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癒し(5)
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私はイーサンに手を引かれて、別の部屋に連れて行かれた。イーサンが私の手を握って歩いてくれるだけで、私の心は浮き立つ。あんなことをされたのにまだ私はイーサンに心を残してしまっている。
「会長、朝ごはんを食べてから病院に行きましょう。コーヒーとトーストと…………それから、あ、そこに座っていていいから。俺が全部準備しますから」
イーサンはそう言って、私をテーブルのところまで連れて行きって椅子に座らせてくれた。心配そうに私の顔をのぞきこんでいるイーサンに私は泣きそうになる。嬉しいと思う自分を抑えきれない。私は本当にバカな生き物だ。
思わず下を向いて溢れた涙を拭う私を、そっとイーサンは抱きしめた。
「大丈夫、大丈夫。会長、すぐに記憶は戻るから。大丈夫だから」
小さな子をあやすように、よしよしとイーサンは私の背中を撫ででくれた。イーサンは私を安心させて励まそうとしている。私が泣いているのは別の理由だけれども。
私はイーサンが朝食を準備する様子を眺めた。今までは、イーサンが私のために朝食を準備するなんて考えられないことだった。
キッチンらしきところで火を使ったりしているのだが、私にはその設備が全く理解できない。ここは一体どこなのだろう。勝手に火が出るなんて、どういう仕組みなのかさっぱり分からない。給仕の人もいないようだし、料理人もいないようだ。全部の作業をイーサン一人でテキパキとこなしている。
「はい、どーぞ」
イーサンが満面の笑顔で次々と運んでくるものを、私はマゴマゴしながら食べた。とても美味しい。何より、イーサンの笑顔が甘い。こんな笑顔をイーサンは今まで私に向けたことはなかった。アーニャには向けていたのだろうか。そう思うと私の胸がチクリと痛んだ。
「美味しい?」
「会長、朝ごはんを食べてから病院に行きましょう。コーヒーとトーストと…………それから、あ、そこに座っていていいから。俺が全部準備しますから」
イーサンはそう言って、私をテーブルのところまで連れて行きって椅子に座らせてくれた。心配そうに私の顔をのぞきこんでいるイーサンに私は泣きそうになる。嬉しいと思う自分を抑えきれない。私は本当にバカな生き物だ。
思わず下を向いて溢れた涙を拭う私を、そっとイーサンは抱きしめた。
「大丈夫、大丈夫。会長、すぐに記憶は戻るから。大丈夫だから」
小さな子をあやすように、よしよしとイーサンは私の背中を撫ででくれた。イーサンは私を安心させて励まそうとしている。私が泣いているのは別の理由だけれども。
私はイーサンが朝食を準備する様子を眺めた。今までは、イーサンが私のために朝食を準備するなんて考えられないことだった。
キッチンらしきところで火を使ったりしているのだが、私にはその設備が全く理解できない。ここは一体どこなのだろう。勝手に火が出るなんて、どういう仕組みなのかさっぱり分からない。給仕の人もいないようだし、料理人もいないようだ。全部の作業をイーサン一人でテキパキとこなしている。
「はい、どーぞ」
イーサンが満面の笑顔で次々と運んでくるものを、私はマゴマゴしながら食べた。とても美味しい。何より、イーサンの笑顔が甘い。こんな笑顔をイーサンは今まで私に向けたことはなかった。アーニャには向けていたのだろうか。そう思うと私の胸がチクリと痛んだ。
「美味しい?」
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