2 / 58
第二話 兵隊さんに這い依ろう
しおりを挟む
「軍隊と言うところは理不尽の塊だ。東京で育ったお前には辛いだろうが頑張るんだぞ」
山形のド田舎から出て、東京で身を立てた私の父は、私が入営する時にそう言っていた。
「ええか、要領よくやるんだぞ、なまじ口答えをすると、すぐ鉄拳が飛んでくる。出来るだけ目立たずいろ、」
そんなことも言われた気がする。だがこの状況に対処する方法は教えてはくれなかった。
入営より三日、軍隊では三日目まではお客様と言う言葉がある。
それまでニコニコ顔で優しい先任兵が、鬼の形相で軍隊生活の厳しさを叩き込んでくるのだ。
この温度差が新兵の味わう軍隊の洗礼、第一弾になると言う。
第二機関銃中隊第三班が班長である茂木伍長に食らっているのがそれだ。
「恥ずかしいとは何事だ!それでも貴様帝国軍人か!」
「ですがね、伍長どの、いくら何でもこれは、、、、」
「口答えするな!ですがね?なんだそのものの言いようは!ここはシャバじゃないんだぞ!」
(ほら来た、親父が言っていた三日目の洗礼と言うやつだ。)
そう思いながら佐々木二等兵は、同じく二等兵の青木が怒鳴られるのを、初年兵の、班員一同と並ばせながら見ていた。
鉄拳が飛ぶか、連帯責任で自分にも類が及ぶかとドキドキしている佐々木二等兵。
ああっ悲しいかな帝国陸軍二等兵、いくら体罰禁止と上が言ってもやるやつはやるのだ。
「メイドさんに下帯を洗われるのが恥ずかしいだと!それでも男か」
?????????メイドさん?いまメイドさんて言った?
そう確かに茂木伍長はメイドさんと言った。なんで?ここは帝国陸軍だよね?いやイギリス陸軍でもメイドさんは居ないはずだが。
そう言えば男所帯の内務班が妙に小奇麗だ。
軍隊たるもの清潔には気を付けている。それにしても至る所ピカピカではないか。花なんか生けてある。
その上内務班内にはフローラルな香りまでする。男臭さが欠片もない。
カメラを引いてみて見てみよう。ありゃなんだ?伍長の後ろに妙齢の美女、美少女と言ってもいい女性が居るではないか!
「帝国陸軍に入営した以上、貴様らの生活はメイドさんが一切受け持つ!お前たちがやることは戦争のぷろふぇっしょなるになることだ!それがなんだ恥ずかしいとは!」
なれぬ横文字まで使って怒鳴る伍長。聞いてるこっちが頭がおかしくなりそうだ。伍長は続ける。
「この際だから言っておく、これよりお前たちには全員には一人づつメイドさんが付く、恥ずかしい等とは言っておられんぞ覚悟しろ!以上、別れ!」
「「別れます!」」
弾かれた様に解散する新兵たち。何なんだこれは?
佐々木二等兵の兵隊生活はこうして始まった。
メイドさんたち仕事はすごい。お早うからお休みまで、掃除洗濯、半長靴磨きに飯の用意(飯はビックリするほど美味かった)ベットメイクに馬の世話、銃器の手入れは兵隊さんと仲良く一緒に、演習場へのトラック運転までこなすのだ。
その代わり演習となると兵隊は大変だ、実弾を使ってバリバリやる。一月で九二式重機関銃の銃身が摩耗してしまうほどだ。直ぐに変えの重機関銃が来たのも驚きだ。
そんなこんな三月四月は夢のまに過ぎ。
軍隊にも慣れてきた佐々木二等兵は酒保で同期と束の間休息を取っている。
酒保は何でも民間に委託(確かコンビニエンスストアとか言ったか)したとかで種類豊富24時間営業のどえらい物になっていた。
「なあ、青木よう」
「なんだ佐々木二等卒」
「やめろよ、縁起でもない。しかし俺、軍隊生活がこんなだとは思ってなかったよ。親父から軍隊といったら無理と理不尽が徒党を組んで来る所だと聞いてたんだぜ」
「その代わり弾が山ほど飛んでくるがな、おれ今月で二回も小銃が焼き付いた。メイドさんが直ぐに変えくれたけど」
