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3ー愛の着地
77 ばあちゃん、まかしときっ!
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平成の夏。
半袖に下は短パン姿で、俺は沙織の祖母の家の縁側でスイカを食べている。扇風機の壁が心地よい。風鈴がチリンチリンと鳴っている。
「もう1つ食べなさんね」
沙織の祖母は、右半身が不自由だ。俺の隣に置いた椅子に座って一緒に夕涼みしていた。スイカを左手で俺に差し出してくれた。
「ありがとう」
俺は働いたあとなので、遠慮なくスイカを頂いた。
庭の草も取り終え、家中の拭き掃除も終わった。
母上が高梨という奴に借りてきたのはトレーナーだけでなく、Tシャツと短パンという人間の服もだった。
「暑いのよ」
母上はそう言って、当たり前のようにTシャツ姿になった。下はあずき色のジャージ姿だったけれども。
沙織の祖母がなぜ平成にいるのかは謎だ。しかも目の前にいる祖母は忍びではなく、人間だ。
俺は母上に言われたとおりに働いた。忍びの術を少しばかり使ったので、母上と2人でやれば、草取りも家中の拭き掃除も1時間もすれば終わった。
スイカは来る途中の近くのスーパーで、ガッシュクロース公爵夫人と母上が大騒ぎして買ってきた手土産だ。
スーパーで冷えていたし、沙織の祖母がタライに入れた氷で冷やしたので、とても美味しかった。
公爵夫人は申し訳程度に慣れない様子で、拭き掃除を手伝ったが、もっぱら祖母の話し相手役だった。
上はTシャツで下はトレーナーを着た夫人と母上は、気心の知れた仲らしく、祖母と会話が弾んでいた。
皆で仲良く縁側に並んでスイカを食べた。
1512年の公爵夫人、数億年先未来から来た忍びの元お妃の母上、王子の俺、平成に生きる沙織の祖母。
風鈴の音と扇風機の風が心地よい夕暮れだった。
「おばあさま、このたび沙織さんをうちの嫁にもらうことになりました。この子と一緒に沙織さんを幸せにしますわ。」
突然、母上が改まって姿勢を正して沙織の祖母に言った。
「ええ。そうね」
沙織の祖母はニコニコしてそう言った。
「あ、ばあちゃん。俺、沙織を絶対に幸せにするから。約束するよ!」
俺も慌てて言った。
「ええ。あんたが沙織の旦那さんね。ええ」
沙織の祖母は目がなくなるほどの笑みを浮かべて無邪気な様子で微笑んた。
「ばあちゃん、まかしときっ!」
俺は自分の胸をドンと叩いた。
ガッシュクロース夫人はその様子をニコニコして見ていた。
俺たちは沙織の祖母のスイカの片付けをして、お皿も洗って、祖母に「また来るね!」と挨拶をした。右半身を引きずって玄関の上り口まで見送りにきた祖母は、笑顔で手を振ってくれた。
田んぼの畦道を帰りながら、俺と母上とガッシュクロース公爵夫人は手をつないだ。
「滝のそばの水路にいるカニ!」
ガッシュクロース公爵夫人が叫んだ時、俺はそれを見た。平成の夏は暑く、水路には小さなカニが確かにいた。
「さあ、帰ったら婚姻の儀よ」
母上がそう俺に告げた。
半袖に下は短パン姿で、俺は沙織の祖母の家の縁側でスイカを食べている。扇風機の壁が心地よい。風鈴がチリンチリンと鳴っている。
「もう1つ食べなさんね」
沙織の祖母は、右半身が不自由だ。俺の隣に置いた椅子に座って一緒に夕涼みしていた。スイカを左手で俺に差し出してくれた。
「ありがとう」
俺は働いたあとなので、遠慮なくスイカを頂いた。
庭の草も取り終え、家中の拭き掃除も終わった。
母上が高梨という奴に借りてきたのはトレーナーだけでなく、Tシャツと短パンという人間の服もだった。
「暑いのよ」
母上はそう言って、当たり前のようにTシャツ姿になった。下はあずき色のジャージ姿だったけれども。
沙織の祖母がなぜ平成にいるのかは謎だ。しかも目の前にいる祖母は忍びではなく、人間だ。
俺は母上に言われたとおりに働いた。忍びの術を少しばかり使ったので、母上と2人でやれば、草取りも家中の拭き掃除も1時間もすれば終わった。
スイカは来る途中の近くのスーパーで、ガッシュクロース公爵夫人と母上が大騒ぎして買ってきた手土産だ。
スーパーで冷えていたし、沙織の祖母がタライに入れた氷で冷やしたので、とても美味しかった。
公爵夫人は申し訳程度に慣れない様子で、拭き掃除を手伝ったが、もっぱら祖母の話し相手役だった。
上はTシャツで下はトレーナーを着た夫人と母上は、気心の知れた仲らしく、祖母と会話が弾んでいた。
皆で仲良く縁側に並んでスイカを食べた。
1512年の公爵夫人、数億年先未来から来た忍びの元お妃の母上、王子の俺、平成に生きる沙織の祖母。
風鈴の音と扇風機の風が心地よい夕暮れだった。
「おばあさま、このたび沙織さんをうちの嫁にもらうことになりました。この子と一緒に沙織さんを幸せにしますわ。」
突然、母上が改まって姿勢を正して沙織の祖母に言った。
「ええ。そうね」
沙織の祖母はニコニコしてそう言った。
「あ、ばあちゃん。俺、沙織を絶対に幸せにするから。約束するよ!」
俺も慌てて言った。
「ええ。あんたが沙織の旦那さんね。ええ」
沙織の祖母は目がなくなるほどの笑みを浮かべて無邪気な様子で微笑んた。
「ばあちゃん、まかしときっ!」
俺は自分の胸をドンと叩いた。
ガッシュクロース夫人はその様子をニコニコして見ていた。
俺たちは沙織の祖母のスイカの片付けをして、お皿も洗って、祖母に「また来るね!」と挨拶をした。右半身を引きずって玄関の上り口まで見送りにきた祖母は、笑顔で手を振ってくれた。
田んぼの畦道を帰りながら、俺と母上とガッシュクロース公爵夫人は手をつないだ。
「滝のそばの水路にいるカニ!」
ガッシュクロース公爵夫人が叫んだ時、俺はそれを見た。平成の夏は暑く、水路には小さなカニが確かにいた。
「さあ、帰ったら婚姻の儀よ」
母上がそう俺に告げた。
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