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しおりを挟む大好きで大好きでたまらない夏が終わってしまった。
まだ残暑、まだ残暑、と自分に言い聞かせていたものの、夜はもう今着ているみたいな肩出しのサマーニットでは肌寒い。とうとう秋になってしまった。明日くらいから、薄手の上着を持ち歩かないといけないな。
太陽も海もBBQも恋しくて、また一年待つのか~と憂鬱な気持ちに拍車がかかる。
まあでも、秋服かわいいのいっぱい出るし、ネイルのデザインも夏から気分変えられるし、違う楽しみを見つければいっか。
◆
羽田野シズカ、23歳。ネイルサロン勤務、駅から15分歩いたところにあるアパートでひとりぐらしをしている。早番ならだいたい19時半、遅番だと帰りは21時をすぎる。ちょうど今日が遅い日だ。
(さっさと帰ってカップラーメンでも食べて、お風呂入って寝ちゃお~)
そう思って自分の部屋がある階に到着した時、隣の部屋の前に男が立ってるのが見えた。それは紛れもなく、何度か見かけたことのあるお隣さんだった。
あいつメガネだし猫背だし暗いんだよな。こんな至近距離で挨拶したら変に好かれるかもしれないしなー、でも無視して逆上されてもなー、と直前まで迷って、まあ小声で言っとけばいっか、と思ってバッグから鍵を漁りながら視線を合わせずに「こんばんわー」と呟く。
あ、やばい、なんか近づいてきた。
そう思った次の瞬間、手首を掴まれていた。
「!?えっ、ちょっと何」
「ごめんなさい!!」
こいつこんな大きい声出せるんだ、と謎の方向にビックリしているうちに、気がつけばシズカは隣の家に連れ込まれてしまっていた。
最悪だ。変に好かれたくないなと思いながら仕方なく挨拶したのに、予感が的中してしまった。怖い。怖すぎる。
何が起きているのか理解する前に恐怖で足が震えた。一方で、隣の男は深く深く頭を下げた。
「あの、いきなり手首を掴んでしまって本当に申し訳ありませんでした。今からはもうあなたには指一本触れないし、怖い目には絶対に合わせないって約束するので、ど、どうか、朝になるまでここにいて、僕と会話してくれませんか」
頭の上をハテナがいくつも飛んだ。
「ん、んんーっ!?」
変な声まで出てしまった。
「ごめんなさいごめんなさい、言ってることに嘘はないです、絶対誓います」
「えっと……あなたは私をレイプするために連れ込んだんじゃないの?」
「まさか! そう思われても仕方がない状況ではあるけど……絶対そんなことしません。ていうか、自分でもなんでこんなことしちゃったのかわからないんです」
男はしおれたようになって謝り続ける。怖いけど、整頓されていていい香りがする玄関の雰囲気に、なんだか安心してきてもいた。友達にはそれでよく注意されるけれど、こんなに言うんだし少しくらい信用してもいいかな、などと思い始める。
「なぁんだ、よかったー。エッチされるだけならまだしも、殴られたり殺されたり怖いことされるのは絶対イヤだからさ。そういうつもりじゃないんだ。え、私、帰っちゃダメなの?」
畳み掛けるようにそう言うと、男は目を丸くしたあとで、しゅんとしてしまった。
「そりゃあ帰りたいですよね。ごめんなさい。でも……朝まで一緒にいてほしいんです」
メガネの奥の二つの目から涙がこぼれたのが見えて、シズカはだんだん哀れな気持ちになってきた。
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