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第四十五話 もう二度と魚は食えないねぇ
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1945年八月十五日
セミパラチンスク核実験場に置いて史上二番目の核保有国が誕生した。
皆クリーム塗れになる時間だよ。
さて皆さん、今までご覧になっていて、アメリカ合衆国だけが枢軸を向こうに回して獅子奮迅の戦いをしているとお思いになってはいないだろうか。
米国側に味方している国もちゃーんといます。
ただ。どの国もいささか小振りなもので目立たないだけの話だ。
旧連合国勢力は、裏切者の名を受けて我が道を行く大英帝国連邦を除き、大正義アメリカ合衆国の味方だ。
英国を除いたら出し殻ばかり?
何を仰るウサギさん!ブラジルだっている、メキシコだっている。
南米の殆どは裏ではどう思っていても口先だけは味方だ!
兵だってイヤイヤ出してる。オランダだって頑張っているんだぞ。
彼らだって本国機能をインドネシアに移して大変なんだよ。
チョット反乱分子を始末するくらいなんだ!
そんな愉快な仲間たちの中でやる気の溢れる連中もいる。
カエルとクリームブリュレが大好きな、その名はフランス亡命政府。
この世界では一番割をくった国だ。
本土は分割され、アジア植民地はペタン元帥に乗っ取られ、アフリカに置いて雌伏している彼らはそれでも諦めてはいない。
ヨーロッパから追い出された米国が、枢軸との激闘を演じてまでアフリカを維持しているのは彼らの為だ。
さあ反撃の時間だ。
大和爆弾に風船爆弾とトラブル続きで予定は遅れたが米国とて、無駄に時間を過ごしていたわけではない。
頓智機風船が落ちてくる中、ローザリベッター達も男に混じって汗をかき、揃えたるは超重爆。
彼らはフランス植民地、モロッコに進出した。
あれ?核はどうした?
君達、コーラと同じで核兵器が無いと生きていけない体なんでしょ?
家主が五月蠅い?ふーん、持って来てないんだ。諦め良いね。
米国が狙ったのはドイツ以外の枢軸国。
ドイツが自国への核兵器投下を恐れる余り、日本から送られるジェット機を独占している為、未だレシプロ機が主力な国々だ。
九月に入り本格的な攻勢が始まる、B29が犠牲を顧みず、イタリア、ハンガリー、ルーマニアを強襲する。
「「何で俺たちを狙うんだ狙うならドイツを狙え!」」
「五月蠅い死ね!」
通常兵器とは言え、相手はB29なのだ、被害続出、今まで味わった事のない本格的な空襲に悲鳴を上げる各国。
ドイツもこれは無視できない。イヤイヤだがフッケバインを装備した部隊の派遣と機体供与を始める。
そこが米国の狙いだとは知らずに。
諦めが良い物か、相手はアメリカだよ。
彼らは待っていた。枢軸の目が大西洋から逸れるのを。
九月十六日、ケルンとボンが核攻撃を受ける。
同日、トリノにも核が投下。
被害地はヨーロッパに留まらない。
遥か極東、千島列島のウルップ島にも核は投下される。何処から飛んできた!
レーダー何やってた!
この攻撃を行ったのは米国の秘密兵器B36。
六発のエンジン、七百キロに届く高速、戦闘半径六千キロの化け物だ。
枢軸各国はB29への対応はして来た。
こいつも十分化け物だが、B36は超化け物。
彼女らは米国本土から奇襲を仕掛けてきたのだ。
米国恐ろしい国!
この成果を引っ提げ、米国は講和を要求。
要求がいれられない時は、米国は迷うことなく枢軸の主要な都市へのかぁく攻勢を継続するだろう!
