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レイニー4
黒瀬さんは、はあ、とため息をひとつついた。細い肩がそれに合わせて上下する。
「久々に声を聞いて、他愛もないこと話してたら実感した。遠くから想っていられればいいと口では言っていても、その想いに囚われている限り、俺は孤独だ。そしてそれがすごく悲しいことだと、これまで気がつかなかった。ほんと、馬鹿だよねえ……」
「……それで俺を呼び出して、雨の中で待ってたんですか?」
「そういうことになるね、簡単に言うと。人恋しくなっちゃったんだ。あ、いま、面倒な大人だなって思ったでしょう?」
黒瀬さんはふざけたように頬をふくらませてみせた。この人のこういうところが、俺はよくわからなかったりする。
子供じみた無邪気なことを言ったかと思えば、次の瞬間には恐ろしいほど冷たい顔をする。
悔しいことに、その不安定さが彼の底知れない魅力でもあるのだ。
「ねえ。ひとつ聞いてもいいかな」
「はい」
「リュウくん」
俺は黒瀬さんの泣き笑いにも似た表情に惑わされながら、ぼんやりと考えた。
愛というのはとても恐ろしいものだ。
いくら願っても止まらないし、全力で押さえ込んでも簡単に溢れ出す。
「俺がさ、君のこと本当に好きだって言ったら、どうする?」
「……え?」
一瞬、言葉の意味が理解できなかった。なんとか状況を整理しようとする。
……おれを、好きだと…黒瀬さんが……?
動揺しなかったと言えば嘘になる。なんなら頰も少し紅くなっていたかもしれない。
しかし薄茶色の目をみれば、すぐに分かってしまった。
さっきまでの悲しい顔とは打って変わって、いつもの楽しそうな最低な笑みを浮かべている。
そう、これは愛の告白などではない。
この人は単に俺をからかいたくて、こんなふざけたことを言っているのだ。
一瞬でも思考をからめとられたことに腹が立つ。
なんだか無性に悔しくなって、俺は機嫌の悪さをむき出しにしたまま言い返した。
「そんなふざけたこと言えるうちは心配なんかしてあげませんよ」
「……冷たいなあ。傷ついたよ」
ヘラヘラと笑う顔は、ちっとも傷ついているようには見えない。
むかつく。今すぐ死んでほしい。
いつものようにそんなことを考えて、しかしすぐに思い直した。
……こうやって誰かを蔑んでいるほうが、まあ、この人らしい。
だって最低の人間なんだから。
俺は目を伏せた。
打ち明けられたあの日のことが、脳裏に蘇る。
『俺の愛は少しおかしいのかもしれない』
『本当は、好きな人がいるんだ』
クロセレイコ。
黒瀬さんの、実の妹。
……雨はまだまだ止みそうにない。
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