【R18】オフィスで一人エッチしてるところを堅物上司に見られちゃって……、ってなんで溺愛が始まってるんですか!?

布団のノラネコ

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4話

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 達明は出勤した理乃を見て、目を見開いた。

「今井……、なんか雰囲気、変わったな……」
「そう、ですか? クライアントと接することもありますし、ちょっと柔らかい雰囲気にしたくて……」

 その言葉に、達明は目元を綻ばせた。

「ああ。……よく似合っている」
「ありがとうございます」

 理乃はポーカーフェイスで答えながらも、心の中でガッツポーズをした。

「新しい案件が来ている。チームはいつものAチームで当たる。午後から会議だ、忘れるなよ」
「はい、承知しました」

 また新しい仕事だ。忙しくなる。
 けれど、シニアプランナーである達明とまた一緒に仕事ができるのだ。それは理乃にとっては喜ばしいことだった。

 理乃はデスクにつくと、メールボックスを開いた。

 達明から送られてきた新規案件の資料に目を通す。

 クライアントは——幸栄不動産。

 大手の不動産会社で、新築マンションのキャンペーンを任されるらしい。大型案件だ。

 (頑張らないと……)

 理乃は気を引き締めた。

 午後二時。会議室に集まったAチームのメンバーは、理乃、達明、そして企画部の数名だ。

「それじゃあ、新規案件について説明する。幸栄不動産の新築マンション『グランドヒルズ千葉』のキャンペーンだ。ターゲットは三十代から四十代のファミリー層。予算規模は——」

 達明が淡々と説明を続ける中、理乃はメモをとりながら聴いていた。

 会議が終わりかけた時、達明が付け加えた。

「ああ、それと。先方の担当者が明日来社する。今井、俺と一緒に対応を頼む」
「はい」

 理乃は頷いた。

 翌日——。

 理乃は新しく買った淡いピンクのブラウスとベージュのタイトスカートを来て出社した。
 クライアント対応の日は、ジャケットも羽織る。ベージュのジャケットが、理乃の柔らかい雰囲気をさらに引き立てた。

「今井、準備はいいか?」

 達明が声をかけてきた。

「はい、大丈夫です」

 二人で応接室へ向かう。

 そして——。

 応接室のドアが開いた瞬間、理乃は目を見開いた。

「理乃ちゃん!?」

 そこにいたのは、見覚えのある顔だった。

「祐介くん!?」

 立ち上がったのは、理乃の大学時代に同じゼミだった、中村祐介だ。

 爽やかな笑顔はそのままに、スーツ姿が似合う立派な社会人になっている。

「うわぁ、まさか理乃ちゃんが担当だなんて!」
「祐介くんこそ、まさか幸栄不動産にいたなんて、知らなかったわ」
「そうそう、実は三年前に転職してさ。マーケティング部で新築マンションの販促を担当してるんだ。今回のグランドヒルズ千葉のプロジェクトリーダーを任されたんだよ」

 祐介はにこやかに名刺を差し出した。

 理乃も慌てて名刺を渡す。

「よろしくお願いします。中村さん」
「ええ、中村さんはよそよそしいよ。理乃ちゃん」
「で、でも、仕事ですし……」

 理乃が戸惑っていると、背後から低い声が聞こえた。

「中村さん、初めまして。アカウントプランニング部の原です」

 達明が、いつもより低い声で名乗った。

「ああ、原さん! よろしくお願いいたします」

 祐介は達明に明るく話しかけ、握手を交わす。

 三人は席についた。

「それで、理乃ちゃん。久しぶりだね。何年振りだっけ?」
「えっと、卒業してからだから……五年振り?」

 理乃は今二十七歳だ。五年前に卒業してから、祐介とは特に会っていなかった。

「そっか、理乃ちゃん。全然変わってないね。相変わらず綺麗だし」

 祐介の言葉に、理乃は少し頬を染めた。

「そ、そんなことないよ……」
「いやいや、本当に。昔からサークルのマドンナだったけど、さらに大人っぽくなって……」

 祐介は本当に嬉しそうに笑っている。

 その様子を達明が黙って見ていた。

「あの、それで、今回のキャンペーンの件ですが……」

 理乃が話を仕事に戻そうとすると、祐介が頷いた。

「ああ、そうだね。えっとね、グランドヒルズ千葉は駅から徒歩五分の好立地でさ……」

 祐介が説明を始める。

 でも、時々、仕事とは関係のない話題が混ざった。

「あ、このあたりって、理乃ちゃんが前に『住みたい』って言ってた場所じゃない?」
「え? あ、そうだっけ……」
「覚えてるよ。ゼミの飲み会で『将来はこういう静かな街に住みたいな』って言ってたじゃん」

 達明の記憶力の良さに、理乃は舌を巻いた。

「中村さん、もう少し具体的なターゲット層について教えていただけますか」

 達明が、少し強い口調で話を遮った。
 ただでさえ忙しいのに、話が逸れてイラついているのだろうか。
 常にポーカーフェイスの達明にしては珍しい。

「あ、はい。すみません。ターゲット層は三十代から四十代のファミリー層で……」

 打ち合わせは一時間ほどで終わった。

「じゃあ、来週また詳細を詰めましょう。今井さん、原さん、よろしくお願いします」

 祐介が立ち上がる。

 理乃と達明も立ち上がって、祐介を見送った。

 応接室を出る直前、祐介が振り返った。

「理乃ちゃん、今度、ランチでも行かない? 昔話とか、したいなって」
「え……」

 理乃が戸惑っていると、祐介が続けた。

「仕事の話もあるし」
「あ……それなら……」
「じゃあ、また連絡するね!」

 祐介は笑顔で手を振って、応接室を出て行った。

 残された理乃と達明。

 沈黙が流れる。

「……今井」

 達明が低い声で呼んだ。

「あいつと、仲が良かったのか」
「え? あ、はい……大学の同じゼミで……」

 理乃が答えると、達明は黙り込んだ。

 その表情は、いつもより険しい。

「あの、原さん……?」
「……今週中に、企画書の叩き台を作る。手伝ってくれ」
「はい。わかりました」

 理乃が頷くと、達明は応接室を出て行った。

 その後ろ姿が、どこか不機嫌そうに見えた。

 (原さん、怒ってる……?)

 理乃は首を傾げた。

 打ち合わせの場で旧友と再会し、はしゃぎすぎてしまっただろうか。
 公私混同はよくなかったなと、理乃は反省した。

 今度祐介と会うときは、昔話はプライベートで会う時にしようと注意することに決めた。

 その日の夕方。

 理乃のスマホに、祐介のSNSアカウントからメッセージが届いた。

『理乃ちゃん、中村です。今日はありがとうございました! ランチ、楽しみにしてます。都合のいい日、教えてくださいね』

 祐介からだ。

「こちらこそありがとうございました。ランチの件、また連絡しますね」

 送信ボタンを押した瞬間、背後から声がした。

「今井、今日はもう上がっていいぞ」

 達明だった。

「あ、は、はい」

 どこか達明はどこか不機嫌そうに見える。

 今日の昼間、祐介と盛り上がってしまったのが悪かったのだろうか。

 だが、取引先と仲良くしておくのは悪いことではないはずだ。ましてもともとコネがあるなら活用するのは当然である。

 理乃は戸惑いながらも、荷物をまとめてオフィスを後にした。
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