だが、英国の考える通り、米国は甘く見ていた。
戦略爆撃で国家は負けを認めない。
史実の大日本帝国が降伏した主要原因は機雷封鎖とソ連参戦。
戦略爆撃と核投下ではない。
史実の重慶がロンドンが何年もの爆撃に耐え続け、ドイツはベルリンが焦土になるまで抵抗した。
戦略爆撃は国家の意志を砕けない。
国家を屈服させたければ城下の盟を迫るか、四面楚歌に追い込むかだ。
だから蹴り飛ばされた。
ロンドンで行われた予備折衝は一蹴された。
舐めんなアメ公、来るなら来い、相手になってやる。
顔を真っ赤にして抗議する米国代表に対して、枢軸代表団は告げる。
「それよりお国の心配をされたらどうですか?」
何を小癪な、焼き払われたいのかファシスト共!
核の貯蔵は十分とは言い難いがまだ十発以上ある。
ドイツを消滅させるには十分過ぎる。
幾ら防御を固めた所で、B36大量生産の暁にはそんなもの無駄無駄。
虚勢を張るな!
特にドイツ!
何か言ってやろうと米国代表が口を開こうとした時、米代表団の耳に凶報が飛びこむ。
ニューヨークで核攻撃とみられる爆発を確認。
呆然とした顔で枢軸代表団を見れば、どいつもこいつもニヤニヤしている。
ふざけるなと睨んだ処で、更に凶報は続く。
ボルチモア、アナポリス、ノーフォーク、ジャクソンビル、マイアミ、
核攻撃を受けております!
パイ投げ祭りは皆で投げ合うから楽しいのだ。
独り占めは良くないよ。
さあ始めようパイ投げ祭り、お代は国民の魂で結構です。
遂に開幕した、パイ投げ祭り本戦であるが、如何に日本と不愉快な仲間たちは、核兵器を合衆国本土に運んだのであろうか?
戦艦爆弾?
違う。あれだけ大きいとどうしても日本本土で作る必要がある。
回航にも一苦労だし、さすがにアメリカは警戒している。
積み上げた通常兵器で撃破されるのが落ちだ。
それでは時間が掛かるし核兵器が勿体ない。
戦艦爆弾は窮余の策と言う奴なのだ。
では何か?
飛行機でもない。
悲しいかな日独合作の核兵器は重くてデカい。
此処でも米国には一日の長がある。
ですので、彼らは発想を変えました。モット大きくしましょう。
大は小を兼ねると申します。
それにアメリカさんはデカいのが好きなそうですから、贈り物は大きい方が喜ばれますね。
そうして生まれた彼女、ガンバレル型の憎い奴。
全長6メートル、直径1.5メートル。重量10トンのアトミックボディの持ち主だ。
シンデレラには馬車が必要だね!
手ごろな馬車は、、、ありました。
秘匿性があり、とっても足が長いカボチャの馬車。
馬車の名前は特型潜水艦。
早くしなきゃお城の舞踏会の遅れちゃうわ!
シンデレラたちはお城を目指して向かいます。
あっあんな所にお邪魔虫、どうしようシンデレラV?
私に任せてシンデレラQ!えーい。ドッカーン!
「良ーく見ろよ、何時Uボートが来るか、分からんからな」
戦時急増された駆逐艦フレッチャー級ハドフォードは、バミューダ諸島周辺をボーグ級空母に率いられ、僚艦たち共に警戒に当たっている。
つい先日も、蛮勇を振るったUボートが本土近海に出現し、輸送船を攻撃すると言う事件があったばかりだ。
枢軸海軍の攻勢は、一時は収まったかに見えたが、クソッタレジャップのせいで息を吹き返し、アフリカ航路を脅かしている。
なんでフィンランドやらルーマニアやらの海軍と戦わなければいけないのだ。
それもこれもジャップのせいだ。
船員たちは終わりの見えない戦争にため息をついている。
もうどうでも言いからベルリンに核を落とせば良いのに。
「あれだけあるんだから、こっちにも飛行機を回してくれれば良いんだ」
ブツブツ文句を言うのは新人の若い船員、まだ十代の彼は戦争が始まったと同時に志願した、愛国心溢れる若者。
合衆国は態々募兵しないでも志願者は向こうから来る。
今は国家の非常事態、相手はカリフォルニアを焦土にした悪魔、何時東海岸に戦艦爆弾が突っ込んでくるか分からない。
国土を守れ!
