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第二十四話 私の、私の、私の話を聞いてぇ~

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 事態も遂にクライマックスに向かいつつあるのですが。此処で少し、言い訳を聞いて下さいまし。ねっ!お願い。



 皆さま、私を行きあたりバッタリの考えなしとお思いでは?私だって色々考えてはいるのですよ。今回の計画だってそうです。



 現在帝都でビーストウォーしてる集団を鎮圧に出てるのは、衛兵隊だけでしょう?此処まで事態が悪化したなら、帝都防衛に本式の軍を差し向けても良いはずなのに、帝都防衛の任にある近衛連隊は沈黙しています。此処注目。



 近衛連隊。彼らは陸側を守るエルフ帝国時代の、三重防壁の防衛を担っております。海軍と合わせて、国庫への重い負担となっているのですが、維持しない訳にはいかない、最精鋭の軍団です。



 本来でしたら第一から第五までいる彼らですが、三個連隊約三千名にまで落ち込んでいます。それでも、彼らはこの張りぼて帝国に残された、人類の帝国、最後の栄光と言えます。御多分に漏れず世襲化、既得権益化は著しいのですが、エルフ帝国との戦いの戦訓を後世に伝え続け、髭達磨から受け継いだ、防衛兵器の操作から維持管理も行っております、皇帝もおいそれとは手が出せない集団です。



 先祖代々から受け継いだ、近衛連隊の証である髭達磨謹製の黒鉄の鎖帷子と兜、シールドウォール戦術があれば、所詮、ただ野生化しただけの群れなど蹴散らせるはずです。



 それが第一皇子派と婿殿を両天秤に掛けて動かないのは、私の手腕あってのこと。各連隊長の趣味嗜好から、奥さんの年齢、子供の行動まで調べ、接待攻勢から、賄賂、邪教への勧誘など色んな事しました。



 第一連隊の連隊長さんの孫娘が、長男の恋人になってるのは偶然ではありませんし、第三連隊の金庫番が私にメロメロなのも偶然ではございません。連隊員のかなりの数がサメの巣亭ガールズを嫁にしてるのもです。



 ほら努力してるでしょう?完全に味方にできなくても、帝都最強の暴力集団が動かないので有ればファインプレーでは有りませんか?



 あれ?納得してません?これでも?神々関係がマイナスですか?利用している積りで利用されてる?混乱を起こしたいのか、野生化を嘆いているのか、チグハグ?しょうがないじゃん!



 神々なんですよ、やる事成す事予想出来るわけないじゃん!本当に、近頃は神託の一つも無かったんですよ!ジャガー事件だって下火になってたんでんです。飽きたのかなーと、考えていた事は謝りますが、大コロシアムに集った人間さんの大半が野生化するとか、野生化が感染するとか、神ならぬ私に分かるわけぬぇー。



 私はわるくねぇ!私は悪くねぇ!悪いのは、、、、、はい御免なさい。テンション下げます。細かく打ち合わせした積りになってたんですよ。皆納得してたはずなんよ。そうですよ!悪いのは私です。



 でもですね。如何か私の釈明を聞いては頂けませんか?皆さまの世界での某勝利の乱より死人はでてないのです。鎮圧軍は出張ってませんし、火事だってそこまで起こってません。火事場泥棒も暴動に付き物の略奪だって、野生化の方が早くてそれ程なんです。



 結果オーライ!結果オーライ!何時までもアステカの神々だって現世にチョッカイかけませんよ。私が帝都を離れれば、新エルフ教も軌道修正するでしょう。破戒僧にまで神々の声が聞こえるだなんて、神との導管である私が居るせいなはずです。



 ね!計画とは修正するものです。完璧で完全な計画などこの世にありませんよ。ね!そうでしょう?高度な柔軟性を有し臨機応変に対処するのが、皆さま方優秀な存在と言う物。現在エルフである私がそれに倣っているだけですよね!

 

 だから、その拳をおろして。怒りを収めて。怖い顔はトラロック先生だけで十分というものです。ホラ可愛いエルフ娘のお・ね・が・い。駄目?海軍だって海兵隊を陸に上げてませんし許して?



