いつかまた、バス停で。

おぷてぃ

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第15話「いってきます」④

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    あっという間に停留所へ着いた。次第に口数は減っていき、バスが来る十分ほど前になると、誰も何も言わなくなった。
    おじいさんは時刻表の横でバスが来る方向を見つめている。千鶴さんと多佳子さんは、間に志保を挟んでベンチに座って、志保の両手を握っている。俺は何となく落ち着かなくて、その前を行ったり来たりしていた。

「来たぞ」おじいさんが短くそう告げる。
    志保は静かに立ち上がった。千鶴さんはそっと歩み寄って、優しく志保を抱きしめた。涙が頬を伝う。
「行ってらっしゃいね。離れていても、心はずっとあなたのそばにいるわ」
「うん...」
    バスが《キキー》と音を立てながら停留所前に停車した。

「じゃあ、行きましょうか」現地まで同行するという多佳子さんもそう言って立ち上がった。
「じゃあね、樹君。私はあんまりここへは戻らないだろうけど、状況は逐一報告するわ」
「はい。よろしくお願いします」
    多佳子さんは荷物を手に、先にバスへ乗り込んでいった。志保は千鶴さんと別れの挨拶を済ませ、おじいさんへ向き直った。

「じゃあ、行くね。おじいちゃん」
「ああ、行ってこい」
「うん...」
「心配はいらん。向こうの主治医も腕は間違いない」
「うん」
「それに、わしもちいちゃんも、貴志も多佳子さんも...ついでにそこの樹ってやつも、お前の快復を信じとる」おじいさんはそう言って、俺をちらりとみやった。
「なにそれ」志保は笑って、おじいさんを抱きしめた。
    おじいさんは優しく頭を撫でながら笑った。おじいさんが笑ったところを初めて見た気がした。

「またね。おじいちゃん」
「ああ」
    志保がそっと離れると、おじいさんは空を仰ぎ見て、目を瞬かせた。

    そして志保は、最後に俺の前に立ち笑顔を見せたかと思うと、俯いて黙り込んだ。しばらく無言が続いて、再び顔を上げたときには、その目には涙が浮かんでいた。

「じゃ...行くね」そう言った声は、微かに震えていた。
「ああ」俺は少しでも安心させたくて、笑ってみせた。
「すぐ戻るから」
「ああ」
「手紙も書くし、電話もする」
「ああ」
「待っててくれるよね?」
「ああ」
「約束...だからね...」
「ああ...」
「彼氏ができたら紹介するね?」
「ああ。んあ!?」
    思わず素っ頓狂な声を出す。泣いたまま志保が笑う。笑い返して、あの日みたいに頭をぽんと撫でる。

「お!おい!」おじいさんが声をあげた。
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