翡翠の森

中嶋 まゆき

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宣言

15

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「ロイ」


外に出ると、ジェイダが弾かれたように走ってきた。

「お待たせ」

気を遣って、ずっとそこで待ってくれたのだろう。

「あの……」

指先が冷たい。
彼女はこの寒さに慣れてはいないのだ。
男の自分よりも、冷えが辛いのだと。

今更分かりきったことなのに、何故か切ない。
安心させたくて唇を寄せたのに、口づけてみて初めて気づく。

ロイの唇もまた、冷えていた。

「えっと……」

いつまで経っても離れない唇に、ジェイダは完全に固まっている。

「このくらい、慣れただろ」

笑ったつもりだったが、思いの外低い声が漏れてしまった。
案の定、ジェイダが挙動不審になる。

「え、その……慣れませんけど」

「そう? ……なら、早く慣れないとね」

冷たかった肌が、一気に熱を帯び始める。

(あたたかい)

手の甲を、指を。
啄む度に、彼女の体温が上昇する。
温めてあげるつもりが、こちらが温まりそうなくらい。

「平気、とは言わないけど。本当に大丈夫だよ」

心配してくれるのと同時に攻められて、どうやらついていけないらしい。

「無理してるんじゃなくて。いっそう意欲が沸いてきた」

ぽかんとしている彼女に笑うと、ロイは話を続けた。

ああして父を直視したのは、いつ以来だろうか。
今日が最後になることを、後悔していないとは言えないけれど。

「これからだ」

過去に戻ることはできないから。
父の望んだのもまた、平和な未来だったのなら。
道順や方法は違えど、辿り着くことはできるはずだ。

「……うん」

にこっと笑う恋人は愛しいが、せっかくの甘い雰囲気が消えてしまった。

(もうちょっと、味わいたかったのに)

まあ、次の機会でもいいかと、自分を納得させてみる。
自分を宥めるほかにないし、時間はたっぷりあるのだから。

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