ミミック大東亜戦争

ボンジャー

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第四十六話 アポカリプスだよ全員集合!

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死屍累々そう表現するしかあるまい。



 熱線に焼かれ、爆風に吹き飛ばされ、飛来するガラス片でめった刺しにされ、潰され、燻され、剥がれた皮膚を引きずり、瓦礫の中で蒸し焼きになり死んで行く。 



 腐乱した死体が街路に溢れ、腐汁は足元を濡らす。



 飛び交うハエの群れと、放射線が生き残りの尊厳を奪い取り、垂れ流されるゴミと糞尿は文明が過去へと追いやった友を連れてくる。



 飢えと疫病は静かに、焼け爛れた生存者たちに忍び寄る。



 死だ死が世界を支配している。アメリカ合衆国東海岸は四騎士の前に膝を付いた。



 





 だが、これで終わりではない。



 戦争は続いている。



 丘の上の家は燃えたが家主は生き残った。



 トルーマン大統領はホワイトハウススタッフの手により脱出し、重工業の中心地ピッツバーグに政府機能を移転。



 放射線障害の影響によりベットから動く事はできないが、鉄の意志で政務を執り行っている。



 動けない大統領の意志を代行するのは腹心たる女性大統領補佐官だ。



 東海岸の崩壊を受け、合衆国経済は崩壊。治安も公共インフラも加速度的に悪化しつつあった。



 そんな状況を抑え込んだのが彼女だ。



 比較的被害の少ない陸軍、州軍を動員し、東奔西走、被害者の救済と難民受け入れ態勢を作りあげ、曲りなりにも軍政による治安維持を実現する。



 現在合衆国は内陸部に閉じ込められつつある。



 東西沿岸は壊滅、復興の見通しは付かない。



 



 悪魔は我々をどうするつもりなのだ?



 抵抗は可能だろう。



 核もまだ生産可能だ。



 狂乱する国民は危ない所であったが軍が抑え込みに成功、南北戦争パート2の発生は今の所少ない。



 講和、講和は出来ないのか?もう良いだろう?報復には十分ではないか?



 東海岸の死傷者は分かっているだけで一千五百万を超える。



 集計すら困難な状況でこれだ。



 過酷な条件であろうと受け入れよう。



 太平洋は放棄して良い、カリブもだ。



 フランスへの支援は停止する。



 パナマが欲しいのか?アラスカか?持って行け。



 賠償金だって払おう。



 疲れた我々は疲れた。



 





 そうかい、そうなんだね、可哀そうに。



 所で対ソ戦でのソ連側の死者数はご存じかな?



 知らない?教えてあげよう。



 三千万だ。



 千五百万がどうした?我々に逆らったのだ、それっぽっちで済むとでも?

 

 足りないよ、まったく足りない。



 合衆国君、君なにか勘違いしている様だね?



 なんで我々に慈悲が有ると思えるんだい?



 君達、我々の事を散々悪魔だ何だと言って来て今更、慈悲を請うのかい?



 我々の答えは一つだ。



 死ね。



 バラバラに切り裂き、腸を引きずり出してやる。



 リバティよ、フリーダムよ、汝らの赤子は尽く岩に打ち付けられるものなり!



 





 一縷の望みを掛けた講和交渉は失敗した。



 再度蹴り飛ばされたのだ。



 今度はイタリア他の枢軸陣営国も激怒している。



 「「ドイツがやられるのは良いが、内らまで殺そうとするとは!」」



 大日本帝国も処置なしと匙を投げた。



 あれだけやって置いて御免なさいは通らない。



 太平洋は既に抑えている、正式に譲って貰わんでも返すつもりは元より無い。



 仲介者であるイギリスの目は明日の晩飯を見るそれ。



 どう料理しようか?どこが一番美味いかな?



