔術博物館だ。ブレンジャー子爵が館長だ。ちなみに……エミリー・ブレンジャー子爵令嬢は俺のかつての浮気相手だ。王立魔術博物館の切符売り場で働くテスは、王家の元メイドで、彼女も俺の浮気相手だ。この2人と浮気したことがバレてディアーナに振られた。私は2度と浮気はしない。これは神に誓う。で、魔力供給が絶たれていたとすれば、まずは王立魔術博物館を調べるべきだろう」

私は真剣に書き留めながら、アルベルト王太子に心を持って行かれてはならないと自分を戒めた。氷の貴公子は、とんでもない魅力の持ち主だが、とんでもない罪な事をしでかして振られている。振られて当然だ。

――ちなみに、ブランドン公爵令嬢とエミリーは親友だったと……。

私は包み隠さず教えてくれてありがとうと心の中で思った。

――ほら、氷の貴公子は私の手に負えるような人物ではないわ。心を持って行かれてはだめ。

「そういえば、クリスはどうなった?」

ふと、アルベルト王太子に聞かれて紙から顔を上げた私はハッとした。

「今日、父がエイトレンスにやってきているのですわ。父にクリスとソフィアが何をしているのか直に目撃させようと思っています」
「何だって!なぜ早くそれを言わないんだ。俺も手伝う。善は急げだ。行こう、フローラ」

私は急に慌て始めたアルベルト王太子に急かされてサロンを出て、王家の用意した馬車に乗った。後ろからジャックとシャーロットが別の馬車でついてきた。

「そんな絶好のチャンスのことをなぜ言わないんだ……。私も君の父上のガトバン伯爵に是非ご挨拶したい」

私は呆然としたが、アルベルト王太子の剣幕にたじろぎながらも、父が泊まるホテルの名前を告げた。

「父はベイメアホテルに宿泊しているわ」
「わかった。ザ・ベイメアまで大至急だ」

アルベルト王太子が王家の御者に告げると、王家のお仕着せを着た御者たちは急ぎ父が泊まるホテルまで馬車を走らせた。

――お父様、私がアルベルト王太子と一緒にホテルに行ったらびっくりなさらないかしら?

私はまたドキドキしてきた胸をそっと抑えて、馬車の中で深呼吸をした。

クリスの不貞の瞬間を父の目に晒すのは、とても嫌なことだったが、クリスの本性を明らかにするためには避けられないことだ。継母がクリスと繋がりがあるように思えた件が引っかかっていたが、とにかくまずはクリスと婚約破棄することに集中しようと思った。

――もし、ソフィアとクリスが裸でいたらどうしよう?

前世の浮気発覚の現場を思い出して、私はハラハラする修羅場にならないかと胃がキリキリと痛んだ。


しおりを挟む
感想 13

あなたにおすすめの小説

不貞の子を身籠ったと夫に追い出されました。生まれた子供は『精霊のいとし子』のようです。

桧山 紗綺
恋愛
【完結】嫁いで5年。子供を身籠ったら追い出されました。不貞なんてしていないと言っても聞く耳をもちません。生まれた子は間違いなく夫の子です。夫の子……ですが。 私、離婚された方が良いのではないでしょうか。 戻ってきた実家で子供たちと幸せに暮らしていきます。 『精霊のいとし子』と呼ばれる存在を授かった主人公の、可愛い子供たちとの暮らしと新しい恋とか愛とかのお話です。 ※※番外編も完結しました。番外編は色々な視点で書いてます。 時系列も結構バラバラに本編の間の話や本編後の色々な出来事を書きました。 一通り主人公の周りの視点で書けたかな、と。 番外編の方が本編よりも長いです。 気がついたら10万文字を超えていました。 随分と長くなりましたが、お付き合いくださってありがとうございました!

