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第六章 簒奪編
第116話 王都突入
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六万余の連合軍が王都を取り囲む中、ミレーヌは本陣でジャックやゲオルクなどの幹部と最終打ち合わせを進めていた。その最中、ラウールが恐縮しながらミレーヌの元へやってきた。
「遅くなって申し訳ございません」
「例の手はずは?」
「はい、ぬかりございません」
それを聞いたミレーヌは笑みを浮かべ、ジャック達を見た。彼らは一様に頷いた。
◆◇◆◇
グラッセ公爵軍が王都を包囲して三日目の朝、王都の住民は異様な光景を目にした。王都の広場や主要な通り、さらには貴族の館の塀にまで、大量の紙が張り巡らされていたのだ。集まった人々が目にしたのは、グラッセ公爵領ですでに施行されている新しい統治の様子。「税率の低さ」「物価の安定」「汚職官僚の排除」といった、王都の住民が渇望する理想が、克明に記されていた。
その紙を見た群衆の間では、驚きと、自分たちの悲惨な現状への怒りが渦巻いた。しかし、数時間後、ジュノイー侯爵の命により、騎士たちが紙を剥がし始めた。だが、手遅れだった。紙の内容は、もはや庶民の噂となり、城内に深く浸透していった。
◇◆◇◆
翌朝、王都はさらに激しく揺れた。主要な場所に再び張り紙がしてあった。
--貴方はどちらを選ぶ? 王家の下僕として飢えるか。グラッセ公爵の裕福な民となるか
この直接的な問いかけは、人々の心のたがを外した。長引くインフレ、そして王家の改鋳策、さらに増税に絶望していた住民たちの怒りは、制御不能な炎となって燃え上がった。
「我々は奴隷ではない!」
「食料をよこせ!」
暴動が始まった。住民たちは、王家の倉庫やジュノイー侯爵に忠実な貴族の館を標的にし、城内は瞬く間に混乱の坩堝と化した。
ジュノイー侯爵は、暴動の報を聞き、顔を蒼白にした。彼の考えは、城壁内で徹底抗戦を続けることだったが、城門が内側から開かれる可能性に恐怖を覚えた。侯爵は手勢を率いて、城門へと向かうことにした。
しかし、途中の大通りで、彼は暴徒の群れに出くわした。その怒りの形相は、飢えた獣の
ようだ。侯爵は、彼らを説得しようと声を上げた。
「お前たちの気持ちはわかる! だが、落ち着け! 賊軍を打ち破ればお前たちは元の暮らしになるように約束する」
しかし、「お前らが悪い!」「もう我慢できない!」と、群衆の怨嗟の声が大合唱となって侯爵を包んだ。侯爵は、説得での事態の収拾が不可能だと悟り、武力による鎮圧を決断した。
「切り捨てても構わん! 城門へ急げ!」
騎士が剣を抜き、平民を斬り始めた。しかし、その血の光景が、暴徒の怒りに油を注いだ。「やっちまえ!」「殺せ!」数十倍に膨れ上がった群衆は、投石や木の棒を武器に、騎士の隊列に津波のように殺到する。
ジュノーイ侯爵の手勢は、剣では防ぎきれない数の暴力に圧された。騎士の誇りも、優雅な甲冑も、熱狂した民衆の群れの重圧の前には無力だった。
侯爵は、王国の命運を賭けた王都防衛戦の最中、皮肉にも王都の民によって、無残な最期を遂げた。彼の死体は、暴徒の群れに踏みにじられ、原型を留めないほどに潰されていた。娘の陰謀に加担した父親は、誰にも看取られない悲惨な末路となった。
◇◆◇◆
城門が内側から開かれたのは、その日の夕刻だった。これを合図に、ミレーヌは全軍に王都への突入を命じる。
こうして包囲戦は、城内戦へと移行したのである。
「遅くなって申し訳ございません」
「例の手はずは?」
「はい、ぬかりございません」
それを聞いたミレーヌは笑みを浮かべ、ジャック達を見た。彼らは一様に頷いた。
◆◇◆◇
グラッセ公爵軍が王都を包囲して三日目の朝、王都の住民は異様な光景を目にした。王都の広場や主要な通り、さらには貴族の館の塀にまで、大量の紙が張り巡らされていたのだ。集まった人々が目にしたのは、グラッセ公爵領ですでに施行されている新しい統治の様子。「税率の低さ」「物価の安定」「汚職官僚の排除」といった、王都の住民が渇望する理想が、克明に記されていた。
その紙を見た群衆の間では、驚きと、自分たちの悲惨な現状への怒りが渦巻いた。しかし、数時間後、ジュノイー侯爵の命により、騎士たちが紙を剥がし始めた。だが、手遅れだった。紙の内容は、もはや庶民の噂となり、城内に深く浸透していった。
◇◆◇◆
翌朝、王都はさらに激しく揺れた。主要な場所に再び張り紙がしてあった。
--貴方はどちらを選ぶ? 王家の下僕として飢えるか。グラッセ公爵の裕福な民となるか
この直接的な問いかけは、人々の心のたがを外した。長引くインフレ、そして王家の改鋳策、さらに増税に絶望していた住民たちの怒りは、制御不能な炎となって燃え上がった。
「我々は奴隷ではない!」
「食料をよこせ!」
暴動が始まった。住民たちは、王家の倉庫やジュノイー侯爵に忠実な貴族の館を標的にし、城内は瞬く間に混乱の坩堝と化した。
ジュノイー侯爵は、暴動の報を聞き、顔を蒼白にした。彼の考えは、城壁内で徹底抗戦を続けることだったが、城門が内側から開かれる可能性に恐怖を覚えた。侯爵は手勢を率いて、城門へと向かうことにした。
しかし、途中の大通りで、彼は暴徒の群れに出くわした。その怒りの形相は、飢えた獣の
ようだ。侯爵は、彼らを説得しようと声を上げた。
「お前たちの気持ちはわかる! だが、落ち着け! 賊軍を打ち破ればお前たちは元の暮らしになるように約束する」
しかし、「お前らが悪い!」「もう我慢できない!」と、群衆の怨嗟の声が大合唱となって侯爵を包んだ。侯爵は、説得での事態の収拾が不可能だと悟り、武力による鎮圧を決断した。
「切り捨てても構わん! 城門へ急げ!」
騎士が剣を抜き、平民を斬り始めた。しかし、その血の光景が、暴徒の怒りに油を注いだ。「やっちまえ!」「殺せ!」数十倍に膨れ上がった群衆は、投石や木の棒を武器に、騎士の隊列に津波のように殺到する。
ジュノーイ侯爵の手勢は、剣では防ぎきれない数の暴力に圧された。騎士の誇りも、優雅な甲冑も、熱狂した民衆の群れの重圧の前には無力だった。
侯爵は、王国の命運を賭けた王都防衛戦の最中、皮肉にも王都の民によって、無残な最期を遂げた。彼の死体は、暴徒の群れに踏みにじられ、原型を留めないほどに潰されていた。娘の陰謀に加担した父親は、誰にも看取られない悲惨な末路となった。
◇◆◇◆
城門が内側から開かれたのは、その日の夕刻だった。これを合図に、ミレーヌは全軍に王都への突入を命じる。
こうして包囲戦は、城内戦へと移行したのである。
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