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第65話 罪深き
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~ぼっち組・渡辺視点~
『セカンドゲーム、1位を勝ち獲ったのはチーム、罪深き民です!!え~それでは罪深き民の皆さんにインタビューをしたいと思います。あ~、もしもし?聞こえてますでしょうか?』
主催の田中カナタがセカンドゲームの覇者に問い掛ける。
『は~い!!』
『はい』
『はい……』
低い声と高い声が入り交じる返事が聞こえた。合図なしに揃って声を出しているということは、やはりチームワークの善さによるものなのだろうか。
『改めまして、セカンドゲーム1位を獲ったチーム罪深き民の皆さん、おめでとうございます!!』
『ありがとうございま~す!!』
『ありがとうございます!』
『ありがとうございます』
また揃って感謝の言葉が述べられた。
『え~本当は1人1人にインタビューをしたいのですが、時間の都合上、代表者のみにインタビューをしたいと思います。それでは、チームリーダーの積飛獏さんにおうかがいします。最後の全員捨て身での突撃がとても印象的でした。あれはどういった経緯で実行されたのでしょうか?』
『あ~あれは、賭けです』
低い声が答えた。男性は続ける。
『フルパで残ってるのが俺達含めて確か2チームだったので、撃ち合いの最中、キルログを見ながら残り7人になった瞬間、突撃しました。1人の人が粘って2位のチームを削ってくれなければ無理でしたね』
〉誰これ?
〉いつもの獏じゃない
〉獏が敬語?
『え~敬語を使う獏さんに対してコメント欄が少しざわついておりますが……』
『は!?敬語くらい使うだろ!!……ぁ、いや!これは田中さんや武藤さんに言ったんじゃなくてコメント欄のクソ視聴者に言っていて……』
『……え~話を戻しますと、お得意のギャンブルをしてそれに勝ったということですね!』
『そうではあるんですが、勿論それだけではなくてチームメイトとの連携やサポートがなければギャンブルするまでもいけなかったと思います』
その言葉に涙ぐむ同じチームメイトである女性Vチューバーの島津葵の声が入った。
『獏さぁん……』
スンスンと鼻をすするような音が背景に聞こえる。
『お応え頂き、ありがとうございます!!それではラストゲームの意気込みをどうぞ!!』
『この調子で優勝狙います!』
『獲っちゃうぞぉ~~!!』
『頑張る』
セカンドゲーム1位の3人とのボイスチャットが切れ、主催の田中カナタと解説の武藤によるポイントの整理が行われた。
『現在の順位はこうなっております』
1位 ラストエンペラー 27ポイント
2位 バーチャル動物園 24ポイント
3位 罪深き民 23ポイント
4位 プラハを着た天使たち 21ポイント
5位 キアロスクーロ 20ポイント
6位 ビリミリ 18ポイント
『まだまだどのチームも1位を狙えるポイントになっていますね』
『はい!全てはこのラストゲームで決まります!!』
──────────────────────────────────────────────────
~薙鬼流ひなみ視点~
「すみません。すみません私のせいです……」
セカンドゲームを終え、待機中の画面で何度このセリフを言っただろうか。次はちゃんとやる。そう思っているのだが、また同じ場面になったら動けるかどうか自信がない。自分でも何故、動けなくなるのかわからない。練習配信でも重要な場面で被弾をすると、反射的にルーのアビリティ、空虚を使ってしまう。そしてまるで鎖に縛り付けられているかのように動けず、その場で震えていることしかできない。その鎖は私の喉にまで巻き付き、助けを呼ぶ声すらもあげられない始末だ。私の心は空虚そのものだった。
私はかつてない自分の身体上の異常事態に恐怖を感じる。しかし私のことはどうでもいいのだ。同じチームメイトのエド先輩とシロさんに迷惑が掛かる方が何倍も苦しかった。
