産むし 増えるし 地に満ちる 私がママになるんだよ!!

ボンジャー

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第十三話 ビストロエルフ

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 お待たせしましたご、注文の炙り肉でございます。香ばしくて、それでいてしっとりとした食感。帝都の食材の中でも、上位に入ると思っております。はい、あーん。



 美味しいでしょう?下水迷宮特産のお化けネズミのお肉。うわぁ!汚いですね、吐き出さないで下さい。大丈夫ですよ、食べて死んだ人はいません。奇跡の力をタップリ受けた動物は、そんじょそこいらの家畜の肉では敵わない程、栄養豊富で清潔なんです。ネズミ肉程度で驚いてはいけませんよ。貴方がお代わりされた当店名物のそのお酒、下水迷宮に自生する小鬼キノコで出来ています。



 本来であれば食中毒確実な物ばかりですが。世界樹の力は偉大です。そこに有るだけで、既存世界の法則を書き換え、豊穣と奇跡の満ちる原初へと回帰させる力が有ります。お食事に当たり心配はございません。さあ食べよう世界樹印の下水食品!



 あらどうしたんですか?食欲が無くなった?繊細な方ですねぇ。お酒はばかりでは体に毒ですよ。そんな事よりも話の続きですか?まあ、良いでしょう。



 



 私への襲撃を華麗に撃退し、それなりな規模の犯罪組織を、謎の手法で壊滅させた私は、一躍までは行きませんが、それなりに波止場地区で知られた名前に成りました。



 知られた名と言っても本名は名乗っておりませんよ。流石にエルフ名等名を乗ったら、兵士が駆けつけてきますからね。私、此処では単にサメの巣亭の姐さんで通っております。略称はサメ姉さん、もしくはサメ女。



 悪意が見えますが自分の所業を顧みるに妥当な所でしょう。面と向かってサメ姉さんと言った輩は、三日はベットから起きれなくしてやりました。そこは姐さんにしろ、馬鹿め。





 私に歯向い、第二の自分にジョブチェンジした輩共、彼らは期待したほど、大きな組織では有りませんでした。聞きだしました構成員のリストに基づき、生き残りの始末を付けると百人規模の中堅どころの組織だったようです。根城にしていた倉庫も、管理人に賄賂を渡して根城にしていただけだそうで、はぁ、お姉さん、がっかりですよ。



 それでも強請りのネタにはなりましたがね。賄賂を受け取っていた例の商家の手代を脅して、合法的に薬の売買に乗り出せたのですから。兎も角、組織拡大に必要な人と物は揃いました、後は金です。



 お金、これ程、今の私やエルフに必要で無い物も有りません。エルフ帝国ですらそうだったのです。彼らは、葉銀と言う通貨こそ発行してはいましたが、それも人間さんや髭達磨に比べれば驚くほど少ない発行量だったと言われております。



 不老不死の身の上には、態々買い付ける物は、少ないのです。幾らでも有る時間を掛けて、概ね全ての分野のそれなりの職人に成れるのですから。上から下まで自給自足可能なのがエルフなのです。農夫、職工、料理人に楽師、どれも百年掛けて学べば良いだけですから。



 エルフ帝国が重視したのは、「どれだけ時間を掛けて精巧に美しく作ったか」「どの様な地位にある者が作ったか」であり、物の価値はそれで決まりました。



 一般的な商品の交換は、物々交換か、自身の時間を与える事で行われていました。葉銀を使うのは余程大きな買い物、屋敷を建てるとか、魔法の付与された物品の購入位で、婚礼や、子供の出産などへの贈答品としての役目が主だったそうです。



 そも、葉銀の価値自体、一枚ずつ違う、その造形の美しさで計られ、銀の含有量ではない所が、嫌らしい程優美なエルフ帝国の文化を表しています。けっ。

 

