今世はのんびり耕したい

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第一章 森の生活

第26話 森に根付く薬草と生活の知恵

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 朝露に濡れた畑の薬草が陽に照らされ、青々とした葉がきらめいていた。森の奥から鳥のさえずりが響き、従魔たちの姿が小屋の周囲にちらほらと見える。セツは鍬を片手に畝を整えながら、思わず微笑んでいた。

 この数ヶ月で、虚ろの森の中に作った畑はすっかり形になり、野菜だけでなく薬草の種類も増えた。治療用ポーションに用いる基本素材のヒーリングリーフや、疲労回復に効果のあるブルーミント。さらには防虫作用を持つ草花まで育っている。

 薬草畑の一角には、新たに栽培を始めた白い花が揺れていた。それはセツが【鑑定】スキルで特定した《ホワイトカモミル》。前世で見聞きしたハーブの一種に酷似しており、安眠や胃の調子を整える効果が期待できる。

「ふむ……せやけど、どこまで効果がほんまに発揮されるんか、検証せなあかんな」

 セツは摘み取ったホワイトカモミルを手に取り、乾燥棚へと運んでいった。

 

「おーい、セツはん。こっちはブルーミントの収穫、ええ感じやで!」

 畑の反対側で黒猫クロハがしっぽを立て、かごいっぱいに薬草を積んで駆けてくる。

「ほら見てみぃ、葉っぱの張りもええし、香りも強い。これ、茶にしたら絶対効き目あるで」

「ほんまやな。こないに元気そうなんは、土と水の循環がうまくいってる証拠やろ。アオイが地下水脈を引っ張ってきてくれたおかげやな」

 呼ばれた青い小竜アオイが翼をひらりと動かし、「キュイッ」と誇らしげな声を上げる。

 

 従魔たちと一緒に育てた薬草畑は、ただの畑ではなく「生活の基盤」として成長していた。セツは薬草を種類ごとに区画し、効能や利用法をまとめたノートを作っている。クロハはそれを覗き込み、関西弁まじりにちゃちゃを入れる。

「ほんま几帳面やなあ。そない書き込んでたら、本一冊できるんちゃうか?」

「せやな……けど、記録せんと忘れてまう。せっかく異世界で育ててんのに、無駄にはできへんやろ」

「そらそうやけどな。まあ、セツはんらしいわ」

 

 薬草の利用は単なる医療にとどまらない。防虫草を束ねて家の入り口に吊るし、食材が虫に食われるのを防いだり。乾燥させて布袋に詰め、簡易な消臭袋として倉庫に置いたり。さらには、煮出して風呂に入れることで疲労回復を助けるものまであった。

 クロハはそうした活用法を見つけるのが得意で、セツは彼女の知恵に何度も助けられてきた。

「せやけどセツはん、あの新しい草《イエロールート》やけどな、煎じたらちょい苦いけど、体の芯が温もる感じするんよ。これ、冬場に使えそうやで」

「ほぉ……冷え対策か。ほんまに便利やな。せやけど飲みすぎは毒やったりせえへんか?」

「うん、そこは調整せんとやな。少量なら大丈夫やと思うで」

 

 こうして薬草の研究と実用化は、森の生活を一段と豊かにしていった。
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