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第五十三話 ねぇ一緒に逃げちゃおうか?

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 「一緒に逃げちゃおうか?」



 くぅう、一度は言われてみたいセリフですねぇ。許されざる恋に訪れる決断の瞬間です。これがオークを落とす殺し文句。



 皆さまもこれを顔は今一でも愛嬌も包容力もあるお姉さんor甘やかし系ママキャラから言われたら落ちるでしょう?



 苦しい生活、暴力の連鎖、闘争に次ぐ闘争の人生に疲れ果てたオーク君には覿面に効くセリフです。それが重圧を常に受けている指導者階級なら尚の事。



 更にです!これは無謀な逃走ではありません!逃げた先には楽園とは言わない迄も新しいオーク生と新天地があり、愛の逃避行へのサポートも充実しているのです!



 地球世界でいいますと、銃弾飛び交い麻薬と抗争が支配するダウンタウンから、日本の限界集落に国籍付で移住しようとの惚れた相手からのお誘いです。そこに何と日本国籍まで付いて来る感じ。



 どうします?銃で洗礼を受け、鉄火場での人生を、物心付いた時から過ごしてきたムキムキマッチョマンなそこの貴方?安らぎと幸せな人生が待っているんですよ?



 ぜーんぶ詐欺ですけどね。



 行きつく先はエルフのワクワク因習村!淫獄と原始生活が支配する、なーんかニューカマーがみーんなニコニコしている感じの場所です、花冠を被せてあげましょう。



 ですがそんな事教えませんし、知らない方が幸せ。



 幸せににはなりますよ実際。正し自分の子孫は、遺伝子から魂まで書き換えられた完璧種か新オークになってしまい、これまで保ってきた伝統も信仰も矜持も失ってしまうだけです。



 さあ皆でなろうメトセラ的なにか!貴方の子孫は森の妖精さんになるの!そこ!ブギーマンとか言わない!確かに人攫いは部族的伝統に昇華してますよ!



 人間さんの都市た農村には子供が一人でいると「どうした少年?」とか言うハァハァしている謎の美人お姉さんやキラキラお兄さんが出没するとの伝説は存在致します!



 性癖と貞操を破壊された少年少女や、独り身のオジサン、オバサンが路地裏や森の奥に消えるともっぱらの噂です!



 修道院に懺悔しに行くと何時の間にやら出家を決意してしまい。褐色エロエロシスターや鬼畜系ファーザーは罪深く寂しい子羊を狙っている様です。



 良いじゃんそれ位、死ぬ分けでなし。ただ文明世界とオサラバして二度と帰れぬエルフワールドに行くだけですよ。ご両親とかが心配なら一緒にお連れします。だから行きましょう?飢えも寒さもない永遠の世界にね?死ぬまでお世話して差し上げます。



 さあこの手をとって?イイ子だから?嫌?ジタバタしても連れて行く!お前も貴方もそこの君もだ!



 ふぅ、良い仕事した。他種族浚って飯が美味い。



 



 話が脱線したのでオークに戻します。こうして今まで散々バブらせてきた大きな赤ちゃんたちは次々と謎の失踪を遂げております。ここまでキまると怖いくらいです。皆疲れてたんですねぇ。



 こうなって来ると大部族は混乱します。一等強い暴力で締め上げて来た上が居なくなるのですから当たり前と言えば当たり前。



 そこに襲い掛かるブスの攻勢。五年程掛かりましたが、既に北の大地の東側は海岸まで乙女ちゃん領へと変貌しました。北側は既にノーマンズランドと言う奴です。



 昔から痩せ狼くらいしか敢えて居住しようとしなかった土地ですが、先祖の故地を守っていた精強な部族も全て追い出すか森へ出荷しました。



 これが出来たのは荒っぽい手段を使ったからです。我々は大雪原を構成する暴走する奇跡の力を広げました。ええ何時もの通り素手で引っ張ってです。



 何度みても異常な光景ですよあれ。不可視の力場を部族のシャーマンたちがエイエイオーと綱つけて引いていくのですから。魔法も奇跡も今のエルフには大きなカブと同じ事なんですね。



 そして広がる異常気象。森は凍てつき、川は凍り、生命と言う生命が冷たい手で白く染まっていきます。

ここで生き残れる生物は多くはありません。



 居住するだけなら確かにオークはできます。彼らはどの様な気候でも耐えれるからです。ただしそれは食糧があっての事、我慢に我慢を重ね、食べれる物は全て食べて飢え死に寸前でも移動を拒否した村もありましたが瘦せ細ったオークなど敵ではないので救助を兼ねて接収させて頂きました。



 そうなると雪エルフも辛いだろう?そこは考えがあります。侵略的外来種である雪エルフと同じく強靭でやたら増える外来種を移植させて貰うのです。



 それは追い追い話すと致しまして、現在の勢力状況を整理しましょう。現在最大勢力は西部に存在する大族長失踪で混乱する普通オーク。



 彼らは速攻で分裂しました。ある程度は収まっていた秩序も崩壊し再度戦国時代しています。ここで大攻勢!全て併呑!とは行かない所が難しくあります。



 数が多いんです。まだ数十万規模で彼らは押し合いへし合いしてますから、そこに攻めていっても爆発する反乱を抑えきるだけの兵がいない。



 では大雪原を広げれば?と言うとそれも簡単ではないんです。あれ結構目立ちます。傍からみますと数千人規模の毛皮を纏った何だか分からない集団が吹雪を纏って進軍している様にしか見えないので、迎撃を食らう事必須。



 イエティとサスカッチの集団が雄叫びを上げながら居住地に迫ってきたら、皆さまだって猟友会に連絡するでしょう?若しくは自衛隊。



 防衛出動されますよあんな集団。その上、力技とは言え奇跡の力を拡大する儀式ではありますので無防備なんです。あっと言う間に駆除されます。



 ここが悩みどころですね。まあ、戦国してますので、新たに立ち上がる有力者にバブりを食らわせ何時までたっても纏まらない様にしてあげましょう。



 次に南部の富農オークです。彼らは西部からの流入と攻勢に耐えながら時に反撃したり、奴隷化して労働量を確保したりしてます。彼らも油断はできません。



 危機の時代は纏まりを呼ぶ物、上層は生活に余裕があるのでバブらせも効きにくいのが問題です。それでもボディーは食らわせていますよ。



 新エルフ教は下層に浸透を続けており、新天地を求めた人口流出を引き起こしているのです。ここで中層にまで邪教が浸透すればいい感じに混乱が起こるでしょう。



 最後は我らが乙女ちゃん率いるブスゾネス&雪エルフ。精強無比ではありますがネックは数です。元より人口希薄地で旗揚げしましたから数が足りない。全部合わせても六万行くかどうかです。



 次々と生まれるハーフエルフが育ち切れば戦力は増強できますが問題は時間。こうしている内にもロキが何か手を打ってきかねない。あれから五年ですから、まだ我が子がデビューする事はないでしょうが正直焦れています。



 以上が現在の勢力分布。どこも決定打は打てない状況ですが、時間がたてば我有利。ですがその時間がない。難しい状況です。時間、、、時間、、永遠に生きれるのに時間に追われています。



 さてどうしたものか。

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