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第46話 大丈夫そ?
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~織原朔真視点~
僕は朝の生徒会室に約束の時間より少し遅れてやってきた。毎朝結束の為にもこの生徒会室で作戦会議というか、秘密の共有をしている。昨日の配信のことを僕は思い出していた。
──薙鬼流、引きずってなきゃ良いんだけど……
昨日の配信以降僕らは連絡をとりあっていない。あの日は何かお互い示しをつけたかのように配信後は別れの言葉以外は何も話さず、通話を切った。
年季の入った生徒会室の扉の前で僕は息を吐く。
仮にいつものように僕が生徒会室に訪れ、僕と一ノ瀬さんが先に2人で合流してしまうと、昨日の配信での薙鬼流のことについての作戦会議が行われていたのではないかと思われる可能性がある。気を遣われていると自覚してしまうのはどうしても居心地が悪くなるものだ。なのでわざと時間をずらして僕は生徒会室に入る。
ドアノブがいつもより重い気がした。僕は体重をかけて一気に生徒会室を開けると、中から薙鬼流の元気な声が聞こえた。
「せんぱ~い!!おはようございます!!」
そう言って彼女は僕に抱き付いてきた。
「ぅっ!!」
僕の胸部に顔をすり付けてくる。彼女のトレードマークであるリボンカチューシャの尖端が僕の顎をくすぐる。
僕は彼女の首に手を当てて引き離す。それでも尚、彼女は僕に向かって前進してくるので僕の手に彼女の首が食い込む。
僕は昨日の暗い雰囲気の彼女を予想していた為、少々面食らった。そして薙鬼流ひなみと先に生徒会室にいたシロナガックスさんこと一ノ瀬さんが僕に向かって挨拶をした。彼女もどこか戸惑っている雰囲気だった。
「はぁ♡はぁ♡はぁ♡」
艶かしい息遣いが聞こえる。彼女の首を抑えている僕の手に、彼女が息遣いをする度に生々しい振動を感じさせた。
──首を絞めてないのに自ら絞められにくるなんて……
僕は彼女の首から手を離した。そして彼女はその場にへたり込み何かに悶えているようにして全身を震わせている。
──元気なのか?
昨日の配信を引きずっていないのならそれで良い。これが彼女の強さなのかもしれない。
「先輩、もう一回……」
「するか!!」
僕はドサリと音を立てて革張りのソファに座った。
──昨日の配信を気にしていないなら、敢えて話題にだす必要はないか……
僕はそう判断して、一ノ瀬さんのノートPCを使わせて貰い、レレレ撃ちの指導を直接してもらった。その時も薙鬼流ひなみは興味有り気に僕の後ろから画面を覗き込んでいる。
チャイムが鳴り、生徒会室を退出した彼女の後ろ姿を僕と一ノ瀬さんは黙ったまま見送った。
授業が始まり、音咲さんからの追及もない。
休み時間の時も薙鬼流は僕に会いに来て、人気のない屋上で話をした。彼女は元気だった。それを元気と表現してよいのかよくわからない。どこか痛々しい程に元気だった。
まるで配信の時のように僕に話をふってくる。僕は適当に彼女の話に合わせた。
「──それでぇ、この前買ったグラボがぁ……」
フッと言葉が降りてくることがある。配信中も脳をフルに回転させながら気の効いた言葉をチョイスできるように身構えている。しかし今回は、彼女──薙鬼流ひなみ──の顔を見て思った言葉だ。それが口からついて出た。
「…大丈夫?」
マシンガンの如く喋り続けていた彼女が止まった。急に止まった為に、時間そのものが止まったのではないかと錯覚するほどだった。彼女の反応にも驚いたが、僕は自分自身にも驚いていた。
──他人の視線によって目の前が真っ白になってしまう僕が、他人の表情をよく観察するなんて……
暫しの静寂が僕らを包み、軈てチャイムが鳴った。その鐘の音によって僕らは生命活動を許可されたかのように動き出す。
初めに動いたのは薙鬼流ひなみの方だった。
「あっ!私もう行かないと!!」
遅れて僕が一歩前へ踏み出す。
「ちょっ!」
しかし彼女はもう自分の教室へと去って行ってしまった。彼女の後を追うつもりだったが、僕は彼女になんて声をかけていいかわからなかった。僕は一歩踏み出したまま暫くその場を動けなかった。まるで誰かの視線を浴びて凝り固まってしまった僕の声帯のように。
その後の休み時間は一ノ瀬さんがやって来た。音咲さんに話し掛けられないようにする為に僕をガードしてくれる。しかしあれだけ自分がその役を担うんだと頑なだった薙鬼流が一ノ瀬さんにその役を代わってほしいとラミンを送ってきたらしい。それだけ先程のやり取りに問題があったのだろうか。
学校も終わって大会に向けての練習配信をしてもいつも通りの彼女がそこにいた。昨日の立ち回りについての指摘を気にしてか、彼女は無敵になるアビリティを使う頻度が減少した。というよりもあまり前線を張らずに被弾を少なくしていると言った方が的確だろう。被弾をすればそのアビリティを使う癖はやはり抜けきれてない印象だ。
何か違和感を抱きながらも、数日こんな感じで練習配信を行った。特に昨日のような出来事になるわけでもなくそれなりの撮れ高だったり、シロナガックスさんは相変わらずスーパープレイをしたり、僕も勝利に貢献できたり、薙鬼流は彼女の実力の中で当たり障りないプレイをしている。
これらのことを鑑みても僕らは大会で上位を狙うことができるのではないかと期待値があがる。それは僕のリスナーさんの反応を見てもわかるぐらいだ。
