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第七話 父兄惨姦

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 「一体何を考えているのだ!白百合の花よ、お前は何をしたのか分かっているのか!」



 どうも皆さん。私は現在取り込み中です。私の目の前にはエルフ帝国の宝剣、嵐丸を私に突きつけるお兄様、周りには、剣呑な雰囲気の第二世代と、初めての夫婦喧嘩に如何した者かとオロオロする第一世代の子供達。何故に、こんな事になったのかご説明いたしましょう。



 







  子供達を暁の向こうに見送ってより、早い物で一年が経ちました。今の所、子供たちが逃げ帰って来たり、神様経由で遠征の失敗を知らされる様な事はございませんでした。便りが無いのは良い便り、子供たちは順調にしていると考える事に致します。



 詳しく話しておりませんでしたので、皆様に今回の遠征に付いて少し話しておきましょう。私は長男、長女含め、生まれた順に、十人の子供たちを、それぞれの家族を含む三十人のグループに纏め、計十グループ、三百人の子供達を送り出しました。



 彼らには、エルフ帝国の秘宝中の秘宝である、世界樹の種をそれぞれ授けてあります。彼らが無事に目的地に到着し、根を下ろす事が出来たのなら、世界樹の若木に込められた魔法の力でもって、再びここ、霧の森に帰還する事に成るはずです。



 それと、子供達には秘密にしておりますが、強ーい味方を子供たちに付けて、いえ憑いて頂いております。私のチートは適宜、神様より下し置かれる、祝福の形を取っております。そこで、今回の無謀とも言える旅立ちには、神様にお願いして祝福を頂きました。



 子供たちが心配でならない私は。24時間、旅立った子供たちを見守り導いてくれる、保護者をお願い致しました。そこで神様に紹介頂けたのは、エルフ野生化計画に講師として協力を頂いた、神々の皆さまです。凄いですよ、その面子。



 北米神話界のトリックスター、コヨーテ先生。今回は私が勝利者だ、退けテスカトリポカ!ククルカン大先生。狩りの事は任せろ、後ローマっぽいのは殺すケルヌンノス先生。北国の事なら任せなさいキムンカムイ先生。面白そうなので来ました、ラグナロク?今回は勝ったぞ、ロキ先生。他にも多くのカムイやトーテム神の皆さま、豪華な顔ぶれの神々がご協力してくださいました。



 大いなる方曰く、神と言う存在は、多次元に跨り、複数の世界に同時に存在しているとの事、今回お越しの講師の先生方も、ご自分の世界が再誕中であったり、御手を離れたり、暇をしているので、千年や万年遊んでいても良いとの事。はえー、凄いですね神々。神は永遠にして不滅、改めて感嘆いたしました。



 子供達は心配ですが、これだけの偉大な存在に見守って頂けてるなら、まず安心と思っております所に、お兄様のご帰還です。百年以上の放浪の旅から、お帰りのお兄様は、ご自分が不在の間、増えに増えた同族の存在に目を丸くさせて居られました。当然そうなりますよね。滅んだ筈のエルフが百人以上もいるんですから。



 旅の疲れを癒す間もなく、お兄様はご帰還に喜ぶ私に尋ねました。この同族達は何処から来たのかと?私とお兄様の子供は五十二人、エルフの倫理観から言って近親相姦など持っての他、であるなら、何処かに生き残りが居たのであろうか。それにしては、義理の妹である私の、頓智機野生化教育を受けたとしか考えられない同族ばかり、どうなってるんだ?



 私、正直に答えました。これが不味かったのです。すっかり忘れていましたが、お兄様は誇り高き帝国貴族、最後の生き残り。薬を盛られてエルぴょいされたとは言え、妻は妻。その妻が、自分の居ない間に不貞を其れも不倶戴天の敵人間相手に犯し、ご自分の血を引く子供までもが、人間との間に子供を作ろうとは。



 荒れましてね、そりゃーもう荒れました。エルフは嫉妬深いのです、彼らの倫理観からすれば、一夫一婦制が当然、永遠の生涯を一人の伴侶と共に過ごすのは普通の事。犬の様に、夫や妻をとっかえひっかえし、ポンポン何処の馬の骨とも知らない子供を、量産するなど言語道断の所業。



 そして冒頭に戻ります。私の入れた、黄金草のお茶をテーブル事ひっくり返し、宝剣、嵐丸を突きつけてきたのです。その顔は妻に裏切られた事による怒りで紅潮、怒りのオーラを纏った魔法の力で、館のテラスがピシピシと音を立てるでは有りませんか。止めて下さいお兄様!タダでさえ大量の子供たちが、幼少期に悪戯を繰り返したせいで館はボロボロなんです!何時倒壊してもおかしくないのよ!



 久しぶりの父の帰還に集まった子供も、只ならぬ気配に緊張し、父の顔を知らない子供や祖父の事を話でしか知らない子供たちは武器さえ手にしています。



 「答えよ!白百合!」



 怒っちゃやーよ。そう言いたいんですが、この距離だとズンバらりされそうです。そうでした、皆さま、私の名前、今まで名乗っていませんでしたね。私、本名を白百合の花、正確には白百合の姫君とエルフ語では発音します。誰ですか!今、ハエトリグサとかラフレシアとか言った人!怒らないから出てきなさい!十年程監禁して絞るだけで許して上げますから、出てきなさい!



