【完結】何んでそうなるの、側妃ですか?

西野歌夏

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17 一生そばにいて

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 ヨナンを見送って宮殿の裏門にいる私とイザークの所に、たっぷりと国王と王妃から釘を刺されたノーザント子爵家のクリフがよろよろとやってきた。


「リジー、リジーと別れたから俺、散々なん……」


 クリフが言いかけた所で、イザークことヨナン妃にバシッと割って入られた。


「あろうことか、第二妃に向かって軽々しく名前を呼ぶとは何事ですか!?」


 低いながらも女性の声に聞こえる中性的な声だ。


 あぁ。
 いざとなればこういう声も出すんだ。


 美女にしか見えないイザーク。


 クリフはハッとした顔でイザーク扮するヨナン妃を見つめた。叱られたのに、惚れ惚れしている表情だ。


「ほんものすげーっ色気、やっぱ違う……俺なんで間違えた?」


 あぁ、バカだクリフ。

 私はなんでこんなチャラい若者と婚約して初めてを捧げるつもりだったんだろう?


 これはないわ。
 断じてないわ。


「……ないわ。リジー、正解だわ。アランの方が数千倍いい」


 イザーク扮するヨナン妃に囁かれた。

 私は思わず嬉しくて、少し気分が晴れて、イザーク扮するヨナン妃に抱きついた。


「あら?その気になった、俺と?」


 私たちは笑い合いながら、イザーク扮するヨナン妃に目がハートになったクリフをそこに置いて戻った。
 





 部屋に戻ると、マリーがヤキモキした表情で待っていた。
 

「お嬢様ぁっ!大変です。国王陛下と王妃様がお待ちですっ!」


 バレた?
 嘘でしょう?
 そんなはずある?

 ヨナンは今迎えの馬車に乗って帰った。

 どうしよう?


 私は身代わり政略結婚の件がついにバレたのかと冷や汗が出た。

 もはや、私も知って騙した側の人間だ。


 覚悟を決めて部屋の外に出ると、初めて見る従者が待っていた。彼に付いて黙って歩いて行く。私の後ろからマリーも付いてきた。


 マリーは何事か分かっていない。

 ただ、雰囲気的にただならぬ事が起きたと思っているらしく、青ざめて両手をしきりと握りしめて祈るようなポーズをとっている。


 マリー、今回ばかりはだめかもだ。
 私は隠してはならぬことを隠した。


 国家間の利権が絡むとあれば、何らかの罪に問われる可能性があるかも?
 
 そんなっ!

 
 ドアを開けると、厳しい顔をした国王と王妃が椅子に座っていた。そばにはアラン王子がいる。


 3人だけだ。
 3人の前には、契約書のようなものが広げられていた。


 な……なんでしょう?

 
「エリザベス、あなたに聞きます」


 王妃がまず口を開いた。


「は……はい」


 ゴクリと唾を飲む。
 話の行先がまるでわからない。
 怖い。


「あなたには覚悟がありますか?」 


 な……なんのでしょう?
 何の覚悟かおっしゃってくださいましっ!

 罰せられる覚悟でしょうか?
 まさか、島流し的な……っ!?


 ひぃっ


 息を飲む私に、厳しい眼差しで王妃が私を見つめた。


「エリザベスっ!」
「はいっ!」
 
 王妃のあまりの剣幕に条件反射で返事をする私。


「我が国の未来の王妃になる覚悟があなたにありますかっ!?」
「はいっ!」


 へ……?
 今なんと!?


「あるのね。いいわ」 


 静かに厳しい声で王妃は言った。そして、国王に向かって伝えた。
 

「陛下、エリザベスは既に覚悟を決めているようですわ。問題ございません」


 待って。
 待って待っ……!


 横でアランが首を縦に振っているのが見えた。


 何をっ!?
 何を勝手に……?


「側妃は、アランが選んだ。本来ならば、厳重な審議が行われて未来の王妃は決められるものだが、エリザベスは側妃ではなく、第一妃としてアランの生涯の伴侶となり、我が国の未来の王妃となってもらうことになる」 


 国王はスラスラと喋った。


 はぁっ!?

 いたしただけですが、ご……ご冗談をっ!?


「エリザベス、ペジーカから正式な申し入れがあった。利権の共有はこのままとし、ヨナンを第二妃に降格し、できれば自由にして欲しいと」


 私は口がぱくぱくと動くだけで、言葉を発せない。


 余計なことは言えない。

 イザークをヨナン妃から解放するための、最良の方法だというのは分かった。


 だから嫌とは言えない。
 言っちゃだめ、私!


「わかりました」

 
 私はそれだけ言葉を搾り出した。


「よしっ!これでいいな?ヨナンも幸せだし、アランも幸せ。エリザベスも幸せなんだな?」


 国王が突然砕けたモードで言った。


 もしかして、アランの軽さは陛下譲りですか……?
 

「私はアランとエリザベスなら、この国を支えていけると思う。ヨナンも時々力を貸してくれると約束してくれている」

「そうでございますわね。アランとエリザベスは……なんと言いますか、相性がその……良いようですからね」


 国王と王妃が何を話しているのか耳に入らない。


 煌めく瞳を私に向けた背の高いイケメンが、美しい笑みを浮かべて私の方に歩いてきた。


「だからさぁ、リジー、俺リジーを本気で愛しているって言ったでしょ。守るから」


 私はぎゅっと抱きしめられて、耳元で囁かれた。頭がクラクラとする。


 何でそうなるの、王妃ですかっ!?


「今晩もこれからもずーっと、俺はリジーだけを愛するから。一生そばにいて……」


 温かくて柔らかい唇が私の唇に落ちてきて、舌が入ってきた。
 

 あぁっんっ


 陛下の前で何をっ!?




 
 酔って散らした挙句、予期せぬ展開で幸せになったかも……?




 私のワンナイトは、良きせぬ展開へ。




   

       完


お読みいただきまして、本当にありがとうございます。感謝申し上げます。



出来心で大変申し訳ございません。
お楽しみいただけたら幸いでございます。



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