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第77話 ベッドメイキング
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~ぼっち組・渡辺視点~
『え~2位のラストエンペラーの皆さんでしたぁ~!!』
田中カナタの声を僕と森氏は聞いていた。
『あんなにテンションの高い新界さん見たことないですよ』
武藤さんが言った。確かに僕もそう思う。
『楽しんでもらえてよかったですよぉ♪︎それでは第3位のプラハを着た天使たちの皆さん、聞こえてますでしょうかぁ?』
『あいあい』
『聞えてんぞぉ~』
『聞こえてまぁす』
同じ部屋の森氏が叫ぶ。
「エミール!!俺の嫁!!」
自分の推しのいるチームが3位となったのだ。このくらい喜んでも良いのではないかと、その声に驚いた僕は自分を納得させた。
『3位になられましたがどうでしょうか?ん~まずはルブタンさんから聞こうかな』
『あ~い。もうほんっとにねぇ、シロナガックスにしてやられました。まぁ~た俺が殺られてる映像使われるって思うと最っ悪っすね』
『あれは凄かったですねぇ』
その時、僕らの部屋に織原朔真が入ってきた。来て早々自分のベッドに倒れ込む。うつ伏せから仰向けへと向き直る。
何かを考えているのだろうか?
彼の顔を自分のベッドから首を伸ばして見ると、目を閉じてもう眠っていた。
──一体何をしていたんだろう……
僕はそう思ったが、配信に気を戻した。インタビューも終わり、大会の総括に入った田中カナタ。
──この楽しいお祭りも終わってしまう。
僕がそう思ったその時に、ノックが聞こえる。
「ん!?」
僕は森氏に顔を向けた。森氏もノックに気が付いたようで僕を見る。
「先生が見回りに来た?」
「それだったらノックはしないでござろう?」
そうだ。抜き打ちで来たのならノックはしない。僕ら2人は起き上がり、扉を開けた。そこには黒髪のギャル、小坂茉優が立っていた。
「えっ!?」
「なっ!?」
僕と森氏は驚く。
──お、お、女の子!?しかも小坂茉優!!?かたりんのマネージャー的立ち位置のカースト上位女子が何故ここに!?
驚いた僕らに小坂茉優は告げる。
「織原君いるぅ?」
──────────────────────────────────────────────────
~織原朔真視点~
どうして僕はこんなことをしているのだろうか。
シーツをマットレスに皺なく敷いてから、デュベカバーをバサリと何度か中空に波打たせるように広げて、中に空気を入れてから羽毛インナーを入れる。シーツを敷いたマットレスに足下を巻き込むように、羽毛インナーを入れたデュベカバーを入れ込んでメイキング完了だ。
それをあと2人分やる。僕は目を擦った。田中カナタ杯の激戦を制した身としては早く身体を休めたかった。
そんな眠気マックスの僕を呼び出した小坂さんは拍手を送りながら称賛の声をあげる。
「すごいすごい!」
対照的に昼間言い合いとなった松本美優さんは僕から視線を逸らし不服そうにしていた。そして僕を呼び出そうと提案した張本人の音咲さんはなんだか恥ずかしそうにしていた。
小坂さんが言う。
「織原って華多莉のホテルで働いてたんだね」
音咲さんが応える。
「…ぅ、うん……」
小坂さんは続ける。
「じゃあ華多莉の部屋も織原が掃除してたり?」
「うっ!!?」
「あっ!!?」
僕と音咲さんは反応してしまった。すると小坂さんは意地の悪そうな顔をして言った。
「へぇ~、華多莉の部屋汚かったでしょ?」
ベッドメイキングしている僕に近付いて訊いてきた。僕は控え目に首を縦に振る。それを見た音咲さんは赤面させながら、ぅ~と唸っていた。僕にベッドメイキングをして貰っているだけに文句が言えなかったようだ。
「でもこれで最近、華多莉が織原に対しての態度が変だったって納得いったよね?美優?」
そう問い掛けられた松本美優さんは腕組みしながら、納得がいってない感じで鼻を鳴らした。
僕が最後のベッドメイキングを終えると音咲さんは僕に近付き、いつも食べてるクルミのお菓子を僕に渡して、お礼を言ってきた。
「あ、ありがとう……」
それを受け取って僕は頷くと、部屋のドアノブに手が掛かる音が聞こえた。僕らは咄嗟に見回りの先生が来たんだと悟る。
小坂さんが一瞬で電気を消して、それぞれ近くのベッドに潜り込む。
僕はというと……
音咲さんと同じベッドに潜り込んでしまった。
──────────────────────────────────────────────────
~音咲華多莉視点~
皺1つない綺麗なベッドを早速しわくちゃにしてベッドに潜り込んだ。織原と一緒に。