売られた先は潔癖侯爵とその弟でした

しゃーりん
恋愛
貧乏伯爵令嬢ルビーナの元に縁談が来た。 潔癖で有名な25歳の侯爵である。 多額の援助と引き換えに嫁ぐことになった。 お飾りの嫁になる覚悟のもと、嫁いだ先でのありえない生活に流されて順応するお話です。

【完結】番としか子供が産まれない世界で

さくらもち
恋愛
番との間にしか子供が産まれない世界に産まれたニーナ。 何故か親から要らない子扱いされる不遇な子供時代に番と言う概念すら知らないまま育った。 そんなニーナが番に出会うまで 4話完結 出会えたところで話は終わってます。

犬猿の仲の政略結婚なのに、旦那様が別れてくれません。

屋月 トム伽
恋愛
没落寸前のせいで、次の爵位を継ぐ者が次から次へと放棄していき、縁談すらもない没落寸前のウォールヘイト伯爵家の最後の一人になったティアナ。仕方なく殿下に縁談をお願いすると、犬猿の仲のセルシスフィート伯爵家の次期伯爵ウォルト様との結婚が決ってしまった。 しかし、、ウォルト様の父であるセルシスフィート伯爵がティアナに提案してきたのは、三年だけの結婚。結婚相手の次期セルシスフィート伯爵であるウォルト様は、隣国に旅立ってしまい、不在のままでの一人結婚生活が始まった。 それから、一年以上過ぎると、急遽隣国から帰還したウォルト様。彼は、結婚生活を続けてほしいと提案してきて……。 ※カクヨム様では完結済み

【完結】王子から婚約解消されましたが、次期公爵様と婚約して、みんなから溺愛されています

金峯蓮華
恋愛
 ヴィオレッタは幼い頃から婚約していた第2王子から真実の愛を見つけたと言って、婚約を解消された。  大嫌いな第2王子と結婚しなくていいとバンザイ三唱していたら、今度は年の離れた。筆頭公爵家の嫡男と婚約させられた。  のんびり過ごしたかったけど、公爵夫妻と両親は仲良しだし、ヴィオレッタのことも可愛がってくれている。まぁいいかと婚約者生活を過ごしていた。  ヴィオレッタは婚約者がプチヤンデレなことには全く気がついてなかった。  そんな天然気味のヴィオレッタとヴィオレッタ命のプチヤンデレユリウスの緩い恋の物語です。  ゆるふわな設定です。  暢気な主人公がハイスペプチヤンデレ男子に溺愛されます。  R15は保険です。

贖罪の花嫁はいつわりの婚姻に溺れる

マチバリ
恋愛
 貴族令嬢エステルは姉の婚約者を誘惑したという冤罪で修道院に行くことになっていたが、突然ある男の花嫁になり子供を産めと命令されてしまう。夫となる男は稀有な魔力と尊い血統を持ちながらも辺境の屋敷で孤独に暮らす魔法使いアンデリック。  数奇な運命で結婚する事になった二人が呪いをとくように幸せになる物語。 書籍化作業にあたり本編を非公開にしました。

第3皇子は妃よりも騎士団長の妹の私を溺愛している 【完結】

日下奈緒
恋愛
王家に仕える騎士の妹・リリアーナは、冷徹と噂される第3皇子アシュレイに密かに想いを寄せていた。戦の前夜、命を懸けた一戦を前に、彼のもとを訪ね純潔を捧げる。勝利の凱旋後も、皇子は毎夜彼女を呼び続け、やがてリリアーナは身籠る。正妃に拒まれていた皇子は離縁を決意し、すべてを捨ててリリアーナを正式な妃として迎える——これは、禁じられた愛が真実の絆へと変わる、激甘ロマンス。

偶然同じ集合住宅の同じ階に住んでいるだけなのに、有名な美形魔法使いに付き纏いする熱烈なファンだと完全に勘違いされていた私のあやまり。

待鳥園子
恋愛
同じ集合住宅で同じ階に住んでいた美形魔法使い。たまに帰り道が一緒になるだけなんだけど、絶対あの人私を熱烈な迷惑ファンだと勘違いしてる! 誤解を解きたくても、嫌がられて避けられている気もするし……と思っていたら、彼の部屋に連れ込まれて良くわからない事態になった話。

処理中です...