 





 

 ここまでか、、、あいつ等は我々を殺し尽くすまで戦争を止める気はない。



 我々は道を間違えた。



 ならば、ならば。

 

 





 「アメリカ合衆国国民の皆さん、現在療養中の大統領に変わり大統領補佐官である、私が皆さんに大統領のメッセージをお伝えいたします。



 補佐官風情がとお思いでしょうが、今、合衆国に存在している議会関係者はその殆どが死亡しています。急ぎ大統領の言葉を皆さんにお届けする為の緊急の措置ですので、お許しください。メッセージをお伝えします。」

 

 

 「枢軸国は十月四日のあの日、合衆国東海岸に悪魔の如き核攻撃を実施しました。死傷者の数は未だ正確には分かっていません。



 この暴挙に対し、我々は敢然と立ち向かうべきなのでしょう。しかし、これ以上の戦争は無益にしかなりません。



 私ハリー・S・トルーマンは遺憾ながら降伏の道を選びました。申し訳ありません、、、、ですが、枢軸国の答えは無慈悲な物でした。



 彼らは我々の平和への願いを踏みつぶし、自分たちへの完全な隷属と合衆国の消滅を要求したのです。

 

 国民の皆さん、大統領としての皆さんの期待に応えられなかった事をお許しください。



 しかし、我々は隷属への道を拒否します。



 自由と民主主義は永遠に不滅です。



 我々は専制と恐怖による支配を許してはいけない。



 それが偉大なる祖先から受け継いだ明白なる天命なのです。

 

 私は合衆国大統領、そして国軍の最高司令官として皆様に過酷な命令を下します。



 我々は絶対に降伏などしない!国民よ銃を取れ!たとえ最後の一人になろうとも自由の火を消させはしない!



 もう一度言います。国民よ銃を取り立ち上がれ!合衆国軍と共に最後まで戦うのだ!」



 「以上が大統領からのメッセージになります。大統領は現在、放射線障害の苦痛の中、必死に政務を執り行っております。私も大統領補佐官として皆様と共に最後まで戦う覚悟です。合衆国国民の皆さん、どうか立ち上がって下さい。」



 



 悲壮なる大統領のメッセージがラジオから流れた後、全ての合衆国国民は気づかされた。



 自分たちは存亡の危機の中にある。



 銃を取る者、募兵所に駆け込む者、己の職務を果たす為立ち上がる者、老いも若きも男も女も少年も少女も自分の使命を果たすべく行動する。



 アメリカ合衆国は最後の聖戦の時を迎えていた。

 

 



 



 アメリカ合衆国が悲壮極まりない覚悟を決めている頃、大日本帝国の主導する秘密作戦に従事する為、枢軸、日本連合軍は作戦発起地点へと着々と終結していた。



 彼らは日本本土で必要装備を受領すると習熟訓練の為に一時駐留、その足で輸送船に乗り込み北の果てへと向かって行く。



 そんな彼らを見てみよう。



 





 「やーきゅうーすーるなーら、こーゆーぐあいにーしやしゃんせー」



 

  お見苦しい映像が流れました、、、、次行って見よう。



 

  「一番!エーリヒ・ハルトマン!エリカ歌います!Auf der Heide blüht ein kleines Blümelein♪」



 「おっ!良いぞ!ドイツさん!俺も歌う!熱いなしかし。坂本さん、あんたも脱げ!」



 「武藤!止めろコラ!飲み過ぎだ!誰か止めろ!」



 

 ハイ次。次いけ次!



 「人工灯とは思えないこの光、波打つプールサイドのひと時、シチリア島を思い出すなぁ。おねいさん!お代わり、これ美味しいね、なんて名前?キューバリブレ?コーラとラム酒を混ぜてある?なんでも良いやお代わり!うーんトロピカル!」



 「ユーティライネン曹長!金貸してくれ。お願いだ!」



 「カタヤイネン中尉!あなたは運が無いのですから、カジノは止めた方が良いと言われているのに。また行ったんですか?」



 「今度は勝てる!今度は勝てるんだ!あっメイドさん、俺にもマティーニ持って来て!ベースはウォッカで!」



 駄目だこりゃ。



 ぶっ弛んだ野郎しか居ない。



 兎も角、東京発の超巨大豪華客船はオールスターズを運んで海を行く。



 目指すはアラスカ準州。



 彼らが相手にするのは覚悟を決めた聖戦士たち。



 ユラリ揺られて北の果て、兵士たちは束の間休息を楽しんでいる。



 決戦の時は近い。

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