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第一章 森の生活
第25話 光を宿す結界と王都の報せ
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セツの拠点では、新たに作られた魔道具が静かに光を放っていた。
エルダートレントの魔石を中心に据え、木材に刻まれた螺旋の溝が魔力を導く。
結界は安定して広がり、畑と住居を柔らかな光で包み込む。
セツはその光景を見つめながら、深く息を吐いた。
「……ほんまに、ええ出来や。毎日気張らんでも、こうして守られとる」
柵の上で尻尾を振っていたクロハが、ふふんと鼻を鳴らした。
「当たり前やん。うちの助言と、あんたの根気が合わさった成果やからな」
「せやなぁ。ひとりやったら、きっと行き詰まっとったわ」
「ほな、感謝の気持ちに魚でも焼いてくれるんやな?」
「はいはい。アオイもルビィも、期待した顔すなや」
小鳥と子竜が揃って声をあげ、セツは笑った。
生活の基盤が整ったことで、彼らの表情にもゆとりが見え始めていた。
⸻
その頃、王都。
冒険者ギルドの扉を押し開け、《風霧》の四人が中に入った。
長旅を終えた疲れはあるが、表情は引き締まっている。
カウンターに立つ受付嬢が目を見開いた。
「ロイドさんたち! 無事の帰還、よかったです」
リーダーのロイドが頷き、報告書を差し出す。
「《虚ろの森》外縁の異変は、深部から溢れていた瘴気が原因だった。だが……既にそれは収束している」
「収束……? まさか、誰かが?」
ミリアが小さく笑い、長い赤髪を揺らした。
「詳しいことは語れんけどな。森の奥に、強く賢い存在がいたんや。あたしたち以上に、その地を守ろうとする者が」
受付嬢は驚き、急ぎ書類に筆を走らせた。
「王城にも報告を上げなければ……!」
バルドが腕を組み、真剣な面持ちで言葉を継いだ。
「森は確かに危険だが、今は落ち着いている。無闇に焼き払ったり、伐採を強行するのは得策やないと思うぜ」
「ええ。私たち《風霧》は、その意見で一致している」
リーダーのロイドが静かにまとめると、受付嬢は深く頷いた。
⸻
ギルドでの報告を終えた彼らは、その足で王城へ向かう。
白い城壁の中、広間で待っていたのは若き王族たちだった。
クライブが進み出る。
「父上、母上。森の異変は収まっております」
王は目を細めた。
「……収まった? 討伐せずともか?」
「はい。今は瘴気が払われ、森は落ち着きを取り戻しています。むしろ、手を出さずに見守ることが最善かと」
《風霧》の仲間たちも頷く。
王妃が口を開いた。
「……その森には、何かしらの守護者が?」
「はい。言葉にできるものではありませんが、確かに存在していました」
クライブの瞳は真っ直ぐだった。
彼は仲間と共に、セツたちとの約束を守り、余計な干渉を避ける形で報告を終える。
⸻
一方その夜、森の拠点。
セツは焚き火を前に座り、光を放つ魔石を見守っていた。
「……王都にも、森のこと伝わっとるんやろか」
「そら伝わっとるやろなぁ」
クロハが尻尾を丸めて火にあたる。
「けど、あいつらは口堅かった。王族の坊ちゃんもな」
「せやな。信じてええかもしれんな」
セツは小さく笑った。
その笑顔を、焚き火と魔石の光が優しく照らしていた。
⸻
こうして、森の暮らしと王都の報告が、静かに交わり始める。
セツたちの安定した日々は、外の世界の動きと呼応しながら、さらに深みを増していくのだった。
エルダートレントの魔石を中心に据え、木材に刻まれた螺旋の溝が魔力を導く。
結界は安定して広がり、畑と住居を柔らかな光で包み込む。
セツはその光景を見つめながら、深く息を吐いた。
「……ほんまに、ええ出来や。毎日気張らんでも、こうして守られとる」
柵の上で尻尾を振っていたクロハが、ふふんと鼻を鳴らした。
「当たり前やん。うちの助言と、あんたの根気が合わさった成果やからな」
「せやなぁ。ひとりやったら、きっと行き詰まっとったわ」
「ほな、感謝の気持ちに魚でも焼いてくれるんやな?」
「はいはい。アオイもルビィも、期待した顔すなや」
小鳥と子竜が揃って声をあげ、セツは笑った。
生活の基盤が整ったことで、彼らの表情にもゆとりが見え始めていた。
⸻
その頃、王都。
冒険者ギルドの扉を押し開け、《風霧》の四人が中に入った。
長旅を終えた疲れはあるが、表情は引き締まっている。
カウンターに立つ受付嬢が目を見開いた。
「ロイドさんたち! 無事の帰還、よかったです」
リーダーのロイドが頷き、報告書を差し出す。
「《虚ろの森》外縁の異変は、深部から溢れていた瘴気が原因だった。だが……既にそれは収束している」
「収束……? まさか、誰かが?」
ミリアが小さく笑い、長い赤髪を揺らした。
「詳しいことは語れんけどな。森の奥に、強く賢い存在がいたんや。あたしたち以上に、その地を守ろうとする者が」
受付嬢は驚き、急ぎ書類に筆を走らせた。
「王城にも報告を上げなければ……!」
バルドが腕を組み、真剣な面持ちで言葉を継いだ。
「森は確かに危険だが、今は落ち着いている。無闇に焼き払ったり、伐採を強行するのは得策やないと思うぜ」
「ええ。私たち《風霧》は、その意見で一致している」
リーダーのロイドが静かにまとめると、受付嬢は深く頷いた。
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ギルドでの報告を終えた彼らは、その足で王城へ向かう。
白い城壁の中、広間で待っていたのは若き王族たちだった。
クライブが進み出る。
「父上、母上。森の異変は収まっております」
王は目を細めた。
「……収まった? 討伐せずともか?」
「はい。今は瘴気が払われ、森は落ち着きを取り戻しています。むしろ、手を出さずに見守ることが最善かと」
《風霧》の仲間たちも頷く。
王妃が口を開いた。
「……その森には、何かしらの守護者が?」
「はい。言葉にできるものではありませんが、確かに存在していました」
クライブの瞳は真っ直ぐだった。
彼は仲間と共に、セツたちとの約束を守り、余計な干渉を避ける形で報告を終える。
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一方その夜、森の拠点。
セツは焚き火を前に座り、光を放つ魔石を見守っていた。
「……王都にも、森のこと伝わっとるんやろか」
「そら伝わっとるやろなぁ」
クロハが尻尾を丸めて火にあたる。
「けど、あいつらは口堅かった。王族の坊ちゃんもな」
「せやな。信じてええかもしれんな」
セツは小さく笑った。
その笑顔を、焚き火と魔石の光が優しく照らしていた。
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こうして、森の暮らしと王都の報告が、静かに交わり始める。
セツたちの安定した日々は、外の世界の動きと呼応しながら、さらに深みを増していくのだった。
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