桃太郎の真実

式羽 紺次郎

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第一章

老夫婦の真実

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どんぶらこ。どんぶらこ。川から大きな桃がながれて・・・
なんてことは実際はなかった。
じゃあ、おばあさんは川に洗濯に、おじいさんは山に芝刈りに。
なんてこともなかった。
真実はこうだ。
おばあさんとおじいさんは近所でも有名な変人夫婦だった。
ろくに働きもせず、家にはゴミが溢れており、近所の住民とは諍いが絶えなかったという。
そんな二人はある日、漁師の仕掛けた罠を漁ろうと入った川の淵で赤子を見つける。
「おじいさん。こんなところに赤子がいるよ。」
「本当だねぇ。誰が捨てたのかねぇ。」
普通の夫婦なら、ここで拾って育てるか役人にでも届け出るだろう。しかし、この二人は少し違った。
「おじいさん。この赤子拾おうよ。」
「おばあさん。気でも狂ったのかい。こんな餓鬼一文にもなりゃせんよ。」
「馬鹿だねぇ。今すぐには金にならなくてもいいのさ。この餓鬼を盗賊として育てるのよ。」
「この時分から盗賊としての心得を仕込んでおけば、さぞかし立派な悪党になるに違いないよ。」
「おばあさんは賢いねぇ。それは楽しそうだ。」
二人は気味の悪い笑顔を浮かべて、赤子を家に連れ帰った。
それから二人はその子供を育てたが、その子供に名を付けることはしなかった。
おい。とか餓鬼。とはただ飯食らい。と子供を呼んでいた。
しかし、二人は子供に盗賊に必要な知識を教え込むのだけは怠らなかった。
そんな子供を拾って3年になるある日、子供が初めて隣の家から物を盗んできた。
「おばあさん。見てごらんよ。この餓鬼、隣から桃を盗んできたよ。」
「本当だ。ようやくまともな仕事をしたねぇ。わたしは感動してきたよ。」
「わしもだよ。おばあさん。そうだ、褒美に此奴に名前をつけてやろうじゃないか。」
「それは名案だね。そうだねぇ・・・桃を盗んできたから"桃太郎"ってのはどうだろうね。」
「おばあさんは天才だねぇ。それしかないよ。」
その子供はそれから「桃太郎」と呼ばれるようになった。
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