 今、私がおります、帝都、元大樹の館も、前に経済の中心地とは申しましたが、正確には物流の中心と言った方が正しいでしょう。



 そんな共産主義なの?王族が居て階級社会なのになんで?なエルフ帝国に輪を掛け、お金に縁遠いのが、我ら新エルフです。野生の世界で生きている森の子供たち等は、貨幣経済に付いて聞かせたら、お前ら頭がおかしいと答えるでしょう。

 彼らに取って貴金属は道具に加工して使う物でしかないのです。 金ゴールド等柔らかくて、武器に使えないと捨てるのが関の山でしょう。いえ、呪術の素材としては利用価値が有りましたね確か。



 話が飛び過ぎましたが、お金どうやって稼ぎましょうか?組織を拡大し、これより育っていく、都市エルフの隠れ蓑にするには潤沢な資金が必要です。エルフ印の薬の売り上げは、薄利多売している現状、それ程振るいません、、、、、酒場からみかじめ料?ダメ。まだ新興組織に過ぎない私達には、他組織との抗争等もっての外、一々私が出張るのも面倒。



 他組織とかち合わず、我らだけにアドバンテージが有り、継続的に儲けられる物、、、、、ああ、ありますねぇ、居ますが正しいか。そうですよ、直接雇用しましょう。足りない分はあの子たちに補って貰うとして、売りが必要ですね、清潔で安全なんて同でしょう?我ながら良い思いつきです!薬自体も独占していますし、行けますよこれ。





 



 長い航海から帰り、久しぶりに訪れた馴染みの酒場は驚くほど変わっていた。見た事もない別嬪揃いの女給に、満員の客、うらぶれた飲み屋街の端にある店とは思えない繁盛ぶりだ。



 「おい、どうしたんだこれ?おい親父!エライ騒ぎだが、何があったんだ?」



 とりあえず席に着いた俺は忙しく働く馴染みの店主に声をかけた。奴さん、ケチな上に、欲張りで、店でどんな事が有っても金でさえ貰えれば、それで良い主義の。俺と同じく屑な野郎だったが、それがどうだ。

 

 身なりは変わって無いが清潔その物な恰好、だいぶ太ったんじゃないか?眼ばかりギョロギョロとした骸骨みたいな野郎だった筈が、健康そのものと言った顔に体、野郎は俺に気づくと嫌そうに返した。



 「なんだテメェか、此処はテメェらみたいのがが来る店じゃねぇぞ、此処はそれに俺はもう、この店の店長じゃあねぇ。新しい店長は別にいるのさ。さあ出てけ!しっしっ!」



 犬を追う様に言いやがる。殴ってやろうと思ったが、俺が来る店じゃあ無いだと!面白い、ボッタくり上等で水増しの酒しか、出さない様な店がどう変わった見てやろうじゃねぇか。



 「舐めんじゃねぇ!金なら有らぁな!俺は客だぞ!サッサと酒を出しやがれ!」



 なけなしの銀貨を二枚叩きつけてやると、この野郎、お客様でしたかメニューをどうぞと言いやがった。ふざけんな!こっちが字を読めないのを知っていやがる癖に!殺す!



 「如何しました?嫌ですねぇ、喧嘩なんかしちゃぁ。貴方たはあっちに行ってなさい。この方は私がお相手致します」



 「姐さん、いやぁ、すいません。この破落戸があんまり、ブーブーを言う物でして」



 「良いんですよ。さあお客様がお待ちです。あら旦那様、怖い顔しちゃやーよ」



 なんだ、なんだ、業突く張り親父を殺してやろうと、短剣を抜きかけたら、随分と良い女が止めに出しゃばって来やがった。驚いたね。聞くと、こいつが新しいサメの巣の店主だと言うじゃあねえか。



 



 「ハーイ、お代わり入ります。どうぞ旦那様」

 