「そう、言うなよ若いの、アフリカじゃ幾ら爆撃があっても足らないんだ。もう少しの辛抱だ、時機にドイツも音を上げるさ」
年嵩の船員はそう諭す、我々も辛いが敵も辛いのだ。
そうでなければ困る。そこまでは口に出さないが。
「ですがねぇ、伍長殿、毎日海ばかり見て気が変に、、、、、」
そこまでだった。
船体を突き上げる衝撃、噴き上がる海水の本流、そして光。
第21警戒任務艦隊は消滅した。
犯人は勿論、自分をシンデレラと思い込む魔女の群れその一匹。
魔女は陣形の真ん中で懐に抱いた核を惜しげもなく破裂させたのだ。
ノーフォーク海軍基地は相次ぐ報告に混乱の最中にある。
東海岸を守る盾である警戒艦隊たちが次々と行方不明になっているのだ。
どれもこれも潜水艦と交戦中との報告を上げたあと音信普通。
急派したカタリナ飛行艇が見たのは波間に漂う残骸と転覆した艦船。
何かが来たのだ。途轍もない何かが。
戦艦爆弾か?
違う。 そんなもの来たら見逃すはずもない。
潜水艦?
艦隊を一気に始末出来る潜水艦が居たら海軍は今頃全滅している。
では矢張り核か、、。巨人機が枢軸、いや日本に居る事は分かっている。
恥もへったれもないジャップはB29をコピーしたのだ。もしやそれか?
チェスター・ニミッツ大西洋艦隊司令長官は、頭を抱えていた。
太平洋は失陥、西海岸は崩壊と失敗続き、偶々本土に帰ってハワイに戻れなくなった自分は、大西洋艦隊司令長官に任じられた。
誰も責任を取りたくないのだ。
相手は戦艦を使い潰して屁とも思わない。
幾ら政府が発破を掛けても海軍は負けを覚悟している。
誰も敗軍の将にはなりたくない。その司令長官なら猶更だ。
だが、ここで頭を抱えていてもどうにもならない。
情報だ情報が足りない。
「出せる飛行艇は全部だせ!艦もだ、集まって一網打尽にされるわけにはいかない!」
泥縄かもしれんが、これくらいしか指示がだせない。
いったい何が来たというのだ。
海図を睨みつけるていると部下が駆け込んできた。
「長官!急ぎ退避をしてください!敵の核攻撃です!」
「核攻撃だと!陸軍は何をしていた!敵機の侵入を許したのか!」
息を荒げた部下は続ける。
「分かりません。ですが水平線の向こうからキノコ雲が近づいてくるんです。ニューヨークには閃光が見える位置までキノコ雲が近づいてきているそうです。敵は核を落としながら、進んできているとしか考えられません。ここは危険です。急ぎ退避を!」
海上に核を落としながら進んでくる?
何だそれは?何が起きてる?
今何をすれば良い?
しっかりしろニミッツ!お前は大西洋艦隊司令長官だぞ。
「分かった。皆も退避だ、急ぎシェルターに避難する。総員退避!」
修羅場に変わった指令室を後に、外に出たニミッツが見たものは。
閃光とエリザべス川下流に立ち上るキノコ雲、そして猛烈な爆風だった。
たまらず吹き飛ばされた彼は部下の一人に受け止められる。
そんな馬鹿なこんな事あって良いはずがない。
ここはノーフォークだぞ?米海軍の中心の筈だ?
それが何故?
