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第五十二話 燃える信仰心、オーク君を襲う
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教皇猊下の大いなる導きの元、我らは北の大地へとやって来た。この不毛の大地に信仰の種を撒き、野蛮なる者たちを兄弟へと変える為にだ。
我らの信仰は、初代教皇猊下の御手による奇跡により滅びしエルフとすら和解が出来たのだ。許しと友愛の担い手である我らは、この荒涼とした北を豊かな祈りで満ちた信仰の砦に変える事すら不可能ではないと確信している。
我らには争っている時間はない。森の拡大は止まる事を知らず、人の領域は狭まりつつある。森より出でる呪われた者共は今も人々を襲い全てを脅かしている。全ての種族は手を取り合わなくていけないのだ。それが過ちを犯したエルフたちの望みでもあり、彼を滅ぼした我らが継ぐべき意思なのだ。
贖宥修道士会宣教師の日記
ふむ、そう言う認識ですか。私は手に入れた日記を読みながら納得しました。如何やら人間さんも危機感は持ち始めたようですね。
なんで日記なんか持ってんのか?北の大地に派遣された宣教師たちを先導しているのは、都市の子供たちですので情報は筒抜けなんですよ。
幾ら情熱に燃えていても人間さんは脆弱ですから、陰に日向にバックアップしてあげなければ簡単に全滅します。
ですがその情熱は本物。右も左も分からなない土地に、行けと言われて行く物好きですから命を投げ出す覚悟でオークに「和解と友愛の信仰を広めております。「信仰」と言うより「侵攻」と言った方が正しい気がしますが。
書簡を聖都に届けて一年たつか立たない内に、船団仕立てて上陸してきましたからね彼ら。その勢いはかなりの物です。既に大陸でも豊かな地域に橋頭保を築いていると言うから凄い。ザビーも真っ青なスピードです。
初めは上手く行ってはいませんでした、先遣隊なんか到着直後に襲撃を食って壊滅、胡乱な信仰を広める輩は綺麗に首を並べられ、同行していた都市エルフに救出された少数が這う這うの体で逃げかえりました。ですが人間さんはそれ位では諦めない。
本隊は大部隊で橋頭保を確保。首切られようと、燃やされようと、穴に埋められよう一向に諦める事無く、オーク社会に突撃を繰り返しました。
無論無謀な突撃だけしている訳ではありません。内陸を徐々に蝕まれる人間さん文明は航海術を高めて生き残りを図っていますので、上陸地点から続々と人類世界の文物をオーク社会にバラ撒き、物質的なメリットも持ちましてオークの精神に入り込もうとしました。
普段でもオーク社会は荒んでおります。更に私たちアマゾネス軍団の圧迫が倍率ドンしていますので社会の荒みようは更にドン、そこに優しい信仰と潤沢な物資がスーッと効いて先ず貧乏オークから落ちました。
宣教師たちは訴えます。
「兄弟姉妹よ、私たちは手を取り合う為に来た。争い会うのではなく協力し合わなければ、この苦難の時代を生き残れないのだ。今も南の兄弟は広がり続ける魔の領域に対して戦い続けている。君たちにもその一翼を担って欲しい。君たちは強い、その力を奪う事ではなく抗い、切り開く為に使ってはくれないか?」
旧人類帝国領域は、ここ百年で既に大規模開発を行う力も人員も使い果たしたと見え。私たちエルフが各地で拡大させる大自然の驚異と妨害工作に既存領域を侵食されない様に抗うだけで精一杯な状況となっています。
何故に人間さんがオークに邪教を広る事にしたかはこれが理由です。マンパワーの足りない人類はオークを信仰でリクルートしたいのです。これが私の作戦であり、聖都に向けた書簡の内容です。
これ人類・オーク両方にメリットがありますでしょ?人類は頼もしい味方が出来て嬉しく、オークは歓迎されないと思っていた土地から両手を上げて迎えられ、辛気臭い上に不細工の侵攻にもさらされる土地から移住できるのですから。
そしてエルフにもメリットがあります。雪エルフには敵が少なくなってくれて良し、森と都市のエルフにはホームで襲える獲物が増えて良しです。実際、都市の子供たちからは文句が出ていました。