狭い空間。お互いの吐く熱い吐息がこの空間を更に熱く満たす。
今まで2回も身体を寄せ合ってきたが、これ程密着したことはない。今度の3回目は私が上に乗る形で密着している。1回目のトラックに轢かれそうになった時と同じ構図だ。しかし今回は同じベッドの中という特殊な状況。しかも見回りの先生にバレないよう、ベッドの中には一人しかいないことを演出しなければならない。その為私は織原のことをきつく抱き締めた。
先生が入室して来た。私達が寝ているかを確認すると、部屋の端に丸めてあった鱗粉で汚れたシーツを回収する。ただそれを回収するだけなら私達は寝たふりなんかせずに普通にやり取りをすれば良かったのだが、男子生徒である織原がいるおかげでややこしいことになってしまった。
まるでホラーゲームをしているような感覚である。敵の悪霊やらゾンビやらにバレないように隠れてやり過ごす。
先生の足音が不気味に響いた。私はその恐怖により身体が固くなるのを感じた。固くなるということは織原を更に強く抱き締めたということだ。私の胸の鼓動が彼に伝わる程に。
織原は今、どんな気持ちなのだろうか。
助けた筈なのにビンタをしてきた横暴な女に、謝ることも感謝することも素直にできない女に、シーツもまともに敷けない汚い部屋の女にこんなことをされて嫌に思うかもしれない。
──で、でもアイドルの私にこんなことをされて嬉しかったり……
そうも思ったが、今まで織原に対してはアイドルのかたりんとして接していない。私は不安になる。
今彼はどんな表情をしているのだろう。
不安になった私はすぐ近くにある彼の顔を首をモゾモゾと動かして覗き込んだ。
寝ていた。
もう一度言う。織原は寝ていた。
私がこんなにも恥ずかしく、こんなにも胸をドキドキとさせ、こんなにも嫌じゃないかとか織原のことを考えていたのに、コイツは寝ていたのだ。
私のドキドキが一気に冷めると同時に、羽毛布団が勢いよく捲られる。
捲ったのは美優だ。
「いつまでそこにいるんだ!!」
とっくに先生はいなくなっており、私と織原がいつまでたってもベッドから出てこないために、美優がやってきたのだ。
明るくなった部屋に目をしかめて、私は起き上がると、眠っている織原を見下ろした。
腹もたったし安心もした。いや、やっぱり腹が立つ。
──3回も抱き合ったっていうのに私のことなんとも思ってないってこと!?
私の怒りを美優が体現してくれた。
織原を乱暴に起こしたのだ。
「起きろコラ!!さっさと帰れ!!」
寝起きの織原は、そのままいつものように黙って部屋を出ていった。
私は、織原の形と体温が残ったベッドを見下ろす。そしてそれに重なるようにして横になった。エドヴァルド様の優勝や先程ベッドで織原と抱き合ったこと等色々と考えてしまい、この日はなかなか眠れなかった。
『え~2位のラストエンペラーの皆さんでしたぁ~!!』
田中カナタの声を僕と森氏は聞いていた。
『あんなにテンションの高い新界さん見たことないですよ』
武藤さんが言った。確かに僕もそう思う。
『楽しんでもらえてよかったですよぉ♪︎それでは第3位のプラハを着た天使たちの皆さん、聞こえてますでしょうかぁ?』
『あいあい』
『聞えてんぞぉ~』
『聞こえてまぁす』
同じ部屋の森氏が叫ぶ。
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自分の推しのいるチームが3位となったのだ。このくらい喜んでも良いのではないかと、その声に驚いた僕は自分を納得させた。
『3位になられましたがどうでしょうか?ん~まずはルブタンさんから聞こうかな』
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その時、僕らの部屋に織原朔真が入ってきた。来て早々自分のベッドに倒れ込む。うつ伏せから仰向けへと向き直る。
何かを考えているのだろうか?
彼の顔を自分のベッドから首を伸ばして見ると、目を閉じてもう眠っていた。
──一体何をしていたんだろう……
僕はそう思ったが、配信に気を戻した。インタビューも終わり、大会の総括に入った田中カナタ。
──この楽しいお祭りも終わってしまう。
僕がそう思ったその時に、ノックが聞こえる。
「ん!?」
僕は森氏に顔を向けた。森氏もノックに気が付いたようで僕を見る。
「先生が見回りに来た?」
「それだったらノックはしないでござろう?」
そうだ。抜き打ちで来たのならノックはしない。僕ら2人は起き上がり、扉を開けた。そこには黒髪のギャル、小坂茉優が立っていた。
「えっ!?」
「なっ!?」
僕と森氏は驚く。
──お、お、女の子!?しかも小坂茉優!!?かたりんのマネージャー的立ち位置のカースト上位女子が何故ここに!?