 「おう、しかし、美味い酒だな、こんな酒初めて飲む。ワインでも出ないし、エールでもねぇ、何だこれ。おい女将、どんな魔法を使ってこの酒出したんだ?教えてくれよ」



 「ダーメ、それを聞いたらお酒が不味くなりますよ。ハイおつまみをどうぞ、あーんして下さいまし」



 それから随分と飲んだし、食ったね。値段は高いが一度払えば酒は飲み放題で、肉も野菜も、、、何だこれ、食った事ない肉だな、何だこの野菜、丸ッこくてプチプチして、煮て有るのも焼いて有るのも、見た事も聞いたこともない物だが食い放題だ。女将が言うには西、龍骨山脈の向こうの食い物らしい、ドワーフの土地には人間は行けない筈だが、更に聞けば密輸品だそうだ。



 ははーん、あの業突く張りだから俺らが入れる店じゃねぇとか言いやったんだな、道理で高いはずだよ。見れば他の客もそれなりに身なりが良い。あいつ、、、ここいらの顔役だったな。あそこに居るのは確か、表通りの店の手代に番頭、確かにそうだ、俺の質草を流しやがった店の奴だから覚えてるぞ。



 どいつもこいつも女に酌をされて鼻の下を伸ばしてやがる。もしかすると此処はそう言う店も兼ねてるのか?それにしては、女共が痩せてねぇし、顔色も、、良い女ばかりだ。確かに俺が来れる店じゃなくなってるな。



 「どうしました?酔われましたか?それはいけませんねぇ。どうですか、此処でご休憩になさりませんか?」



 「ああ?そりゃ一体、、、良いのかよ、金はもうねぇぞ」



 「お代は結構、初めてのお客様へのサービスでございますよ」



 そりゃあ良い、例え身ぐるみ剝がされても大した損もしない。久しぶりの女だ。立ちんぼを買う金も省ける。よーし、頼もうじゃねぇか。



 「此方の方、ご休憩でーす!片づけてください」



 女将に手を取られ、二回に上がる俺様。気づけばよかったんだよ、この時、周りの奴らの俺を見る目を、あれは屠殺される豚を見る目だった。



 

 

 朝になって俺は店を出た、、、逃げ出したが正しい。酷い一夜だったよあれは。俺も長い事、水夫だなんてヤクザな商売をしてるが、死にかけたのは、腸海で角鯨に襲われて以来だ、、、、でもなぁ、よく考えたら天国か?  



 「金貯めて、また来ようかなぁ」



 そうしよう。そして、今度は必ず女将以外の女を指名しよう。朝がいやに黄色い。







 本日のお勧め



 飲み物 小鬼キノコ酒・・・小鬼キノコ、通称、狂い月茸を、何でも良いので酸っぱくなった酒に、漬けて一晩置いた物。強烈な多幸感と酩酊感を楽しめる一品、飲みすぎ厳禁。



 食べ物 お化けネズミの炙り焼き・・・大きい物で野生の猪程になる、お化けネズミを弱火で良く炙った物、柔らかく油も乗り大変に美味しい。尻尾は通好みのやや下水風味。



     大斑苔の煮物・・・下水に繁茂する水生の苔に生える実の様な部分の煮物。採集してから入り江の海水に一晩漬けて臭みを抜く事。共生している糞食いエビも、揚げると大変美味しい。注意、エビは必ず三日は入り江の清水に晒す事。



    スペシャルメニュー



   迷宮白ワニの尻尾ステーキ・・・下水迷宮の食物連鎖の最上位、白ワニの尻尾を贅沢に使った一品。時価。何でも食べるので身の匂いは強いが、なぜか尾の身はフワフワとした食感と甘みを感じ美味い。女将お勧め。注意、可食部は尻尾のみ、胃の中に人骨が有る場合が有るため、精神衛生を考え胴体は捨てる事。





 どぶ大蛸のマリネ・・・迷宮白ワニと食物連鎖の上位を争う、蛸のマリネ。女将が一時間に渡る死闘を繰り広げて捕まえまえた、大人三人は有る毒ダコの足を使っている。揚げても茹でても美味しい。注意、墨は腐食性の為、足のみ切り料理する事。
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