今日で最後なんだ。
私はVチューバーを卒業する。薙鬼流ひなみを卒業すればこのゲームもすることはなくなるだろう。だからせめてこのラストゲームだけはさっきのような発作が起きないでほしい。その後はいくらでも起きていいから。
「すみません……」
エド先輩とシロさんが黙る度に、私はその沈黙を埋めるようにして謝罪を口にする。
『いや全然大丈夫です。むしろ謝らないでください。薙鬼流さんのワープゲートのお陰で私達は3位を獲れました。そうですよねエドヴァルドさん?』
『……そうそう!』
少しの間が空いてエド先輩の返事が聞こえた。私は画面外から目をそらし、横を向く。部屋の一番奥、壁に向かってPCとにらめっこをしているエド先輩の背中が見えた。エド先輩は今、何を考えているのだろうか。きっと私のことを使えない奴だと思っているに違いない。
そう思うと一瞬、私の身体が思うように動かなくなった。心と身体がバラバラになったみたいに。
──もしかして……
私は目線を画面に戻して、大きく深呼吸をする。そして確かめるようにしてマウスを動かすが、とあることを思うと一瞬身体が硬直したのがわかった。
発作の原因がなんとなく理解できた。それは誰かに今、悪口を言われているだろうなと思った時だ。
エド先輩やシロさんに幻滅された時、現在配信中のコメント欄が私の悪口で埋まっているだろうと思った時、発作は起きる。
私は思い出した。初めて発作が起きた時のことを、あれは私が中学生でダンススクールに通っていた時のことだ。私が後輩ながらセンターで踊ることが決まった時、ロッカールームで先輩達が私の悪口を言っていたのを聞いてしまった。
キモいとか、ダンス下手だとか、そんなことを言われていた。それだけでなくダンススクールの先生が実力ではなく顔で私をセンターに起用したという言葉がどうにも引っ掛かった。ただの噂でデマなんだと信じたかった。だけどその言葉は確実に私を傷付けていた。
あんなに努力して練習しても顔が良いから選ばれたなんて思われたくなかった。そんな雑念が入り交じる中、本番で私は失敗してしまった。ほんの些細なミスは誰にでもある。気にせず踊ろうとしたその時、先輩達の声が、悪口が脳裡に過った。すると私は動けなくなってしまった。
私は陰口に追われながらダンスから逃げた。
それからかな、何をしても慶子は顔が良いから、可愛いから男の子にモテる、先生に気に入られる。私が努力をしても全て顔のおかげだと言われる始め、顔が良いから性格がブスだと陰口を叩かれるようになった。そんな時、Vチューバーと出会った。容姿に関係なく、私を出せる。別人になって本当の私を見て貰える。
Vチューバーを始めて、画面に写る全てが煌めいて見えた。本当の私を見てくれる。配信をするのが生き甲斐となっていた。
だけど、その本当の私が炎上の原因を作ってしまった。今度は薙鬼流ひなみになる前に炎上した時のことを思い出した。
有名なゲームの実況配信で、その作品を貶おとしめるような数々の発言。そんな意思はなかったが、100%そうでないと言い切れない自分がいる。もしかしたら10%くらいは作品を貶して盛り上げようとしていたのかもしれない。
──性格ブス、顔だけ、正にその通りだった……
そんな配信から脅迫紛い、私の人格を否定するような文章が頻繁にコメント欄やSNSでのDM等に送られるようになった。私は深く傷付き、今度はVチューバーから逃げ出した。
現実の生活は今まで通り普通に送れた。学校の友達とも普通に接して、遊んだり、会話をしたりできた。
そうこうしている内に私は炎上から立ち直った。そう思っていた。だから再びVチューバーになろうとした。今度は個人ではなく大きな事務所に入って、炎上しないように、或いは炎上から守ってもらう為に対策を講じたのだ。
しかし私は立ち直ってなどいなかった。
『薙鬼流さん…薙鬼流さん!』
私の名前を呼ぶ声が聞こえる。気付けば、既に全てが決まるラストゲームが始まっていた。
私は我に返り、返事をした。ラストゲームの入りは最悪だ。こんなんで良いプレイができるわけがない。