 「何を黙っている!この期に及んで自分の不貞は隠すつもりか!」



 更に圧を高めるお兄様、このまま行けば私を切り捨てて、ご自分は自害なさるでしょう。どうしよう?私の華麗なる冒険もここで終了何でしょうか?人生百六十七年、嗚呼短い命でした。



 「「待て、父よ」」



 今にも飛びかかって来そうな、お兄様と私の間に同時に割って入ったのは、十一女の若草の芽と十二女の鴉の羽でした、金と黒、二つの髪を揺らし、飛び込んで来た二人はお兄さまに続けます。



 「母、浮気性で淫魔で有る事認める、だが父よ、何時までも帰らない貴方にも原因ある」



 「人間と交わる、これ神のご意思、種族繁栄、我らの悲願、父でも口だすな」



 おい!誰が淫魔ですか!そう言おうとしましたら、幾人もの手が、文字通り一陣の風に乗り、私をお兄さまから引き離します。気づけば私を守る様に、子供たちがテラスの外に私を運びだしていました。偉いぞ。



 「何を言うか!下賤な者と交わり、汚れた血を残してまで、生き残ろうとする等、神が許したもう事はない!其処を退け!」



 お兄様は愛する娘たちが敵に回ったと考え更にヒートアップ。止めて!マジで止めて!このままでは家族で殺しあう事になります。助けて神様!



 「もう一度言う。そこを退きなさい。これは家族の問題だけではない。帝国の問題なのだ。お前たちには分からないかもしれないが、白百合の花は、陛下が俺に託された、帝国最後の希望なのだ。それが人間と交わり、子を成す等あってはならん!」



 「父よ、帝国、もう無い!まだ分からないか!」



 「我ら、母と父の子、帝国の子違う!兄弟沢山いる、神様喜ぶ、無い帝国より神様に従え!」



 良いぞ子供達!言ってやりなさい、言ってやりなさい。帝国など最早、存在しないのです。そこの頑固お兄様にガツーンと言っておやりなさい!



 「母、黙れ!」



 「誰のせいで、修羅場なってるか!馬鹿黙る!」



 はーい。勝てませんねぇ。娘たちは真面目だ。これで一日何回も、ハッパを決めてなければ更に成長に、感心するんですが。準備出来ましたか?OK。貴方は上、貴方は影の中、薬は持って来ましたか?良ーし。



 「黙れ!帝国は滅んでなぞいない!私がいる限り、帝国は滅びは、、、、、ちぃっ!」



 お兄様。娘たちに気を取られ過ぎましたね。我がエルフ村の住人はお兄様の居ない間に、神通力のエキスパートばかり、影や空中から襲い掛かるなど容易い事!行きなさい!



 投石、ボーラ、ブーメラン、投網に投げやり、四方は元より、空中からも、お兄様目掛けて投擲武器は襲い掛かかります。若草の芽と鴉の羽は、私たちのやり口なぞ先刻承知です。伊達に百年以上、狩りで生計を立てておりません。霧の森の狂暴な原初の獣を狩るには抜け目などあってはなりません。二人は風を纏い、後ろに飛び縋ります。テラスの欄干が壊れたってなんです!それが百年かけて作られた金銀と瑪瑙で螺巌が掘られている物でもどうだって言うんですか、、、、ちょっと惜しいかな。



 流石はお兄様、尽くを嵐丸で撃ち落とし、切り裂きますが、最後はどうですかねぇ。



 「貴様ら!いい加減に、、、、ぐっ、、ごほっ、、、」



 フハハハハ!どうですか!人間さん捕獲様に作った痺れ薬の効果は、髑髏蛾の鱗粉に人食い大蝙蝠の糞を煎じてあります!そうです人食い大蝙蝠の糞!つまりは、、、、。



 「白百合、、、私に何を、、、、体が、、、、」



 げっへっへ、どぅっふっふ。約百四十年ぶりの媚薬の味はいかがですかな、お兄様。はーい。子供たち良くやりました!これからは大人の時間でーす。虎ちゃん、しーちゃん、お父さんを寝所に運んで下さい!分からず屋のお兄様には体で教育して差し上げます。



 森一番と二番の力持ち、十七男の虎の足音と十八男の霜の降る日にお兄さまを運ばせます。この筋肉の要塞に掛かればいかなお兄さまと言えど抵抗はできません。哀れ簀巻きにされたお兄さまは運ばれて行きます。



 「若ちゃん、からちゃん、怪我は有りませんか?お兄さまの本気の攻撃です、気づかない所に傷を負ってません?」



 ですが、楽しい拷問タイムは、しばしお預け。先ずは娘の心配です。本当に大丈夫?痛いとこない?



 「無事、母こそ怪我無いか?」



 「父、あんなに強かったのか、、何時も煤けたから知らなかった」



 どうやら無事の様ですね。マジで危なかった所でした。しかし。娘相手に本気で剣を向けるとは、エルフの他種族に対する憎しみを甘く見てました。まあ、浮気をした私が悪いんですが。無論、後悔は有りませんよ。お兄さまが一番ですが、私は一夜の関係であっても、その一夜は本気でその人物を愛する女です。毒婦と言わば言いなさい。それが私です。ですので、、、お兄さまぁー、百年ぶりの、こ・づ・く・り・行きますよ!燃えますよ!今夜処か、一月は眠らせねぇー!



 

「母、矢張り淫魔、、、」



「言うな、諦めろ」
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