驚いた僕らに小坂茉優は告げる。
「織原君いるぅ?」
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~織原朔真視点~
どうして僕はこんなことをしているのだろうか。
シーツをマットレスに皺なく敷いてから、デュベカバーをバサリと何度か中空に波打たせるように広げて、中に空気を入れてから羽毛インナーを入れる。シーツを敷いたマットレスに足下を巻き込むように、羽毛インナーを入れたデュベカバーを入れ込んでメイキング完了だ。
それをあと2人分やる。僕は目を擦った。田中カナタ杯の激戦を制した身としては早く身体を休めたかった。
そんな眠気マックスの僕を呼び出した小坂さんは拍手を送りながら称賛の声をあげる。
「すごいすごい!」
対照的に昼間言い合いとなった松本美優さんは僕から視線を逸らし不服そうにしていた。そして僕を呼び出そうと提案した張本人の音咲さんはなんだか恥ずかしそうにしていた。
小坂さんが言う。
「織原って華多莉のホテルで働いてたんだね」
音咲さんが応える。
「…ぅ、うん……」
小坂さんは続ける。
「じゃあ華多莉の部屋も織原が掃除してたり?」
「うっ!!?」
「あっ!!?」
僕と音咲さんは反応してしまった。すると小坂さんは意地の悪そうな顔をして言った。
「へぇ~、華多莉の部屋汚かったでしょ?」
ベッドメイキングしている僕に近付いて訊いてきた。僕は控え目に首を縦に振る。それを見た音咲さんは赤面させながら、ぅ~と唸っていた。僕にベッドメイキングをして貰っているだけに文句が言えなかったようだ。
「でもこれで最近、華多莉が織原に対しての態度が変だったって納得いったよね?美優?」
そう問い掛けられた松本美優さんは腕組みしながら、納得がいってない感じで鼻を鳴らした。
僕が最後のベッドメイキングを終えると音咲さんは僕に近付き、いつも食べてるクルミのお菓子を僕に渡して、お礼を言ってきた。
「あ、ありがとう……」
それを受け取って僕は頷くと、部屋のドアノブに手が掛かる音が聞こえた。僕らは咄嗟に見回りの先生が来たんだと悟る。
小坂さんが一瞬で電気を消して、それぞれ近くのベッドに潜り込む。
僕はというと……
音咲さんと同じベッドに潜り込んでしまった。
──────────────────────────────────────────────────
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皺1つない綺麗なベッドを早速しわくちゃにしてベッドに潜り込んだ。織原と一緒に。
狭い空間。お互いの吐く熱い吐息がこの空間を更に熱く満たす。
今まで2回も身体を寄せ合ってきたが、これ程密着したことはない。今度の3回目は私が上に乗る形で密着している。1回目のトラックに轢かれそうになった時と同じ構図だ。しかし今回は同じベッドの中という特殊な状況。しかも見回りの先生にバレないよう、ベッドの中には一人しかいないことを演出しなければならない。その為私は織原のことをきつく抱き締めた。
先生が入室して来た。私達が寝ているかを確認すると、部屋の端に丸めてあった鱗粉で汚れたシーツを回収する。ただそれを回収するだけなら私達は寝たふりなんかせずに普通にやり取りをすれば良かったのだが、男子生徒である織原がいるおかげでややこしいことになってしまった。
まるでホラーゲームをしているような感覚である。敵の悪霊やらゾンビやらにバレないように隠れてやり過ごす。
先生の足音が不気味に響いた。私はその恐怖により身体が固くなるのを感じた。固くなるということは織原を更に強く抱き締めたということだ。私の胸の鼓動が彼に伝わる程に。
織原は今、どんな気持ちなのだろうか。
助けた筈なのにビンタをしてきた横暴な女に、謝ることも感謝することも素直にできない女に、シーツもまともに敷けない汚い部屋の女にこんなことをされて嫌に思うかもしれない。
──で、でもアイドルの私にこんなことをされて嬉しかったり……
そうも思ったが、今まで織原に対してはアイドルのかたりんとして接していない。私は不安になる。
今彼はどんな表情をしているのだろう。
不安になった私はすぐ近くにある彼の顔を首をモゾモゾと動かして覗き込んだ。
寝ていた。
もう一度言う。織原は寝ていた。
私がこんなにも恥ずかしく、こんなにも胸をドキドキとさせ、こんなにも嫌じゃないかとか織原のことを考えていたのに、コイツは寝ていたのだ。
私のドキドキが一気に冷めると同時に、羽毛布団が勢いよく捲られる。
捲ったのは美優だ。
「いつまでそこにいるんだ!!」
とっくに先生はいなくなっており、私と織原がいつまでたってもベッドから出てこないために、美優がやってきたのだ。
明るくなった部屋に目をしかめて、私は起き上がると、眠っている織原を見下ろした。
腹もたったし安心もした。いや、やっぱり腹が立つ。
──3回も抱き合ったっていうのに私のことなんとも思ってないってこと!?
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織原を乱暴に起こしたのだ。
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