その時またしても、身体が硬直するのを感じる。
──ダメダメ!!このゲームは……この最後のゲームだけはどうか、動いて……
『セカンドゲーム、1位を勝ち獲ったのはチーム、罪深き民です!!え~それでは罪深き民の皆さんにインタビューをしたいと思います。あ~、もしもし?聞こえてますでしょうか?』
主催の田中カナタがセカンドゲームの覇者に問い掛ける。
『は~い!!』
『はい』
『はい……』
低い声と高い声が入り交じる返事が聞こえた。合図なしに揃って声を出しているということは、やはりチームワークの善さによるものなのだろうか。
『改めまして、セカンドゲーム1位を獲ったチーム罪深き民の皆さん、おめでとうございます!!』
『ありがとうございま~す!!』
『ありがとうございます!』
『ありがとうございます』
また揃って感謝の言葉が述べられた。
『え~本当は1人1人にインタビューをしたいのですが、時間の都合上、代表者のみにインタビューをしたいと思います。それでは、チームリーダーの積飛獏さんにおうかがいします。最後の全員捨て身での突撃がとても印象的でした。あれはどういった経緯で実行されたのでしょうか?』
『あ~あれは、賭けです』
低い声が答えた。男性は続ける。
『フルパで残ってるのが俺達含めて確か2チームだったので、撃ち合いの最中、キルログを見ながら残り7人になった瞬間、突撃しました。1人の人が粘って2位のチームを削ってくれなければ無理でしたね』
〉誰これ?
〉いつもの獏じゃない
〉獏が敬語?
『え~敬語を使う獏さんに対してコメント欄が少しざわついておりますが……』
『は!?敬語くらい使うだろ!!……ぁ、いや!これは田中さんや武藤さんに言ったんじゃなくてコメント欄のクソ視聴者に言っていて……』
『……え~話を戻しますと、お得意のギャンブルをしてそれに勝ったということですね!』
『そうではあるんですが、勿論それだけではなくてチームメイトとの連携やサポートがなければギャンブルするまでもいけなかったと思います』
その言葉に涙ぐむ同じチームメイトである女性Vチューバーの島津葵の声が入った。
『獏さぁん……』
スンスンと鼻をすするような音が背景に聞こえる。
『お応え頂き、ありがとうございます!!それではラストゲームの意気込みをどうぞ!!』
『この調子で優勝狙います!』
『獲っちゃうぞぉ~~!!』
『頑張る』
セカンドゲーム1位の3人とのボイスチャットが切れ、主催の田中カナタと解説の武藤によるポイントの整理が行われた。
『現在の順位はこうなっております』
1位 ラストエンペラー 27ポイント
2位 バーチャル動物園 24ポイント
3位 罪深き民 23ポイント
4位 プラハを着た天使たち 21ポイント
5位 キアロスクーロ 20ポイント
6位 ビリミリ 18ポイント
『まだまだどのチームも1位を狙えるポイントになっていますね』
『はい!全てはこのラストゲームで決まります!!』
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~薙鬼流ひなみ視点~
「すみません。すみません私のせいです……」
セカンドゲームを終え、待機中の画面で何度このセリフを言っただろうか。次はちゃんとやる。そう思っているのだが、また同じ場面になったら動けるかどうか自信がない。自分でも何故、動けなくなるのかわからない。練習配信でも重要な場面で被弾をすると、反射的にルーのアビリティ、空虚を使ってしまう。そしてまるで鎖に縛り付けられているかのように動けず、その場で震えていることしかできない。その鎖は私の喉にまで巻き付き、助けを呼ぶ声すらもあげられない始末だ。私の心は空虚そのものだった。
私はかつてない自分の身体上の異常事態に恐怖を感じる。しかし私のことはどうでもいいのだ。同じチームメイトのエド先輩とシロさんに迷惑が掛かる方が何倍も苦しかった。
今日で最後なんだ。
