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第44話 足枷
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~音咲華多莉視点~
エドヴァルド様の配信時間までまだ少し時間があった。
私はベッドに横たわり、クッションを抱き天井を眺める。ぼ~っとしながら学校が終わった後に直行したダンスレッスンの疲れを癒した。
エドヴァルド様かもしれなかった織原朔真の疑いがほぼ晴れた。アイツは林間学校に参加するようだ。
私は班決めの際に余り者となった織原が手を挙げて、班を組むところを目撃した。疑いがほぼ晴れたのだ。というのはアイツが当日林間学校を休む可能性を考慮してのことだが、それも薄そうである。
これからエドヴァルド様の配信が始まる。織原の疑いも晴れたと言うのに私の心にはまだ霞がかっている。
あの光景が頭から離れない。
──あの喜ぶような顔……
◆ ◆ ◆ ◆
「音咲さんは何するかもう決まったの?」
「俺とサッカーやろうよ!」
「決まってなかったら一緒に……」
私を取り巻くように人垣ができた。日焼けしたくない私は、スポーツや野外での活動はなるべくしたくなかった。
私は適当に相槌を打って、美優と茉優に対応を任せた。
人垣の隙間から織原と生徒会で優等生の一ノ瀬さんが仲良く会話しているのが見えた。彼等の声は周囲の喧騒に溶けて聞こえなかったが、織原は顔を赤らめながら笑顔を一ノ瀬さんに向けていた。
◆ ◆ ◆ ◆
──私にはあんな顔みせたことないくせに!!
私は抱いていたクッションを強く締め付けてから、胡桃のお菓子を取り、かじりついた。アイドルとしての私ならきっと男子にあんな表情をさせることなど造作もないことだろう。しかし織原と今までコミュニケーションをとっていたのはただの音咲華多莉だ。生徒会の一ノ瀬さんに出来て私には出来ない。女としての敗北感からこのような気持ちになるのか。
──それとも……
はぁ、とため息をついた時、部屋にあった時計を見た。
「やばっ!!もう過ぎてる!!」
急いでスマホを操作して、エドヴァルド様の配信を見た。
──────────────────────────────────────────────────
~織原朔真視点~
敵と向き合う形での1v1で競り負けた僕に対して、シロナガックスさんはアドバイスをする。
『横移動している時の傾きが足りない気がしますね』
横移動しながら撃ち合うことで、敵が自分を狙いにくくする動き、通称レレレ撃ちはアーペックスにおいて非常に重要な動きだ。
シロナガックスさんのボイスチェンジャーを使用した独特な声が続ける。
『傾きが足りないせいで、敵が狙いやすくなってます。おそらくそちらのプレイ画面では持っているアサルトライフルが傾ききらない状態で身体を起こしている気がします』
〉ご名答
〉流石
〉そんなの気にしたことない
〉俺は知ってた
『素早く動くことで相手のエイムをズラしたい心理はわかりますが、そのせいで逆に狙いやすくなることって結構あるんですよ』
「なるほど、ちょっともう一回やってみてもいいですか?」
『良いですよ』
シロナガックスさん相手に1v1を始めた。僕は横移動しながら引き金を引く。そしていつもより傾きを意識して操作する。しかし、こんなにも悠長に傾いていて大丈夫なのか、僕の感覚が危険信号を送る。僕はその感覚に無意識に従って傾いた身体を起こす。しかし、シロナガックスさんは指摘する。
『もうちょっと、傾けてもいいと思います』
「マジですか!?これ以上傾けた方が危なくないっすか?」
『その気持ちはわかります。しかしやはり、他者から見れば当てやすいです。この感覚は非常に重要で、自分がそう思うからきっとそうだという推察は自身の成長を止める足枷になる可能性があります…ってすみません!偉そうに言っちゃって……』
「いえ、ありがとうございます!ちょっと練習してみますね」
僕はそう返事をしたものの、シロナガックスさん、いや一ノ瀬さんの言葉に面食らっていた。
──今のはゲームに限ったことだけではない
そう、人前で上手く声を出せない理由。きっとそれは他者のせいではなく僕の思い込みのせいなのだ。
そんな思い込みが、ゲームにも影響を及ぼしている。その思い込みが人生だけでなく娯楽にまで影響を及ぼしてる。そんなことはあってはならない。
僕は自分の思考を捨てて、思いっきり、半ば投げやりとなってキャラクター、ゼブラルターの身体を傾ける。
『そう!そのくらい傾けてから身体を起こしてください』
「こんなんで…これで良いんですか?」
シロナガックスさんは肯定してくれた。
『そこに今度はランダムでジャンプを加えればもっと弾に当たらなくなりますよ』
シロナガックスさんはそう促し、見本を見せてくれる。僕も彼女の動かすキャラクターと同じように、横移動からのジャンプをしながら引き金を引くが、狙っていたところに弾丸はかすりもしない。
「ムズっ!全く当たらん!!」
『これは反復練習が必要ですね。取り敢えず傾きを意識しながら次のゲームに行きましょうか?』
エドヴァルド様の配信時間までまだ少し時間があった。
私はベッドに横たわり、クッションを抱き天井を眺める。ぼ~っとしながら学校が終わった後に直行したダンスレッスンの疲れを癒した。
エドヴァルド様かもしれなかった織原朔真の疑いがほぼ晴れた。アイツは林間学校に参加するようだ。
私は班決めの際に余り者となった織原が手を挙げて、班を組むところを目撃した。疑いがほぼ晴れたのだ。というのはアイツが当日林間学校を休む可能性を考慮してのことだが、それも薄そうである。
これからエドヴァルド様の配信が始まる。織原の疑いも晴れたと言うのに私の心にはまだ霞がかっている。
あの光景が頭から離れない。
──あの喜ぶような顔……
◆ ◆ ◆ ◆
「音咲さんは何するかもう決まったの?」
「俺とサッカーやろうよ!」
「決まってなかったら一緒に……」
私を取り巻くように人垣ができた。日焼けしたくない私は、スポーツや野外での活動はなるべくしたくなかった。
私は適当に相槌を打って、美優と茉優に対応を任せた。
人垣の隙間から織原と生徒会で優等生の一ノ瀬さんが仲良く会話しているのが見えた。彼等の声は周囲の喧騒に溶けて聞こえなかったが、織原は顔を赤らめながら笑顔を一ノ瀬さんに向けていた。
◆ ◆ ◆ ◆
──私にはあんな顔みせたことないくせに!!
