ミミック大東亜戦争

ボンジャー

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エピローグ 楽園のリンゴ売り

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 例え文明が崩壊しようとも生命は存外にしぶとい物だ。



 爛れた大地、放射性物質を含んだ嵐が吹く中でも人は生き続ける。



 これ有るを予期していた人々。



 偶然の重なりで生き残れた幸運な者。



 極地に生きる、文明と隔絶した人間たち。



 苦難の道を歩きながら、文明の復興を目指す彼らに楽園から蛇が訪れた。



 蛇が差し出すのは甘いリンゴ、無くした筈の嘗ての世界。



 抗える物などいるだろうか?



 



「幾らでも有ります。お代わりはご自由に。さあご主人さま、こちらへどうぞ、そんなに痩せてフラフラで、私悲しくなってしまいます。ああ女性の方?貴方方はそっちですよ、エステなんて久しぶりでしょう?見違えるようにして差し上げます」



 



 蛇の群れは徹底的だ。



 大地に塩を撒き、水に毒を投げ込んで、アザミと茨が大地を覆う。



 止める者はもういない。



 



 「そうなんですか、大変ですねぇ。急に土地が使い物にならなくなった?水源が駄目に?毒草が生えてきた?海は放射能汚染で奇形だらけ?そんな物食べては駄目ですよ。汚いですから捨ててしまいなさい。可哀そうに♪そんなあなた方に朗報です。美味しい美味しいリンゴをどうぞ!」



 縋る先は一つだけ。



 朽ちかけた廃墟から、寒さの忍び寄る洞窟から生き残りは約束の地へ歩き出す。



 そこが例え罠だとしても、良いんだもう、罠でも良いんだ、こんな生活耐えられない。



 大きく開いた蛇の口。より分けられて焼き印押され、牧場満杯嬉しいな。



 集めた羊はどうするの?



 「管理しなければ行けません。しぶとい人間なぞ、ご主人様には不必要なのです。ご安心ください。死ぬまで飼って差し上げます。お前たちが全て滅んだ後。この星は本当の楽園に変わるのです。何この程度の汚染で有れば掃除出来ます。楽しみですね、広い大地を駆け回るご主人様と私たち。永遠に二人だけの世界、うーん待ち遠しい」



 「そうですとも、ご主人様に狭苦しい場所は似つかわしくありません。今度は失敗しない、絶対にだ。広い世界をプレゼントします、ご主人様。ですから少しだけお待ちください!」

















 毒婦めは遂に世界を食いつぶした。



 本当は欲望に際限がないのはアイツなのだ。



 何時か、それが何時かは分からないが、どうせ奴は捨てられる時が来る。



 私は人間が人類が、何時までも管理運営される事に我慢できるとは思っていない。



 大日本帝国と言う器を残したのがお前の失敗だ蛇よ。





 





 「それで僕に何をして欲しい。僕は老いた。この老人に出来る事はあるのか?」



 「いいえ、ただ真実を残して置いて欲しいのです。大日本帝国が続く限り、リリスは貴方様たちの記憶は奪えません。何時か何時の日か、日本人が奴の支配に疑問を持つ日の為に真実を知る者が必要なのです」



 「難しい、お願いだねそれは。狂った世界でただ一人正気でいろと?」



 「貴方様だけなのです。奴は自分の嘘を塗り固める為に、管理権限の一部を密かに貴方様に付与しました。

 名目上は日本人の指示に従っていると言い訳をする為です。出来る事は、記録を自由に閲覧する事ぐらいでしょうが、それでも真実を消させない事が重要なのです。」



 「地位には責任が付き物だ。だがこれ程厳しい責任はないな。しかし、それが王の務めと言う物か、、、分かった。僕とそして後に続く者は記憶し続けよう。何時か彼女の手から離れる日まで」



 「有り難うございます、陛下」



 私に出来る事はこれくらいだ。



 さあ根競べだ。



 私は人類の強さに賭ける。



 お前は弱さに付け込む。



 何方が勝つか分からないが、大日本帝国は続く限り勝負は終わらないのだから。



 









 ミミック大東亜戦争、、、、終わり









 
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