彼が最後に見た光景、それは眩き閃光。
体を焼き尽くす、熱線の熱さを感じる間もなく。
彼の生涯は終わった。
セミパラチンスク核実験場に置いて史上二番目の核保有国が誕生した。
皆クリーム塗れになる時間だよ。
さて皆さん、今までご覧になっていて、アメリカ合衆国だけが枢軸を向こうに回して獅子奮迅の戦いをしているとお思いになってはいないだろうか。
米国側に味方している国もちゃーんといます。
ただ。どの国もいささか小振りなもので目立たないだけの話だ。
旧連合国勢力は、裏切者の名を受けて我が道を行く大英帝国連邦を除き、大正義アメリカ合衆国の味方だ。
英国を除いたら出し殻ばかり?
何を仰るウサギさん!ブラジルだっている、メキシコだっている。
南米の殆どは裏ではどう思っていても口先だけは味方だ!
兵だってイヤイヤ出してる。オランダだって頑張っているんだぞ。
彼らだって本国機能をインドネシアに移して大変なんだよ。
チョット反乱分子を始末するくらいなんだ!
そんな愉快な仲間たちの中でやる気の溢れる連中もいる。
カエルとクリームブリュレが大好きな、その名はフランス亡命政府。
この世界では一番割をくった国だ。
本土は分割され、アジア植民地はペタン元帥に乗っ取られ、アフリカに置いて雌伏している彼らはそれでも諦めてはいない。
ヨーロッパから追い出された米国が、枢軸との激闘を演じてまでアフリカを維持しているのは彼らの為だ。
さあ反撃の時間だ。
大和爆弾に風船爆弾とトラブル続きで予定は遅れたが米国とて、無駄に時間を過ごしていたわけではない。
頓智機風船が落ちてくる中、ローザリベッター達も男に混じって汗をかき、揃えたるは超重爆。
彼らはフランス植民地、モロッコに進出した。
あれ?核はどうした?
君達、コーラと同じで核兵器が無いと生きていけない体なんでしょ?
家主が五月蠅い?ふーん、持って来てないんだ。諦め良いね。
米国が狙ったのはドイツ以外の枢軸国。
ドイツが自国への核兵器投下を恐れる余り、日本から送られるジェット機を独占している為、未だレシプロ機が主力な国々だ。
九月に入り本格的な攻勢が始まる、B29が犠牲を顧みず、イタリア、ハンガリー、ルーマニアを強襲する。
「「何で俺たちを狙うんだ狙うならドイツを狙え!」」
「五月蠅い死ね!」
通常兵器とは言え、相手はB29なのだ、被害続出、今まで味わった事のない本格的な空襲に悲鳴を上げる各国。
ドイツもこれは無視できない。イヤイヤだがフッケバインを装備した部隊の派遣と機体供与を始める。
そこが米国の狙いだとは知らずに。
諦めが良い物か、相手はアメリカだよ。
彼らは待っていた。枢軸の目が大西洋から逸れるのを。
九月十六日、ケルンとボンが核攻撃を受ける。
同日、トリノにも核が投下。
被害地はヨーロッパに留まらない。
遥か極東、千島列島のウルップ島にも核は投下される。何処から飛んできた!
レーダー何やってた!
この攻撃を行ったのは米国の秘密兵器B36。
六発のエンジン、七百キロに届く高速、戦闘半径六千キロの化け物だ。
枢軸各国はB29への対応はして来た。
こいつも十分化け物だが、B36は超化け物。
彼女らは米国本土から奇襲を仕掛けてきたのだ。
米国恐ろしい国!
この成果を引っ提げ、米国は講和を要求。
要求がいれられない時は、米国は迷うことなく枢軸の主要な都市へのかぁく攻勢を継続するだろう!