私は抱いていたクッションを強く締め付けてから、胡桃のお菓子を取り、かじりついた。アイドルとしての私ならきっと男子にあんな表情をさせることなど造作もないことだろう。しかし織原と今までコミュニケーションをとっていたのはただの音咲華多莉だ。生徒会の一ノ瀬さんに出来て私には出来ない。女としての敗北感からこのような気持ちになるのか。
──それとも……
はぁ、とため息をついた時、部屋にあった時計を見た。
「やばっ!!もう過ぎてる!!」
急いでスマホを操作して、エドヴァルド様の配信を見た。
──────────────────────────────────────────────────
~織原朔真視点~
敵と向き合う形での1v1で競り負けた僕に対して、シロナガックスさんはアドバイスをする。
『横移動している時の傾きが足りない気がしますね』
横移動しながら撃ち合うことで、敵が自分を狙いにくくする動き、通称レレレ撃ちはアーペックスにおいて非常に重要な動きだ。
シロナガックスさんのボイスチェンジャーを使用した独特な声が続ける。
『傾きが足りないせいで、敵が狙いやすくなってます。おそらくそちらのプレイ画面では持っているアサルトライフルが傾ききらない状態で身体を起こしている気がします』
〉ご名答
〉流石
〉そんなの気にしたことない
〉俺は知ってた
『素早く動くことで相手のエイムをズラしたい心理はわかりますが、そのせいで逆に狙いやすくなることって結構あるんですよ』
「なるほど、ちょっともう一回やってみてもいいですか?」
『良いですよ』
シロナガックスさん相手に1v1を始めた。僕は横移動しながら引き金を引く。そしていつもより傾きを意識して操作する。しかし、こんなにも悠長に傾いていて大丈夫なのか、僕の感覚が危険信号を送る。僕はその感覚に無意識に従って傾いた身体を起こす。しかし、シロナガックスさんは指摘する。
『もうちょっと、傾けてもいいと思います』
「マジですか!?これ以上傾けた方が危なくないっすか?」
『その気持ちはわかります。しかしやはり、他者から見れば当てやすいです。この感覚は非常に重要で、自分がそう思うからきっとそうだという推察は自身の成長を止める足枷になる可能性があります…ってすみません!偉そうに言っちゃって……』
「いえ、ありがとうございます!ちょっと練習してみますね」
僕はそう返事をしたものの、シロナガックスさん、いや一ノ瀬さんの言葉に面食らっていた。
──今のはゲームに限ったことだけではない
そう、人前で上手く声を出せない理由。きっとそれは他者のせいではなく僕の思い込みのせいなのだ。
そんな思い込みが、ゲームにも影響を及ぼしている。その思い込みが人生だけでなく娯楽にまで影響を及ぼしてる。そんなことはあってはならない。
僕は自分の思考を捨てて、思いっきり、半ば投げやりとなってキャラクター、ゼブラルターの身体を傾ける。
『そう!そのくらい傾けてから身体を起こしてください』
「こんなんで…これで良いんですか?」
シロナガックスさんは肯定してくれた。
『そこに今度はランダムでジャンプを加えればもっと弾に当たらなくなりますよ』
シロナガックスさんはそう促し、見本を見せてくれる。僕も彼女の動かすキャラクターと同じように、横移動からのジャンプをしながら引き金を引くが、狙っていたところに弾丸はかすりもしない。
「ムズっ!全く当たらん!!」
『これは反復練習が必要ですね。取り敢えず傾きを意識しながら次のゲームに行きましょうか?』
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