そして大会当日、林間学校の日となった。
僕は朝の生徒会室に約束の時間より少し遅れてやってきた。毎朝結束の為にもこの生徒会室で作戦会議というか、秘密の共有をしている。昨日の配信のことを僕は思い出していた。
──薙鬼流、引きずってなきゃ良いんだけど……
昨日の配信以降僕らは連絡をとりあっていない。あの日は何かお互い示しをつけたかのように配信後は別れの言葉以外は何も話さず、通話を切った。
年季の入った生徒会室の扉の前で僕は息を吐く。
仮にいつものように僕が生徒会室に訪れ、僕と一ノ瀬さんが先に2人で合流してしまうと、昨日の配信での薙鬼流のことについての作戦会議が行われていたのではないかと思われる可能性がある。気を遣われていると自覚してしまうのはどうしても居心地が悪くなるものだ。なのでわざと時間をずらして僕は生徒会室に入る。
ドアノブがいつもより重い気がした。僕は体重をかけて一気に生徒会室を開けると、中から薙鬼流の元気な声が聞こえた。
「せんぱ~い!!おはようございます!!」
そう言って彼女は僕に抱き付いてきた。
「ぅっ!!」
僕の胸部に顔をすり付けてくる。彼女のトレードマークであるリボンカチューシャの尖端が僕の顎をくすぐる。
僕は彼女の首に手を当てて引き離す。それでも尚、彼女は僕に向かって前進してくるので僕の手に彼女の首が食い込む。
僕は昨日の暗い雰囲気の彼女を予想していた為、少々面食らった。そして薙鬼流ひなみと先に生徒会室にいたシロナガックスさんこと一ノ瀬さんが僕に向かって挨拶をした。彼女もどこか戸惑っている雰囲気だった。
「はぁ♡はぁ♡はぁ♡」
艶かしい息遣いが聞こえる。彼女の首を抑えている僕の手に、彼女が息遣いをする度に生々しい振動を感じさせた。
──首を絞めてないのに自ら絞められにくるなんて……
僕は彼女の首から手を離した。そして彼女はその場にへたり込み何かに悶えているようにして全身を震わせている。
──元気なのか?
昨日の配信を引きずっていないのならそれで良い。これが彼女の強さなのかもしれない。
「先輩、もう一回……」
「するか!!」
僕はドサリと音を立てて革張りのソファに座った。
──昨日の配信を気にしていないなら、敢えて話題にだす必要はないか……
僕はそう判断して、一ノ瀬さんのノートPCを使わせて貰い、レレレ撃ちの指導を直接してもらった。その時も薙鬼流ひなみは興味有り気に僕の後ろから画面を覗き込んでいる。
チャイムが鳴り、生徒会室を退出した彼女の後ろ姿を僕と一ノ瀬さんは黙ったまま見送った。
授業が始まり、音咲さんからの追及もない。
休み時間の時も薙鬼流は僕に会いに来て、人気のない屋上で話をした。彼女は元気だった。それを元気と表現してよいのかよくわからない。どこか痛々しい程に元気だった。
まるで配信の時のように僕に話をふってくる。僕は適当に彼女の話に合わせた。
「──それでぇ、この前買ったグラボがぁ……」
フッと言葉が降りてくることがある。配信中も脳をフルに回転させながら気の効いた言葉をチョイスできるように身構えている。しかし今回は、彼女──薙鬼流ひなみ──の顔を見て思った言葉だ。それが口からついて出た。
「…大丈夫?」
マシンガンの如く喋り続けていた彼女が止まった。急に止まった為に、時間そのものが止まったのではないかと錯覚するほどだった。彼女の反応にも驚いたが、僕は自分自身にも驚いていた。
──他人の視線によって目の前が真っ白になってしまう僕が、他人の表情をよく観察するなんて……
暫しの静寂が僕らを包み、軈てチャイムが鳴った。その鐘の音によって僕らは生命活動を許可されたかのように動き出す。
初めに動いたのは薙鬼流ひなみの方だった。
「あっ!私もう行かないと!!」
遅れて僕が一歩前へ踏み出す。
「ちょっ!」
しかし彼女はもう自分の教室へと去って行ってしまった。彼女の後を追うつもりだったが、僕は彼女になんて声をかけていいかわからなかった。僕は一歩踏み出したまま暫くその場を動けなかった。まるで誰かの視線を浴びて凝り固まってしまった僕の声帯のように。
その後の休み時間は一ノ瀬さんがやって来た。音咲さんに話し掛けられないようにする為に僕をガードしてくれる。しかしあれだけ自分がその役を担うんだと頑なだった薙鬼流が一ノ瀬さんにその役を代わってほしいとラミンを送ってきたらしい。それだけ先程のやり取りに問題があったのだろうか。
学校も終わって大会に向けての練習配信をしてもいつも通りの彼女がそこにいた。昨日の立ち回りについての指摘を気にしてか、彼女は無敵になるアビリティを使う頻度が減少した。というよりもあまり前線を張らずに被弾を少なくしていると言った方が的確だろう。被弾をすればそのアビリティを使う癖はやはり抜けきれてない印象だ。
何か違和感を抱きながらも、数日こんな感じで練習配信を行った。特に昨日のような出来事になるわけでもなくそれなりの撮れ高だったり、シロナガックスさんは相変わらずスーパープレイをしたり、僕も勝利に貢献できたり、薙鬼流は彼女の実力の中で当たり障りないプレイをしている。
これらのことを鑑みても僕らは大会で上位を狙うことができるのではないかと期待値があがる。それは僕のリスナーさんの反応を見てもわかるぐらいだ。
そして大会当日、林間学校の日となった。
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