「森の兄弟が攫っていくので、供給されるオークの量が足りない!独り占め良くない!寡占反対!我々にも筋肉を!タッパのある男女を寄越せ!性癖の偏りを許すな!」
ほら、我々って皆様の世界の頭が赤い人の夢である原始共産社会でしょ?(原始って言うか神代ですが)だから仲良く分け合わないといけませんからね。
それにですね。これで我々が不利になったり、森が全て薪に変わったりする心配は要らないのです。移住地は聖都の方で決めております。一度船に乗ったら彼らはバラバラに開拓地に送り込まれます。
そうですね。初めの十何年は支援をしますよ。でもある程度基盤が整ったら自活して貰います。でも不思議ですねぇ、やっとこさ安定してきたと思うと、なぜか居留地から連絡が途絶える事になるのです。
ホントに不思議ですねぇ。一杯支援したんですよ?デカい修道院や教会を立てて常に人員を聖都からも送っているのに不思議ですねぇ。ロアノークの怪が頻発するだなんてこの世界はおっかないところです。
話をもどしましょう。これが私の策謀其の一。オークに逃げ道を作ってあげようと言う訳です。彼らの人口は少ないのですから、ドンドン人類領域に流出してもらって龍頭大陸の少数派に転落して貰おうと言う算段であります。
上手く行けば、何れ雪エルフと豚エルフは北の大地の多数派になり、純粋なオークは我らの血の中に消える事になるでしょう。
直ぐには無理です。かの神も何某か対策を打ってくるでしょう。ですがそこに忍び寄るのが第二段階作戦です。これまで我々はオーク上層をバブらせて参りました。実はこのバブらせ今でも継続中です。
バブらせてくる優しいおねーさんが怪しいカルトに嵌ってたとしたらどうでしょう?いけませんねぇ、これはいけません。
新エルフ教は愛の宗教です。それが異種族同士だとしても愛が在れば良いじゃんと、在りし日の婿殿と酔いどれ坊主、エルフにドはまりした元皇帝陛下等、頭の良いのが纏めた聖書にちゃーんと書いてあります。
編纂作業では喧々諤々の議論を繰り返した物です。酒入れてましたからかなり白熱して殴りあったりもしてた事を思いだします。(あれを今では厳かな顔して教会で朗読しているから笑える)
許されざる恋OK!それが人類の教え!許されないのであれば、、、、
我らの信仰は、初代教皇猊下の御手による奇跡により滅びしエルフとすら和解が出来たのだ。許しと友愛の担い手である我らは、この荒涼とした北を豊かな祈りで満ちた信仰の砦に変える事すら不可能ではないと確信している。
我らには争っている時間はない。森の拡大は止まる事を知らず、人の領域は狭まりつつある。森より出でる呪われた者共は今も人々を襲い全てを脅かしている。全ての種族は手を取り合わなくていけないのだ。それが過ちを犯したエルフたちの望みでもあり、彼を滅ぼした我らが継ぐべき意思なのだ。
贖宥修道士会宣教師の日記
ふむ、そう言う認識ですか。私は手に入れた日記を読みながら納得しました。如何やら人間さんも危機感は持ち始めたようですね。
なんで日記なんか持ってんのか?北の大地に派遣された宣教師たちを先導しているのは、都市の子供たちですので情報は筒抜けなんですよ。
幾ら情熱に燃えていても人間さんは脆弱ですから、陰に日向にバックアップしてあげなければ簡単に全滅します。
ですがその情熱は本物。右も左も分からなない土地に、行けと言われて行く物好きですから命を投げ出す覚悟でオークに「和解と友愛の信仰を広めております。「信仰」と言うより「侵攻」と言った方が正しい気がしますが。
書簡を聖都に届けて一年たつか立たない内に、船団仕立てて上陸してきましたからね彼ら。その勢いはかなりの物です。既に大陸でも豊かな地域に橋頭保を築いていると言うから凄い。ザビーも真っ青なスピードです。
初めは上手く行ってはいませんでした、先遣隊なんか到着直後に襲撃を食って壊滅、胡乱な信仰を広める輩は綺麗に首を並べられ、同行していた都市エルフに救出された少数が這う這うの体で逃げかえりました。ですが人間さんはそれ位では諦めない。
本隊は大部隊で橋頭保を確保。首切られようと、燃やされようと、穴に埋められよう一向に諦める事無く、オーク社会に突撃を繰り返しました。
