【完結】人前で話せない陰キャな僕がVtuberを始めた結果、クラスにいる国民的美少女のアイドルにガチ恋されてた件

中島健一

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第36話 視線

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~織原朔真視点~

 学校の教室で僕は自分の席について、スマホをいじっていた。画面には僕が昨日呟いた言葉が映っている。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

○エドヴァルド・ブレイン/吸血鬼系Vチューバー

シロナガックスさん、薙鬼流ひなみさんとチームを組むことになりました!!今から楽しみで仕方がないです!

#田中カナタ杯 #アーペックス

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 リプ欄にはリスナーさん達からの応援や激励の言葉とシロナガックスさんからの返事を頂けた。それと、薙鬼流ひなみからも。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

○薙鬼流ひなみ★ブルーナイツ7期生

 エド先輩!どうぞ宜しくお願いします♡

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 この呟きによってリプ欄が焦げ臭くなった。

『知り合い?』
『炎上の兆しが……』
『頼むからエドヴァルドの足は引っ張るなよ』

 これから顔合わせ配信等をするにあたって、不安が過る。一度薙鬼流なきるひなみ、僕の学校の後輩でもある彼女とオフラインで話し合う必要がありそうだ。

 僕がそう意気込むと、隣の席に今しがた到着した音咲さんが話しかけてきた。

「ねぇ、なんか喋ってみて?」

 僕は慌ててスマホのホームボタンを押して、僕がエドヴァルドの証拠でもあるSNSを閉じた。そして、音咲さんにむかって首を傾げる。

「こ、声を出してみてって言ってんの!」

 いつもなら険しい顔で僕を睨むのだが、今日は柔和な表情にしようと努めているのが窺える。

 ──こ、声を……?

 僕は思った。

 ──バレたんじゃないか?

 簡単なことだ。この前、音咲さんに僕が先輩達に配信上で喋るような声で食って掛かった時のことを訊かれ、僕は苦し紛れに同じクラスの山城やましろ君がその現場にいたと指差してしまったのだ。おそらく昨日山城君本人から、あの場には織原つまり僕しかいなかったと言われたのだろう。いや僕が先輩達に物申していたのを山城君は目撃していたのかもしれない。

 それでも信じられない音咲さんは僕に声を出させてエドヴァルド本人であるか確認しようとしているのだ。

 僕は口をムズムズと動かし、わざとうわずった声で言う。

「ど、どうし──」

 その時、廊下を駆ける音が聞こえてきたかと思うと、僕の背中に衝撃が加わる。

「せんぱ~い♡」

 薙鬼流ひなみ──リアルの名前は鶴見慶子つるみけいこ──が僕に体当たりをしてきたのだ。

「おはようございます!同じチームになれましたね!!」

 話を中断された音咲さんは、いつもの険しい表情へと変化した。そして呟く。

「…チーム?」

 まずいと思った僕は立ち上がり、薙鬼流ひなみの腕を掴んで屋上へと走った。立ち上がった瞬間教室全体が見渡せた。皆僕に向かって好奇な視線を送っている。しかし音咲さんともう1人は不機嫌な表情で僕に視線を送っていた。そのもう1人とは一ノ瀬さんだった。

 僕はその視線達から逃げるようにして教室をあとにする。

 屋上に着いた僕は、連れてきた薙鬼流に言った。

「頼むから!!」

 晴れた青い空がよく見える屋上に僕の声が轟く。

「頼むから教室に来ないでくれ!!」

 僕の声に威圧されたのか、抱き付いてきたあの勢いはもう彼女にはなかった。薙鬼流ひなみは俯きながら力無げに呟く。心なしか彼女のつけている兎の耳のようなリボンカチューシャがしなびて見えた。

「…迷惑でしたか……?」

 彼女の残念がるたたずまいに僕の胸が締め付けられる。今の彼女の表情は満員電車で痴漢をされていた彼女に他ならない。

「…い、いや。迷惑というかそういうのじゃなくて──」

「迷惑じゃないんですね!先輩大好き!!」

 僕がボソボソと喋ると、彼女は暗い表情を明るく一変させて僕に詰め寄り、抱き付いてきた。

「待って!!話を聞けっての!!」 

 絡み付く彼女をなんとか引き剥がして、対話できる空間を整える。

「まず!教室で僕に抱き付くのはやめてくれ!!」

「教室じゃなかったら良いんですか?」

「違う違う!そうじゃない!!」

「鈴木○之ですか?」

「古いな!!そうじゃなくて!人前で抱き付くのは──」

「人前じゃなきゃ──」

 僕は片手を前にだして彼女を制する。

「とにかく!僕に抱き付くのは禁止だ!それに──」

「それにぃ?」

 首を傾げる薙鬼流ひなみ。トレードマークのリボンカチューシャも『?』マークに形を変えているように見える。

「それに今!僕は身バレしかけている!!」

「おお~!!」

 薙鬼流は感嘆の声と拍手を交えてリアクションした。

「拍手やめろ!!だから教室でV界隈の話をするのは止めてくれ!!」

「え~そんな簡単に身バレなんてしないですよ?皆スピーカーから聞こえる声と生声の区別できてないしぃ~」

「いや!僕の古参リスナーというか、ファンというか、そういうマニアが僕のクラスにいるんだ!」

「へぇ~ガチ恋勢とか?」

「ガチ恋かどうかわからないけど……」

「可愛いですか?その子」

「な!?」

 唐突な質問に僕は目を逸らしながら答える。

「そ、そんなことどうでもいいだろ……」

「あ~!可愛いんだ~!?その子は私よりも可愛いですか?」

 いつの間にか薙鬼流ひなみは眼前に迫り、上目遣いで僕に質問してくる。主導権を完全に握られた。

「だから関係ないだろ!!」

 暫く薙鬼流ひなみは僕を見つめてから言った。

「…先輩の隣の席にいた女の子!あの子でしょ!?」

「……」

 薙鬼流ひなみは僕から一歩後退して、ため息をつく。

「はぁ、確かにあの子は可愛いですね…アイドルにいてもおかしくないような……」

「え?知らないの?椎名町45」 

「椎名町45?名前だけは聞いたことありますけど」

「そのアイドルグループの現役のメンバーだよ」

「ええぇぇぇぇぇ!!!!?有名なんですかあの子!?」

「まぁめちゃくちゃ有名だけど…って!声でかいって!!」

 僕が叱責すると、屋上の出入口から1人の生徒が姿を現す。

「こ、こらぁぁ!!!屋上は立ち入り禁止ですよ!!」

 制服をきっちりと着こんだ女子生徒は左腕に生徒会と書かれた腕章をしている。その腕を伸ばして僕らを指差し、糾弾した。先程、怒ったような表情で僕を見ていた一ノ瀬さんだった。

「ヤバっ……」

「ぁ……」

 僕と薙鬼流ひなみはその場で硬直した。

 一ノ瀬さんは僕たちに告げる。

「ふ、2人とも!今日の放課後、生徒会室に来てください!!」
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