夫である伯爵に裏切られましたが、王家に輿入れすることになりました

キャロラインの奮闘（１） ※

　王太子妃である私は、新たな村の視察に行くためにハイベリー宮殿を出て、馬車で候補の村に向かっていた。今日の行き先はジョージ・ブルーデネルが見つけてきた村だった。いつものように騎士団が守ってくれていた。しかし、途中で騒ぎに遭遇した。ひどい子供の泣き声がすると思って目を開けると、なんとまた会長の世界にいたのだ。

　――え？この綺麗な人は……確かビッグスターと会長が呼んでいた人ね？
　
　目の前には会長の相手役の美しい女性が私の顔をのぞき込んでいた。

「キャロライン？」

　その女性が私にささやいたので、私は心底驚いた。私の名前を知っているはずがない女性だ。

「チェスターから全て聞いたの。あなたは今、キャロラインね？」
「ええ」

　私はうなずいた。

「嬉しいわ。これからベッドシーンの撮影なの。愛し合う二人が振る舞うと思う通りに、あなたは行動してほしいの」
「……わかったわ……」

　私はよくわからないがいつもの通りにやるしかないと思った。目の前の女性は頬を赤らめて私を見つめている。瞳は潤んでいて、私に恋焦がれたように見つめていた。私は王太子閣下ならどうするだろうと考えた。

　――王太子閣下が振る舞うように振る舞うのよ、キャロライン。あのときめきを胸に……

　私は初めての夜の王太子閣下を思い出して赤面してしまった。無理だ。あんなことを自分がするのは無理だと思った。

　しかし、いつもの合図が聞こえた。

「さあ、本番行きます」

　その声を聞くと、目の前の美しい女性は私の手を取って、準備されたベッドの場所まで連れて行ってくれた。

「あなたは今チェスター。とてもハンサムな男性よ」

　美しい女性は私にささやいた。私はうなずいた。

「よーい、アクション！」