松の千年

田仲初芽

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松の千年

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 松は強い木です。
 決して垂れることがありません。
 防風林、というものを見たことがあるでしょうか。風に決してめげません。潮に吹かれ罅の入った木肌は寧ろより一層硬くなります。
 冬に雪が降るでしょう。松は力持ちです。針の山のような葉に積もった雪を振り払おうともせずどっしりと構えております。
 松は強い木です。
 枝を切られても生き続けます。葉が落ちても生き続けます。
 私の住む街には松の名前が付けられています。丘の上に大きな松の木が生えているからです。松は見ていたのでしょう。昔生えたばかりの何もかも新鮮な景色を。着物姿の人々を。戦争に向かう青年の勇姿を。悲しむ家族を、そして立ち上がる人々を。
 松は強い木です。
 けれども独りぼっちです。誰も松を知りません。けれども松は泣きません。決して泣かずに哀しみに耐えます。耐える強さが松の強さです。
 風が吹いても雪が降っても、枝が取れても、松は生き続けます。いつしか松の体が枯れて腐って無くなっても松は生き続けます。
 松がその一生を終えるのは生涯で一回、涙を流した時です。溢れた涙が地面に着いたその瞬間、松の姿は搔き消え、千年生きたことを知るのです。
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みんなの感想(1件)

西野低気圧
2019.02.06 西野低気圧

散文詩。詩散文だっけ?なんかそういうやつ。いいな~かきたいな~。いいなーいいなー。文体が優しいですね。デスマス調って柔らかいですね。

解除

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