いつかまた、バス停で。

おぷてぃ

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第15話「いってきます」③

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    バスの停留所が見えてきた。今日は自分が出かけていくためではなく、大切な人の、勇気を出して踏み出す一歩を見届けるためにやってきた。
    いつもの場所に自転車を停め、何となく停留所の中を見る。ひと月ほどの間に、この場所に対する思い入れは、随分と違うものになっていた。診療所に着くと、もうみんな揃っていて、荷物の準備もあらかた済んでいた。千鶴さんが俺を見つけ、声をかけた。

「あら、樹君。おはよう」いつもの優しい笑顔。
「おはようございます」

    病室に入ると、千鶴さんともう一人、志保の母親もそこにいた。
「おはようございます。えと...お母さん」そう言って軽く会釈をすると、優しく笑って返事を返してくれた。
「こそばゆいわね。名前で呼ぶといいわ」
    心なしか、以前に会ったときより印象が柔らかくなっているように思えた。

    千鶴さんが言った。
「志保なら今、うちの人と一緒にいるわ。大事な話があるって言って。もう少し待っててくれない?」
「はい」

    そうして、しばらく三人であれこれ話をしていると、志保を連れておじいさんが部屋にやってきた。志保はなんと、化粧をしている。俺を見つけると、「やっほ」と小さく手を振って笑う。恥ずかしさはあったが、手を上げて返事をした。
    傍らの千鶴さんを見ると愉快そうにくすくす笑っている。

「んんっ!」
    志保のおじいさんが咳払いをする。千鶴さんは俺に目配せをして、やれやれと肩をすくめた。

「全員そろったみたいだな。じゃあ、行くとしようか」

    おじいさんは、何事もなかったかのようにみんなへ背中を向けると、一人先にスタスタと歩いていく。千鶴さんがその背中に向かって『あかんべえ』をするのを、俺は見逃さなかった。

    停留所までの道のりを、志保と話しながら歩いた。なるべく他愛もないことを話すようにしていた。学校の話、勉強の話。志保は笑いながらそれを聞いていて、時折、非常に的確なアドバイスをくれた。身長は中学生でも、俺より年齢は二つ上で、悔しいことに、俺より断然頭がよかった。
    病気の為に休学はしているが、某国立大学の法学部に通っているらしい。これまで小馬鹿にしていただけに謎の敗北感にみまわれたが、今は気にしないことにした。後でじっくり反省しよう。
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