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第十四話
しおりを挟む「くそ!くそ!くそっ……」
「何で……俺は勝てない……」
◇
「凄かったね!今日の模擬戦。 あそこから勝ちをもぎ取るなんて、思いもしなかった!」
興奮して話すリーベに笑いかける、モルテ。 おもむろにサムが口を開き呟いた。
「トイフェルの悔しさは計り知れない」
ホントに小さな、小さな呟きのハズなのに談話室のいる全員が口を噤んだ。
勝てる戦いだった。 二属性持ちが火魔法に負けた。 その現実は二属性持ちに衝撃を与え、他の者に勇気を与えた。 一属性でも戦い方の工夫次第で二属性持ちに勝てる。 学園内に戦いの様子が広がった事で、戦い方を見直す者が増えた、まさに革命とも言える。
負けるハズがなかった。
二属性持ちが一属性に負けてはならない。 それは常識であり約束でもあった。 それが、破られたのだ。 当然、二属性持ちは敗者にかける言葉など持たない。 いや、持てない。 何の言葉をかけたら良いのかが、思いつかないのだ。
そうして日々は過ぎていった。
◇
「おい、あそこ見ろよ」
「ありゃあ、ワイヴァーンか? にしても数が多いな」
「隊長に報告しとけ、念の為だ」
外壁の上から最近活発化している魔物の様子を見ていた、警備兵が報告に走る。
明日は待ちに待った、魔術大会。 街への侵入もそうだが、もし学園に魔物が侵入すれば被害は計り知れない。 保護者や国王陛下も観戦する。 もしも国王陛下が被害を受ければ国の一大事だ。
だからこそ、気を引き締めなければ……。
◇
グランデ学園魔術大会と書かれた布が、風を受けて揺れる。
学園には多くの保護者が観戦に来て、闘技場のイスに腰掛ける。 知り合いを呼ぶ者、席を確保する者、移動する者と様々な行動をとっている。
「これより魔術大会を開催します。 代表選手入場」
三年生Aクラス~Cクラス、二年生Aクラス~Cクラス、一年生Aクラス~Cクラスの九人がステージに上がる。
二年生Aクラスには王太子のルーカス・リラ・グランデ殿下、Bクラスに見知った顔のブラット・トゥインクがいるのが見えた。
一年生Aクラスはトール・カグヤ、Bクラスはヘンリー・ミルキス、Cクラスはノーラ・マルティナ。
既にクジ引きから戦いは始まっていて、トールが引いたのは七番だ。
対戦カードによって、二年生が不利になることが決まった。 二年生AクラスとBクラスが戦った後、三年生との戦いになるし、Cクラスは一年生Aクラスの僕との戦いだ。
二年生が三年生と一年生に負ける可能性だって、ない事じゃない。
まずは三年生から戦う。 決勝で当たるかもしれないから、よく見ておこう。
◇
工夫というものはまあ、なくは無かったけど、凄いとは思わなかった。 最後は火力押しで戦っていて、二年生すげーくらいだ。
僕の予想は二年Aクラスのルーカス王太子殿下によって、外れた。 ブラットを火魔法でボコボコにして、三年生を風魔法で場外落ちにしていた。
僕は二年Cクラスを倒し、意外な接戦を見せた一年Cクラスのノーラも倒して、決勝へ進んだ。
決勝は、ルーカス王太子殿下に軍配が上がるだろう。 そう思う人が多かったのか、身支度を始めて移動する人たちがいた。
しかし、ルーカス王太子殿下の勝利を信じて帰宅した保護者は後に、後悔する事になってしまう。
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