「なあ、メイドさんてなんだろうな?」
「何って、メイドさんはメイドさんだろ。可愛くて、なんでもできて、おれ軍隊辞めたら結婚する約束しちゃった。楽しみだなー」
「お前なー、そう言うことじゃないんだよ。軍隊になんで女が居るかって話だ。不思議に思わないのか?ここは軍隊!帝国陸軍!いつ女が演習場とは言え、実弾使う戦場にあんなヒラヒラしたメイド服?で付いてくるんだよ」
「そりゃそうだが、ん?確かにそうだな何でだろ?何時でも一緒なんで考えなかった」
そんな疑問を話し合う二人に二名付きのメイドが話しかける。
「「佐々木様、青木様こちらにいらっしゃいましたか。班長様がお呼びです」」
「ゲっ、長介が呼んでる。碌な事じゃないな。いくぞ青木」
「おう」
「「こちらです」」
メイドに導かれ酒保を離れた二人が内務班に戻ったのは次の日の朝点呼の後であったが、その事を問題にする者は居なかった事をここに記しておきたい。
軍用モデル21432 5234 より、高ストレス下の対象への教育プロトコル変更を要請、、、、送信完了。
軍用モデル21432 5234へ 要請を受理 変更プロトコルを送信、、、、お婿さんまってます、、、送信完了
山形のド田舎から出て、東京で身を立てた私の父は、私が入営する時にそう言っていた。
「ええか、要領よくやるんだぞ、なまじ口答えをすると、すぐ鉄拳が飛んでくる。出来るだけ目立たずいろ、」
そんなことも言われた気がする。だがこの状況に対処する方法は教えてはくれなかった。
入営より三日、軍隊では三日目まではお客様と言う言葉がある。
それまでニコニコ顔で優しい先任兵が、鬼の形相で軍隊生活の厳しさを叩き込んでくるのだ。
この温度差が新兵の味わう軍隊の洗礼、第一弾になると言う。
第二機関銃中隊第三班が班長である茂木伍長に食らっているのがそれだ。
「恥ずかしいとは何事だ!それでも貴様帝国軍人か!」
「ですがね、伍長どの、いくら何でもこれは、、、、」
「口答えするな!ですがね?なんだそのものの言いようは!ここはシャバじゃないんだぞ!」
(ほら来た、親父が言っていた三日目の洗礼と言うやつだ。)
そう思いながら佐々木二等兵は、同じく二等兵の青木が怒鳴られるのを、初年兵の、班員一同と並ばせながら見ていた。
鉄拳が飛ぶか、連帯責任で自分にも類が及ぶかとドキドキしている佐々木二等兵。
ああっ悲しいかな帝国陸軍二等兵、いくら体罰禁止と上が言ってもやるやつはやるのだ。
「メイドさんに下帯を洗われるのが恥ずかしいだと!それでも男か」
?????????メイドさん?いまメイドさんて言った?
そう確かに茂木伍長はメイドさんと言った。なんで?ここは帝国陸軍だよね?いやイギリス陸軍でもメイドさんは居ないはずだが。
そう言えば男所帯の内務班が妙に小奇麗だ。
軍隊たるもの清潔には気を付けている。それにしても至る所ピカピカではないか。花なんか生けてある。
その上内務班内にはフローラルな香りまでする。男臭さが欠片もない。
カメラを引いてみて見てみよう。ありゃなんだ?伍長の後ろに妙齢の美女、美少女と言ってもいい女性が居るではないか!
「帝国陸軍に入営した以上、貴様らの生活はメイドさんが一切受け持つ!お前たちがやることは戦争のぷろふぇっしょなるになることだ!それがなんだ恥ずかしいとは!」
なれぬ横文字まで使って怒鳴る伍長。聞いてるこっちが頭がおかしくなりそうだ。伍長は続ける。
「この際だから言っておく、これよりお前たちには全員には一人づつメイドさんが付く、恥ずかしい等とは言っておられんぞ覚悟しろ!以上、別れ!」
「「別れます!」」
弾かれた様に解散する新兵たち。何なんだこれは?