 

 言い訳は此処まで!事態は動き続けています。現場でおこってるのよ事件は。最前線のエルフ娘は事態の収束に向けて走らなければ。



 婿殿は、宮殿正門を突破し、嘗て、エルフが人類髭達磨連合との大激戦を行った古戦場でもある、王鷲の広場に集まっておりました。



 集まるは語弊がありますね。睨みあいが正解。睨みあっているのは現在の宮殿防衛の要である、親衛隊です。皆さま、近衛が何故に防壁に居るの?とお思いでしょう。これが答えす。



 腐敗極まる人類帝国は、強力無比で皇帝の首を挿げ替えかねない近衛を遠ざけて、自分たちの言う事をそれなりに聞く、金で雇用した傭兵を親衛隊として組織しているからなのです。



 親衛隊。四百人ほどの小規模な実力集団ですが。多寡が四百と侮るなかれ、その構成人員は殆どがオーク。僅かな人間さんも北の果て、オークの地である龍頭大陸で生きるノースバーバリアンズ、オークの地で生き残れる人間さんは並みの人間さんでは有りません。



 流石に、オークが主力としている氷原狼に騎乗しているのは居りませんが、お馬さんに乗った騎兵も百騎は超えているでしょう。その突撃力、身の丈程もある大斧を振り回す力は驚異を通り越して、台風の通過と同じく、自然の驚異レベルです。

 

 人類世界の海運の中心地である帝都には、オークたちも数多くとは行きませんが来ています。そんな彼らの目的は帝都で召し抱えらえ、故郷に錦を飾る事。接弦攻撃の決戦兵器として海軍に所属するのが主何ですが、その中でも腕が立つ奴らはこうして親衛隊に取りたてられる事になります。



 唸り声を上げる野生の群れも、オークの無言の圧力にはビビり気味。飛びかかっていった第一波のジャガー君達でしょうか、真っ二つされて転がってますから、後続が恐れをなすのも無理は有りません。野生は野生を知る、生物としてポテンシャルの違いが野生の感にビンビンきてるのです。



 婿殿は何処に?居た居た、獣人間の第二列に正気の人間さん集団を伴っている彼が見えます。



 「見つけましたよ。悪い義息子ですね貴方は、仕方がない事とは言え、私が寝てる間に事態を此処までにするとは」



 「これは、お義母さん。海燕に任せたたから、大丈夫とは思っていましたが、ご無事の様でなにより。これですか?ほらアレですよ、お義母さんも良くやるその場ノリと言うやつですよ」



 「この子は、、、義理の親子とはいっても、そこまで似なくても良いでしょうに。それに娘よ、最前線に旦那を連れて、死んだらどうするのです?聞いてますか、海猫!」



 「知らない。私も母さんの娘だから、その場のノリには弱い。それに、、、何時までも子供と思うな、これは遅く来た反抗期。でもまあ、無事で良かった、戦車から落ちた時は死んだかと思った」



 似た者夫婦は悪びれていません。なんでかなぁ、私の血かなぁ矢張り。反抗期ですか、凄い反抗期だ事。

流石に私も反省します。



 「でっどうしましょうか?兄上と皇帝陛下は親衛隊を繰り出してきましたよ。彼らを急に動かすには特別賞与でも必要なハズなのにご苦労なことです」



 「一気に掛かる?町の様子では、飲んだくれ坊主が更に増援を連れてきて走ってきてるんでしょ」



 まあ、待ちなさい。子供達よ。勢い任せの母でも考えがあります。生半可にオークに当たっては、屍山血河を築くだけ。最終的には勝てても、そんな勝利では婿殿のこれからの帝都支配に汚点を残すだけです。



 「ではどうするので?兄上たちは怯えて出てきませんが、此方が手詰まりとしれば、親衛隊を突撃させかねませんよ?」



 落ち着きなさい婿殿。一世一代の大イベントの興奮するのは分かりますが、何時もの様にお酒でも飲んで、、、来ましたね。



 獣人間の群れを掻き分け、破戒僧殿がやって来ました。彼は神輿に乗っかる様に、とある物の上に乗っかってやってきたのです。担ぎ手はワッショイワッショイではなく、ウガーウゴーですが大分酔いも醒めたご様子、人間らしい複雑な命令も聞けてます。



 「お待たせしました。此方がご所望の物です。大変でしたよ。渋る海軍の奴らからこれを借りるのは。まあ彼らも、我らの熱い信仰心には勝てませんでしたが」



 事前に話は通してありましたから、すんなりとは言えなくても、暴徒の集団にも貸してくれたようです。これが終わったらサメの巣亭で、無料の貸し切り飲み放題フェアでもしてあげましょう。



 破戒僧が持って来たのはなんだですか?驚いてはいけませんよ、私も最初見た時、現物が未だ残っているとは思わなかった兵器です。



 大分前にドワーフの火に付いてお話しましたよね?これはその発射機、所謂所の火炎放射器と言う奴です。人力消火器、竜吐水のお化けのような見た目ですが、髭達磨製で、黒鉄と白金を合わせて作られた此奴の性能は、皆さまの世界の物とは威力が違います。



 その飛距離。人間さん五人がかりで約百メートル以上は飛ぶと言うから凄い。人間さんのエルフの森、丸焼き作戦の主力たる兵器となっていた位。此奴の大量投入には、流石のエルフも拠点を燃やされまくったそうです。



 その威力を利用し、一時は海戦の決戦兵器となっていた此奴ですが、燃料たるドワーフの火が尽きた今となって唯の置物。海軍の倉庫で埃を被っていたと言う訳。



 込める燃料が尽きたのなら補充してあげようではないですか。込める物は皆さん、予想がついてますよね?

酒は既に入ってるようですから後は。



 病み上がりで貧血気味ではありますが、皆さま体を張って頑張っているのです。私も体を張らねばなりません!手首をナイフで切りまして、痛い!



 一滴程度の血では、オークには効果が有りません。彼らは戦闘民族、毒や怪我の耐性はエルフに準ずる所さえあると言います、大量に行きましょう。



 さあ用意は出来ました。フラフラしますが行きますよ!進軍です!







 親衛隊所属。熊殺しは、兜の内で胡乱な表情をもって己の敵を見やっていた。皇帝から暴徒鎮圧の命が下り、おっとり刀で集結したが相手が訳の分からん存在だからだ。



 暴徒の類なら突撃一つで蹴散らせる。だが、何故だか突如開いた正門よりなだれ込んで来た敵は、どいつもこいつも、故郷での成人儀式に出る若者の様な顔をしている。



 狂い茸を決めて、素手で氷原狼とやり会うあの祭りあの儀式、自分も随分と前に出たが、今、目の前にいる暴徒はそれそっくりだ。



 唸り、猛り、涎を撒き散らし、目に付く者が敵だと言わんばかりの獣の表情。巣穴を襲われた大熊も有んな顔をしている。



 飛びかかって来た連中は流石に蹴散らせたが、押し倒された奴は喉笛を嚙みちぎられて、お陀仏してしてしまった。オークに対してそんな事出来る人間なんぞ聞いた事が無い。



 恐れをなしたか睨みあっているが、このままでは、埒が明かない。この様な強敵の群れに出会えたのだ、今日は死ぬには良い日だ、一気呵成に突撃をすべきだ。



 隊長もそう思ってるのだろうが、腰抜け人間どもがイヤイヤをしやがる。お前ら貴族だろう?族長なんだろ?こんなに良い日なのに死ぬのが怖いのか?



 一人でも突っ込んでやろうか知らん?俺が突っ込めば後から皆来るだろう。そう思っていると相手がジリジリと距離を詰めだしてきた。あいつ等来るつもりだ。



 見れば、群れの中に何人か正気の奴も見える、あれが長だろう。もう良いや、相手も殺る気になったんだ、父祖のいる金の平原に行こうじゃないか。



 そうお思い、一騎掛けの決意を固めると、隊の後方から正確無比の矢が飛んでくるではないか!鬼猪の奴がやられた!丸首の奴も!畜生!アイツには金貸してるのに!どうした事だ!宮殿内部に敵を許したのか!



 隊長が突撃を叫ぶ。そう、こなけりゃ!後ろに回り込まれてるんだろ?じゃあ、前の奴らを皆殺しにして戻りゃ良い!



 距離は僅か、相手の目の色さえ見える。さあ、祭りの時間だ!何だあれ?群れの中から見た事のない機械が出てきて筒先がこっちを?



 うわっ!ぷ!酒かこれ?ふざけんなこれくらいでオークが止まる訳ねぇだろ!大人しく俺と殺しあえ、、、、











 結果は上々ですね。子供達の宮殿内部からの攻撃で気を反らされたのも有りますが、オークの皆さま、たらふくご馳走になったご様子。そう簡単には魅了されていませんが目に見えて勢いを殺されてます。何よりお馬さんがバタバタと倒れますよ、、、馬だけに。



 

 後は勢いあるのみ、私も先頭に立ちます。ふらふらオークなど、どぶ大蛸以下!突撃!粉砕!バンザーイ!
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