だが、英国の考える通り、米国は甘く見ていた。
戦略爆撃で国家は負けを認めない。
史実の大日本帝国が降伏した主要原因は機雷封鎖とソ連参戦。
戦略爆撃と核投下ではない。
史実の重慶がロンドンが何年もの爆撃に耐え続け、ドイツはベルリンが焦土になるまで抵抗した。
戦略爆撃は国家の意志を砕けない。
国家を屈服させたければ城下の盟を迫るか、四面楚歌に追い込むかだ。
だから蹴り飛ばされた。
ロンドンで行われた予備折衝は一蹴された。
舐めんなアメ公、来るなら来い、相手になってやる。
顔を真っ赤にして抗議する米国代表に対して、枢軸代表団は告げる。
「それよりお国の心配をされたらどうですか?」
何を小癪な、焼き払われたいのかファシスト共!
核の貯蔵は十分とは言い難いがまだ十発以上ある。
ドイツを消滅させるには十分過ぎる。
幾ら防御を固めた所で、B36大量生産の暁にはそんなもの無駄無駄。
虚勢を張るな!
特にドイツ!
何か言ってやろうと米国代表が口を開こうとした時、米代表団の耳に凶報が飛びこむ。
ニューヨークで核攻撃とみられる爆発を確認。
呆然とした顔で枢軸代表団を見れば、どいつもこいつもニヤニヤしている。
ふざけるなと睨んだ処で、更に凶報は続く。
ボルチモア、アナポリス、ノーフォーク、ジャクソンビル、マイアミ、
核攻撃を受けております!
パイ投げ祭りは皆で投げ合うから楽しいのだ。
独り占めは良くないよ。
さあ始めようパイ投げ祭り、お代は国民の魂で結構です。
遂に開幕した、パイ投げ祭り本戦であるが、如何に日本と不愉快な仲間たちは、核兵器を合衆国本土に運んだのであろうか?
戦艦爆弾?
違う。あれだけ大きいとどうしても日本本土で作る必要がある。
回航にも一苦労だし、さすがにアメリカは警戒している。
積み上げた通常兵器で撃破されるのが落ちだ。
それでは時間が掛かるし核兵器が勿体ない。
戦艦爆弾は窮余の策と言う奴なのだ。
では何か?
飛行機でもない。
悲しいかな日独合作の核兵器は重くてデカい。
此処でも米国には一日の長がある。
ですので、彼らは発想を変えました。モット大きくしましょう。
大は小を兼ねると申します。
それにアメリカさんはデカいのが好きなそうですから、贈り物は大きい方が喜ばれますね。
そうして生まれた彼女、ガンバレル型の憎い奴。
全長6メートル、直径1.5メートル。重量10トンのアトミックボディの持ち主だ。
シンデレラには馬車が必要だね!
手ごろな馬車は、、、ありました。
秘匿性があり、とっても足が長いカボチャの馬車。
馬車の名前は特型潜水艦。
早くしなきゃお城の舞踏会の遅れちゃうわ!
シンデレラたちはお城を目指して向かいます。
あっあんな所にお邪魔虫、どうしようシンデレラV?
私に任せてシンデレラQ!えーい。ドッカーン!
「良ーく見ろよ、何時Uボートが来るか、分からんからな」
戦時急増された駆逐艦フレッチャー級ハドフォードは、バミューダ諸島周辺をボーグ級空母に率いられ、僚艦たち共に警戒に当たっている。
つい先日も、蛮勇を振るったUボートが本土近海に出現し、輸送船を攻撃すると言う事件があったばかりだ。
枢軸海軍の攻勢は、一時は収まったかに見えたが、クソッタレジャップのせいで息を吹き返し、アフリカ航路を脅かしている。
なんでフィンランドやらルーマニアやらの海軍と戦わなければいけないのだ。
それもこれもジャップのせいだ。
船員たちは終わりの見えない戦争にため息をついている。
もうどうでも言いからベルリンに核を落とせば良いのに。
「あれだけあるんだから、こっちにも飛行機を回してくれれば良いんだ」
ブツブツ文句を言うのは新人の若い船員、まだ十代の彼は戦争が始まったと同時に志願した、愛国心溢れる若者。
合衆国は態々募兵しないでも志願者は向こうから来る。
今は国家の非常事態、相手はカリフォルニアを焦土にした悪魔、何時東海岸に戦艦爆弾が突っ込んでくるか分からない。
国土を守れ!