無論無謀な突撃だけしている訳ではありません。内陸を徐々に蝕まれる人間さん文明は航海術を高めて生き残りを図っていますので、上陸地点から続々と人類世界の文物をオーク社会にバラ撒き、物質的なメリットも持ちましてオークの精神に入り込もうとしました。
普段でもオーク社会は荒んでおります。更に私たちアマゾネス軍団の圧迫が倍率ドンしていますので社会の荒みようは更にドン、そこに優しい信仰と潤沢な物資がスーッと効いて先ず貧乏オークから落ちました。
宣教師たちは訴えます。
「兄弟姉妹よ、私たちは手を取り合う為に来た。争い会うのではなく協力し合わなければ、この苦難の時代を生き残れないのだ。今も南の兄弟は広がり続ける魔の領域に対して戦い続けている。君たちにもその一翼を担って欲しい。君たちは強い、その力を奪う事ではなく抗い、切り開く為に使ってはくれないか?」
旧人類帝国領域は、ここ百年で既に大規模開発を行う力も人員も使い果たしたと見え。私たちエルフが各地で拡大させる大自然の驚異と妨害工作に既存領域を侵食されない様に抗うだけで精一杯な状況となっています。
何故に人間さんがオークに邪教を広る事にしたかはこれが理由です。マンパワーの足りない人類はオークを信仰でリクルートしたいのです。これが私の作戦であり、聖都に向けた書簡の内容です。
これ人類・オーク両方にメリットがありますでしょ?人類は頼もしい味方が出来て嬉しく、オークは歓迎されないと思っていた土地から両手を上げて迎えられ、辛気臭い上に不細工の侵攻にもさらされる土地から移住できるのですから。
そしてエルフにもメリットがあります。雪エルフには敵が少なくなってくれて良し、森と都市のエルフにはホームで襲える獲物が増えて良しです。実際、都市の子供たちからは文句が出ていました。
「森の兄弟が攫っていくので、供給されるオークの量が足りない!独り占め良くない!寡占反対!我々にも筋肉を!タッパのある男女を寄越せ!性癖の偏りを許すな!」
ほら、我々って皆様の世界の頭が赤い人の夢である原始共産社会でしょ?(原始って言うか神代ですが)だから仲良く分け合わないといけませんからね。
それにですね。これで我々が不利になったり、森が全て薪に変わったりする心配は要らないのです。移住地は聖都の方で決めております。一度船に乗ったら彼らはバラバラに開拓地に送り込まれます。
そうですね。初めの十何年は支援をしますよ。でもある程度基盤が整ったら自活して貰います。でも不思議ですねぇ、やっとこさ安定してきたと思うと、なぜか居留地から連絡が途絶える事になるのです。
ホントに不思議ですねぇ。一杯支援したんですよ?デカい修道院や教会を立てて常に人員を聖都からも送っているのに不思議ですねぇ。ロアノークの怪が頻発するだなんてこの世界はおっかないところです。
話をもどしましょう。これが私の策謀其の一。オークに逃げ道を作ってあげようと言う訳です。彼らの人口は少ないのですから、ドンドン人類領域に流出してもらって龍頭大陸の少数派に転落して貰おうと言う算段であります。
上手く行けば、何れ雪エルフと豚エルフは北の大地の多数派になり、純粋なオークは我らの血の中に消える事になるでしょう。
直ぐには無理です。かの神も何某か対策を打ってくるでしょう。ですがそこに忍び寄るのが第二段階作戦です。これまで我々はオーク上層をバブらせて参りました。実はこのバブらせ今でも継続中です。
バブらせてくる優しいおねーさんが怪しいカルトに嵌ってたとしたらどうでしょう?いけませんねぇ、これはいけません。
新エルフ教は愛の宗教です。それが異種族同士だとしても愛が在れば良いじゃんと、在りし日の婿殿と酔いどれ坊主、エルフにドはまりした元皇帝陛下等、頭の良いのが纏めた聖書にちゃーんと書いてあります。
編纂作業では喧々諤々の議論を繰り返した物です。酒入れてましたからかなり白熱して殴りあったりもしてた事を思いだします。(あれを今では厳かな顔して教会で朗読しているから笑える)
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