佐々木二等兵の兵隊生活はこうして始まった。
メイドさんたち仕事はすごい。お早うからお休みまで、掃除洗濯、半長靴磨きに飯の用意(飯はビックリするほど美味かった)ベットメイクに馬の世話、銃器の手入れは兵隊さんと仲良く一緒に、演習場へのトラック運転までこなすのだ。
その代わり演習となると兵隊は大変だ、実弾を使ってバリバリやる。一月で九二式重機関銃の銃身が摩耗してしまうほどだ。直ぐに変えの重機関銃が来たのも驚きだ。
そんなこんな三月四月は夢のまに過ぎ。
軍隊にも慣れてきた佐々木二等兵は酒保で同期と束の間休息を取っている。
酒保は何でも民間に委託(確かコンビニエンスストアとか言ったか)したとかで種類豊富24時間営業のどえらい物になっていた。
「なあ、青木よう」
「なんだ佐々木二等卒」
「やめろよ、縁起でもない。しかし俺、軍隊生活がこんなだとは思ってなかったよ。親父から軍隊といったら無理と理不尽が徒党を組んで来る所だと聞いてたんだぜ」
「その代わり弾が山ほど飛んでくるがな、おれ今月で二回も小銃が焼き付いた。メイドさんが直ぐに変えくれたけど」
「なあ、メイドさんてなんだろうな?」
「何って、メイドさんはメイドさんだろ。可愛くて、なんでもできて、おれ軍隊辞めたら結婚する約束しちゃった。楽しみだなー」
「お前なー、そう言うことじゃないんだよ。軍隊になんで女が居るかって話だ。不思議に思わないのか?ここは軍隊!帝国陸軍!いつ女が演習場とは言え、実弾使う戦場にあんなヒラヒラしたメイド服?で付いてくるんだよ」
「そりゃそうだが、ん?確かにそうだな何でだろ?何時でも一緒なんで考えなかった」
そんな疑問を話し合う二人に二名付きのメイドが話しかける。
「「佐々木様、青木様こちらにいらっしゃいましたか。班長様がお呼びです」」
「ゲっ、長介が呼んでる。碌な事じゃないな。いくぞ青木」
「おう」
「「こちらです」」
メイドに導かれ酒保を離れた二人が内務班に戻ったのは次の日の朝点呼の後であったが、その事を問題にする者は居なかった事をここに記しておきたい。
軍用モデル21432 5234 より、高ストレス下の対象への教育プロトコル変更を要請、、、、送信完了。
軍用モデル21432 5234へ 要請を受理 変更プロトコルを送信、、、、お婿さんまってます、、、送信完了
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
日本の運命を変えた天才少年-日本が世界一の帝国になる日-
ましゅまろ
歴史・時代
――もしも、日本の運命を変える“少年”が現れたなら。
1941年、戦争の影が世界を覆うなか、日本に突如として現れた一人の少年――蒼月レイ。
わずか13歳の彼は、天才的な頭脳で、戦争そのものを再設計し、歴史を変え、英米独ソをも巻き込みながら、日本を敗戦の未来から救い出す。
だがその歩みは、同時に多くの敵を生み、命を狙われることも――。
これは、一人の少年の手で、世界一の帝国へと昇りつめた日本の物語。
希望と混乱の20世紀を超え、未来に語り継がれる“蒼き伝説”が、いま始まる。
※アルファポリス限定投稿
滝川家の人びと
卯花月影
歴史・時代
勝利のために走るのではない。
生きるために走る者は、
傷を負いながらも、歩みを止めない。
戦国という時代の只中で、
彼らは何を失い、
走り続けたのか。
滝川一益と、その郎党。
これは、勝者の物語ではない。
生き延びた者たちの記録である。
甲斐ノ副将、八幡原ニテ散……ラズ
朽縄咲良
歴史・時代
【第8回歴史時代小説大賞奨励賞受賞作品】
戦国の雄武田信玄の次弟にして、“稀代の副将”として、同時代の戦国武将たちはもちろん、後代の歴史家の間でも評価の高い武将、武田典厩信繁。
永禄四年、武田信玄と強敵上杉輝虎とが雌雄を決する“第四次川中島合戦”に於いて討ち死にするはずだった彼は、家臣の必死の奮闘により、その命を拾う。
信繁の生存によって、甲斐武田家と日本が辿るべき歴史の流れは徐々にずれてゆく――。
この作品は、武田信繁というひとりの武将の生存によって、史実とは異なっていく戦国時代を書いた、大河if戦記である。
*ノベルアッププラス・小説家になろうにも、同内容の作品を掲載しております(一部差異あり)。
対ソ戦、準備せよ!
湖灯
歴史・時代
1940年、遂に欧州で第二次世界大戦がはじまります。
前作『対米戦、準備せよ!』で、中国での戦いを避けることができ、米国とも良好な経済関係を築くことに成功した日本にもやがて暗い影が押し寄せてきます。
未来の日本から来たという柳生、結城の2人によって1944年のサイパン戦後から1934年の日本に戻った大本営の特例を受けた柏原少佐は再びこの日本の危機を回避させることができるのでしょうか!?
小説家になろうでは、前作『対米戦、準備せよ!』のタイトルのまま先行配信中です!
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
もし石田三成が島津義弘の意見に耳を傾けていたら
俣彦
歴史・時代
慶長5年9月14日。
赤坂に到着した徳川家康を狙うべく夜襲を提案する宇喜多秀家と島津義弘。
史実では、これを退けた石田三成でありましたが……。
もしここで彼らの意見に耳を傾けていたら……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる