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秘密の協定(1)

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 懐かしい伯爵家の庭で、私とアーニャは向かい合って座っていた。私が以前に設置した東屋で、とてもよく手入れがされている。私が植えた木々に色とりどりの花が咲き乱れ、私の気持ちを優しく癒した。

「アーニャ、おめでとう」
「キャロラインこそ、おめでとう」

 アーニャの目に涙が溢れ出てきた。

「ごめんなさい、キャロライン」
「いいのよ。私も悪かったところがあるから。私も本当にごめんなさい」
「あの日、あなたを私は呼び出したけど、でもまさかあなたが事故に遭うなんて思わなかったのよ」

 アーニャは泣きじゃくった。声が震えていた。肩も小刻みに震えている。

 ――あの、裏切りを初めて知って、ショックのあまりに馬車に轢かれた時ね。ということは、アーニャはあの時を覚えているの?

「アーニャ、私は今生きているわ。もしかして、私が馬車に轢かれた時の事を覚えているの?」
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