「そう、言うなよ若いの、アフリカじゃ幾ら爆撃があっても足らないんだ。もう少しの辛抱だ、時機にドイツも音を上げるさ」
年嵩の船員はそう諭す、我々も辛いが敵も辛いのだ。
そうでなければ困る。そこまでは口に出さないが。
「ですがねぇ、伍長殿、毎日海ばかり見て気が変に、、、、、」
そこまでだった。
船体を突き上げる衝撃、噴き上がる海水の本流、そして光。
第21警戒任務艦隊は消滅した。
犯人は勿論、自分をシンデレラと思い込む魔女の群れその一匹。
魔女は陣形の真ん中で懐に抱いた核を惜しげもなく破裂させたのだ。
ノーフォーク海軍基地は相次ぐ報告に混乱の最中にある。
東海岸を守る盾である警戒艦隊たちが次々と行方不明になっているのだ。
どれもこれも潜水艦と交戦中との報告を上げたあと音信普通。
急派したカタリナ飛行艇が見たのは波間に漂う残骸と転覆した艦船。
何かが来たのだ。途轍もない何かが。
戦艦爆弾か?
違う。 そんなもの来たら見逃すはずもない。
潜水艦?
艦隊を一気に始末出来る潜水艦が居たら海軍は今頃全滅している。
では矢張り核か、、。巨人機が枢軸、いや日本に居る事は分かっている。
恥もへったれもないジャップはB29をコピーしたのだ。もしやそれか?
チェスター・ニミッツ大西洋艦隊司令長官は、頭を抱えていた。
太平洋は失陥、西海岸は崩壊と失敗続き、偶々本土に帰ってハワイに戻れなくなった自分は、大西洋艦隊司令長官に任じられた。
誰も責任を取りたくないのだ。
相手は戦艦を使い潰して屁とも思わない。
幾ら政府が発破を掛けても海軍は負けを覚悟している。
誰も敗軍の将にはなりたくない。その司令長官なら猶更だ。
だが、ここで頭を抱えていてもどうにもならない。
情報だ情報が足りない。
「出せる飛行艇は全部だせ!艦もだ、集まって一網打尽にされるわけにはいかない!」
泥縄かもしれんが、これくらいしか指示がだせない。
いったい何が来たというのだ。
海図を睨みつけるていると部下が駆け込んできた。
「長官!急ぎ退避をしてください!敵の核攻撃です!」
「核攻撃だと!陸軍は何をしていた!敵機の侵入を許したのか!」
息を荒げた部下は続ける。
「分かりません。ですが水平線の向こうからキノコ雲が近づいてくるんです。ニューヨークには閃光が見える位置までキノコ雲が近づいてきているそうです。敵は核を落としながら、進んできているとしか考えられません。ここは危険です。急ぎ退避を!」
海上に核を落としながら進んでくる?
何だそれは?何が起きてる?
今何をすれば良い?
しっかりしろニミッツ!お前は大西洋艦隊司令長官だぞ。
「分かった。皆も退避だ、急ぎシェルターに避難する。総員退避!」
修羅場に変わった指令室を後に、外に出たニミッツが見たものは。
閃光とエリザべス川下流に立ち上るキノコ雲、そして猛烈な爆風だった。
たまらず吹き飛ばされた彼は部下の一人に受け止められる。
そんな馬鹿なこんな事あって良いはずがない。
ここはノーフォークだぞ?米海軍の中心の筈だ?
それが何故?
彼が最後に見た光景、それは眩き閃光。
体を焼き尽くす、熱線の熱さを感じる間もなく。
彼の生涯は終わった。
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