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第12話「あの日」①
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胸が苦しい。
視界は真っ暗で、目を開けているのかどうかすらもわからない。神社へ着いた途端に倒れてしまい、樹に背負ってもらったところまでは覚えている。
その後はひどく断片的で、上下に体が揺れる感覚が途切れ途切れにやってきたことから、石段と坂道を下ったのだろうと推測した。祖父の声も聞こえたように思ったが、今はそれも聞こえない。
私はどうなってしまったのだろう。もしかして、もう死んでしまったのだろうか。
ーーーーーーー。
何か音がする。遠くでざあざあという音が聞こえる。気がつけば、不思議と胸の苦しさは消えていて、体は綿菓子のように軽くなっていた。
(そうか、これは夢か…夢だったんだ…何もかも)そう考えれば納得がいくと思ったが、何か釈然としなかった。
(夢?一体どこからが夢で、どこからが現実なの…?)
ずっと会いたかったあの人と、夏祭りに出かけたところからだろうか。もしくは、バス停で過ごしたあの時間も夢なのだろうか。
それこそ、あの雨の日にあの人を偶然見つけたのも、ひょっとすると、再会を願った私の心が見せた幻かもしれない。もしそうなら、ひとり暮らしを始めたあの部屋で倒れたまま、私は今も長い夢を見ているのだろうか。
雨。雨の音がする…。
その音が次第に大きくなる。前方に何か光の粒が見える。そう思ったのと同時に、まるでトンネルを抜けるように、遠くに見えたその小さな光の点が、こちらへ向かって次第に大きくなる。
(ぶつかる…!)
そう思って目をつぶろうとしたが、目を動かすことはおろか、指の一本も自由がきかない。私はただ私となって、虚空をふわふわと漂っているようだった。光が私にぶつかって、目に見える全てが白に染まる。
視界は真っ暗で、目を開けているのかどうかすらもわからない。神社へ着いた途端に倒れてしまい、樹に背負ってもらったところまでは覚えている。
その後はひどく断片的で、上下に体が揺れる感覚が途切れ途切れにやってきたことから、石段と坂道を下ったのだろうと推測した。祖父の声も聞こえたように思ったが、今はそれも聞こえない。
私はどうなってしまったのだろう。もしかして、もう死んでしまったのだろうか。
ーーーーーーー。
何か音がする。遠くでざあざあという音が聞こえる。気がつけば、不思議と胸の苦しさは消えていて、体は綿菓子のように軽くなっていた。
(そうか、これは夢か…夢だったんだ…何もかも)そう考えれば納得がいくと思ったが、何か釈然としなかった。
(夢?一体どこからが夢で、どこからが現実なの…?)
ずっと会いたかったあの人と、夏祭りに出かけたところからだろうか。もしくは、バス停で過ごしたあの時間も夢なのだろうか。
それこそ、あの雨の日にあの人を偶然見つけたのも、ひょっとすると、再会を願った私の心が見せた幻かもしれない。もしそうなら、ひとり暮らしを始めたあの部屋で倒れたまま、私は今も長い夢を見ているのだろうか。
雨。雨の音がする…。
その音が次第に大きくなる。前方に何か光の粒が見える。そう思ったのと同時に、まるでトンネルを抜けるように、遠くに見えたその小さな光の点が、こちらへ向かって次第に大きくなる。
(ぶつかる…!)
そう思って目をつぶろうとしたが、目を動かすことはおろか、指の一本も自由がきかない。私はただ私となって、虚空をふわふわと漂っているようだった。光が私にぶつかって、目に見える全てが白に染まる。
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