幻聖魔伝 ～Three world～

第九夜

84

「…………この旅が終わった時……お前がどうするのか、俺はわからない。いつ旅が終わるのか、本当に終わるのかすら、俺にはわからない。でも……本当に共存の村が見つかって、お前がそこに住むのなら、俺はそれでも構わないと思う。どこに住むかなんて、その人の自由なわけだし……。
でもな？　例えその村に永住するにしても……時々、帰ってやれよ？　お前の事を思ってくれてるルイおじさんやアーリアおばさん……勿論デュランさんやシーズさんの為にも……。それに、そのブレスレットを直してくれた侍女の人や、お袋達の為にも…………」

　ランディは優しい顔で、俺を見る。



　ランディは、いつもそうだ……。自分の口出しすべきじゃないと思う所は、俺が決めなきゃいけない所はいつもその笑顔で俺を見る。



「勿論どっちにするにしても、俺はずっとお前の親友だ。共存の村に住むにしろ、前より頻繁に行けなくなるかもしれないけど絶対！　お前の所に遊びに行くよ」

「…………」

　俺は黙ってた。



　俺が愛されてる？



　嘘言わないで。だったらどうして、いつも俺に構ってくれなかったの？



　小さい頃からそうだった。



　毎日退屈だった。



　遊び相手も、友達も、いなかった。



　いたのは、俺の命を狙う人達だけ……。

「さ、寝ようぜ？　それとももう少し、ここにいるか？」

　ランディは俺に気を遣ってか、いつもと同じように明るくそう言う。

　俺は首を横に振った。

「よし！　じゃあ戻ろう。誰かが起きて、俺達がいない事に気付いて探されるのも気が引けるしな」



　……その夜、俺はずっと考えていた。

　「愛される」って、どういう事なのだろう？　と……。