いつかまた、バス停で。

おぷてぃ

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第17話「待つことしか」①

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    志保が治療のために異国へと旅立ってから、二ヶ月が過ぎようとしていた。
    むこうへ行った後は、最初の一週間を使ってより精密な検査を行い、手術のタイミングを見極めるとのことだった。そして、四日ほど前に手術を行う日程が知らされた。それが今日だ。
    今日といっても、現地の時間で午前十一時頃、こちらの時間では午前一時頃に始まるということだ。昨夜からずっと眠れずにいた俺は、学校へ行く前に千鶴さんの店に立ち寄ることにした。店の入り口の脇を奥へ入り、住居用の玄関の前に立つ。遠慮がちにインターホンのボタンを押した。

《ビーー》
    ありきたりな呼び出し音。少ししてから、玄関の向こうに人のやってくる気配がした。

「あら、樹君?」
    玄関を開けた千鶴さんは、少しだけ驚いた様子だった。

「朝からすみません。俺...どうしても気になって」俺がそう言うと、千鶴さんは微笑んだ。
「そうよね...。あがる?お茶でもどう?」
    大きく開いたドアの向こうから、朝餉の香りがした。
「いえ、これから学校なんです」
「あら、そう。そうよね、私ったら何言ってるんだろう」
    いつも通りの柔らかな雰囲気が、このときばかりは余計に思えてしまった。なかなか本題に辿り着かないことにも少しだけ苛立ちを覚えたが、そんな俺の心境を察したのか、千鶴さんが言った。

「志保のこと、心配してくれてるのよね...。でも、ごめんなさい。まだ多佳子さんから連絡が無いの。手術が終われば電話が来るはずなんだけど...」
    そう言って千鶴さんは目を伏せた。おそらく千鶴さんも眠れないでいたのだろう。よく見れば、目の下に隈ができていた。
    さっきまでの子どもじみた自分が情けなくなった。孫娘が大きな手術に臨んでいるのだ。心配でないはずがない。

「そうですか...」朗報を期待していただけに、落胆が隠せなかった。
「学校終わりにまた寄ってもらってもいいかしら。その頃には、何かしら知らせがあると思うの」
「わかりました...また来ます」
    力なく笑った千鶴さんにお礼を言って、ひとまず学校へ行くことにした。

    あたりを見れば、目に映る景色から秋はとっくに過ぎ去って、鼻腔を抜ける外気の冷ややかさと、葉を落として枝ばかりになった街路樹に、冬の訪れを感じていた。
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