私はVチューバーを卒業する。薙鬼流ひなみを卒業すればこのゲームもすることはなくなるだろう。だからせめてこのラストゲームだけはさっきのような発作が起きないでほしい。その後はいくらでも起きていいから。
「すみません……」
エド先輩とシロさんが黙る度に、私はその沈黙を埋めるようにして謝罪を口にする。
『いや全然大丈夫です。むしろ謝らないでください。薙鬼流さんのワープゲートのお陰で私達は3位を獲れました。そうですよねエドヴァルドさん?』
『……そうそう!』
少しの間が空いてエド先輩の返事が聞こえた。私は画面外から目をそらし、横を向く。部屋の一番奥、壁に向かってPCとにらめっこをしているエド先輩の背中が見えた。エド先輩は今、何を考えているのだろうか。きっと私のことを使えない奴だと思っているに違いない。
そう思うと一瞬、私の身体が思うように動かなくなった。心と身体がバラバラになったみたいに。
──もしかして……
私は目線を画面に戻して、大きく深呼吸をする。そして確かめるようにしてマウスを動かすが、とあることを思うと一瞬身体が硬直したのがわかった。
発作の原因がなんとなく理解できた。それは誰かに今、悪口を言われているだろうなと思った時だ。
エド先輩やシロさんに幻滅された時、現在配信中のコメント欄が私の悪口で埋まっているだろうと思った時、発作は起きる。
私は思い出した。初めて発作が起きた時のことを、あれは私が中学生でダンススクールに通っていた時のことだ。私が後輩ながらセンターで踊ることが決まった時、ロッカールームで先輩達が私の悪口を言っていたのを聞いてしまった。
キモいとか、ダンス下手だとか、そんなことを言われていた。それだけでなくダンススクールの先生が実力ではなく顔で私をセンターに起用したという言葉がどうにも引っ掛かった。ただの噂でデマなんだと信じたかった。だけどその言葉は確実に私を傷付けていた。
あんなに努力して練習しても顔が良いから選ばれたなんて思われたくなかった。そんな雑念が入り交じる中、本番で私は失敗してしまった。ほんの些細なミスは誰にでもある。気にせず踊ろうとしたその時、先輩達の声が、悪口が脳裡に過った。すると私は動けなくなってしまった。
私は陰口に追われながらダンスから逃げた。
それからかな、何をしても慶子は顔が良いから、可愛いから男の子にモテる、先生に気に入られる。私が努力をしても全て顔のおかげだと言われる始め、顔が良いから性格がブスだと陰口を叩かれるようになった。そんな時、Vチューバーと出会った。容姿に関係なく、私を出せる。別人になって本当の私を見て貰える。
Vチューバーを始めて、画面に写る全てが煌めいて見えた。本当の私を見てくれる。配信をするのが生き甲斐となっていた。
だけど、その本当の私が炎上の原因を作ってしまった。今度は薙鬼流ひなみになる前に炎上した時のことを思い出した。
有名なゲームの実況配信で、その作品を貶おとしめるような数々の発言。そんな意思はなかったが、100%そうでないと言い切れない自分がいる。もしかしたら10%くらいは作品を貶して盛り上げようとしていたのかもしれない。
──性格ブス、顔だけ、正にその通りだった……
そんな配信から脅迫紛い、私の人格を否定するような文章が頻繁にコメント欄やSNSでのDM等に送られるようになった。私は深く傷付き、今度はVチューバーから逃げ出した。
現実の生活は今まで通り普通に送れた。学校の友達とも普通に接して、遊んだり、会話をしたりできた。
そうこうしている内に私は炎上から立ち直った。そう思っていた。だから再びVチューバーになろうとした。今度は個人ではなく大きな事務所に入って、炎上しないように、或いは炎上から守ってもらう為に対策を講じたのだ。
しかし私は立ち直ってなどいなかった。
『薙鬼流さん…薙鬼流さん!』
私の名前を呼ぶ声が聞こえる。気付けば、既に全てが決まるラストゲームが始まっていた。
私は我に返り、返事をした。ラストゲームの入りは最悪だ。こんなんで良いプレイができるわけがない。
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