上 下
35 / 84
2ー解毒術の権威

38 解毒術の権威は過去にいる

しおりを挟む
「噛まれたときの解毒は、結局間に合わなかったの?」

 ジョンがもう一度わたしに聞いた。ジョンの表情は固くこわばっている。目を見開いていて、ジョンが心底驚いたと分かった。
 
「そうなの」

 わたしは仕方なく告白した。わたしはついに、自分が吸血鬼になりかけていることをジョンと王子に打ち明けたのだ。

「でも、雨の日とか、そういう日になんとなく血が飲みたくなるというだけで、行動に移したことはないわ。抑えられない渇望というわけではないのよ」
 
 わたしは慌ててつけ加えた。

 解毒術。わたしは解毒に関してタイムオーバーした場合のケースを習っていない。

「ジョン、解毒に失敗したケースの対処法について魔法寺小屋学校で習った?」
「いやあ、習っていないと思うけど」

「でしょう?わたしもよ。なので、当時に戻って解毒術の権威に聞いてくるわ」
「どういう意味?」
「解毒術の権威は過去にいるわ。わたしたちの教授はもう生きていない。教授に会いに過去に行くのよ」


 私たちの解毒術の教授は柳原名誉教授だ。魔法寺小屋学校でピカイチの腕というだけでなく、世界の解毒術の権威だった。教授は私たちが魔法寺小屋時代の時に亡くなっていた。教授に改めて教えを乞うには、過去にタイムリープしなければならない。

しおりを挟む

処理中です...